(No.92)

マールブルグ病―ウガンダとケニア
11月20日更新

 

 2017年10月17日、ウガンダ保健省(MoH)はウガンダ東部のクウェエン(Kween)県でマールブルグ病の発生が確認されたことを世界保健機関(WHO)に通知しました。2017年10月19日、ウガンダ保健省は公式に流行を宣言しました。11月14日現在、確定例2人と可能性例1人を含む3人が報告されています。3人全員が死亡し、致死率は100%です。患者達は疫学的に関連があり、同一家族に属しています。

 時系列として、初発例(可能性例)は35歳で家畜の世話をしており、コウモリが生息する洞窟で知られるカプタム(Kaptum)地区の近くでしばしば狩りをしていました。彼は9月20日にマールブルグ病様の症状で入院し、5日後に死亡しました。最初の確定例は女兄弟で、初発例の世話をしていました。2番目の確定例は最初の2例の男兄弟で、2017年10月26日に死亡しました。同日、安全で尊厳のある埋葬が行われました。

 2番目の確定例は死亡する前にケニアに旅行しており、西ポコットカウンティ(Pokot County)に住む親戚とトランス・ンゾイア(Trans Nzoia)に住む伝統的な治療師(ヒーラー)を訪ねていました。2017年10月29日ウガンダ保健省は、WHOとケニア保健省に感染リスクが高い接触者について通知しました。伝統的な治療師は、ナイロビにあるケニア中央医学研究所(KEMRI)で複数回の血液検査が行われ、マールブルグ病は陰性でした。その治療師とその家族は21日間健康監視されました。西ポコットに住む2人の親戚と同じ地域に住む他の接触者も21日間の健康監視が完了しました。

 クウェエン県とカプチョルワ(Kapchorwa)県では、積極的な症例探索、死亡者の調査、安全で尊厳のある埋葬と地域社会の動員が現在進行中です。ウガンダでは、339人の接触者が登録され、283人が21日間のフォローアップを終えました。56人は現在フォロー中です。接触者のフォローアップはクウェエン県で56人が進行中で、カプチョルワ県では全ての接触者がフォローアップを終了しています。残っている全ての接触者は、2017年11月16日で21日間のフォローアップを終了する予定です。調査活動の強化は2017年12月7日まで続きます。

公衆衛生上の取り組み

・ウガンダ保健省はWHOと支援組織の協力のもとに、速やかにこの流行への対応に取り組んでいます。
・保健施設や地域レベルで、接触者の追跡と積極的症例探索が現在進行中です。2017年11月14日の時点で、
 56人の接触者がフォローアップ下にあります。報告された死亡者は埋葬前に調査され、疑わしい死亡者は
 安全で尊厳のある埋葬手順に沿って埋葬されます。カプチョルワ病院とカプロロン(Kaproron)に、国境
 なき医師団、国連児童基金(UNICEF)、WHOの支援を受けて2つのマールブルグ病治療センターが設立され
 ました。
・社会動員とリスクコミュニケーションが進行中です。12,000人以上の地域社会のメンバーが、赤十字のボ
 ランティア、UNICEF、WHOのコミュニケーション専門家の協力のもとマールブルグ病の情報を受け取っ
 ています。
・心理社会的支援の専門家がクウェエン県に配備され、マールブルグ病で死亡した人の家族、医療従事者、
 そして他の地域住民にカウンセリングが行われています。
・入院患者を死亡させているという治療センターへの不安や医療従事者の誤った対応への風評を払拭するため
 に、カプチョルワ県とクウェエン県で治療施設のガイド付き見学ツアーが組織されました。
・2017年11月7日、ウガンダとケニアの保健当局の間では、カプチョルワ県における国境を越えた調査を強
 化するために会議が組織され、国境を跨いだ調査活動が進行中です。
・ケニアにおけるマールブルグ病の発生に対する緊急対策計画と公衆衛生上の緊急対策室が立ち上げられ、対
 策準備が始められました。
・WHOにより個人用保護具2,000組が手配され、ケニアのトランス・ンゾイアカウンティに送られました。
・暫定的治療センター(カザンガットKaisangat保健センター)が指定され、ケニア赤十字がマールブルク病
 の治療センターを管理するために看護師を募集し、再配置しています。
・UNICEFはコミュニケーション活動や地域の関わりを支援しています。

WHOによるリスクアセスメント
 臨床試験の可能性に向けて、候補となる実験的治療法の検討が行われています。

 11月15日の時点で、現在の流行は3人に影響を及ぼしており全員が死亡しています。確定例の内1人は
死亡する前にケニアに旅行していましたが、これまでのところウガンダ以外で2次的な患者は確認されていません。

 ウガンダはこれまでに、再興するエボラとマールブルグウイルスの管理を行った経験があります。ウガンダではコウモリが生息する洞窟を訪れた鉱夫や旅行者から患者が歴史的に報告されています。一方、ケニアは経験が限られており、医療従事者によるストライキに直面し、このため公衆衛生活動が遅れています。ウガンダとケニアの間で、国境を越えた人口の移動と地域社会の混在は、国境を越えた感染拡大のリスクを引き起こす可能性があります。

 ウガンダの保健当局はこの事態に迅速に対応し、流行を抑制するための迅速な対策が実施されています。ケニアの保健当局は、緊急対策計画と公衆衛生上の緊急対策室(EOC)を立ち上げ、準備を始めています。家族関係者、医療施設、周辺の伝統的な埋葬式で感染した可能性のある接触者が、この対策での課題になります。

WHOによるアドバイス

・感染した患者、とくに体液との直接または濃厚接触に起因する地域社会でのヒトーヒト感染リスクを減らし
 ます。マールブルグ病患者との濃厚接触は避けるべきです。手袋や適切な個人防護具は、自宅で病気の患者
 の世話をするときに着用してください。入院中の親族を訪れた後、また自宅で病気の患者を世話した後に、
 定期的な手洗いを行う必要があります。
・マールブルグ病流行の影響を受けた社会では、住民に対して病気の性質について十分な情報提供に努めるべ
 きです。また社会の偏見を避け、治療センターへの早期受診を促し、死者の埋葬を含むその他の流行を抑制
 する対策を支援します。マールブルグ病で死亡した人々は、適切に、安全にかつ尊厳を持って埋葬されるべ
 きです。

国際渡航の制限

 ウガンダの感染地域とケニアとの国境で、検疫が実施されたことについてマスメディアの警告が確認されています:この警告はケニア保健当局によって確認されたものではありません

Kenya on high alert after a suspected Marburg case near Uganda border

 現在のマールブルグ病流行により、ウガンダとケニアに対して旅行措置に関連する他の警告は確認されませんでした。

 マールブルグ病と、その予防と制御措置についての更なる情報は、WHOのマールブルグウイルスウェブサイトと、マールブルグ病のファクトシートからご利用できます。

Website on Marburg virus disease
Fact sheet on Marburg virus disease

【出典】 Emergencies preparedness, response
Marburg virus disease – Uganda and Kenya
Disease outbreak news  15 November 2017
http://www.who.int/csr/don/15-november-2017-marburg-uganda-kenya/en/