(No.94)

ペストーマダガスカル
12月04日更新

 

 2017年8月1日から11月22日の間に死亡者202人(致命率8.6%)を含む、確定例、可能性例、疑い例の合計2,348人がマダガスカルの保健省によって世界保健機関(WHO)に報告されました。1,791人の肺ペストのうち、22%が確定診断され、34%が可能性例、44%が疑い例となっています。肺ペストに加えて、341人の腺ペスト、1人の敗血症型ペストと215人の型を分類できなかったペストの報告がありました。

図1.2017年8月1日から11月22日までの、発症日によるマダガスカルにおける確定例、可能性例、疑い例のペストの数



 合計で81人の医療従事者がペストと合致する症状を認めましたが、1人も亡くなりませんでした。
 アウトブレイクの開始以来、肺ペストと腺ペストの症例が、ペストが土着していない地域と主要都市を含む114の県のうち55県(48%)において見出されてきました。アナラマンガ地区が、報告された累積感染例の68%がそこからの報告で、最も被害を受けました。

図2.2017年8月1日から11月22日までの、マダガスカルにおける肺ペスト確定例と可能性例の地理的分布



図3.2017年8月1日から11月22日までの、マダガスカルにおける腺ペスト確定例と可能性例の地理的分布




 このアウトブレイクの間に同定されたすべての接触者(7,289人)は、予防的な抗生剤のコースを完了しました。11人の接触者がペストに合致する症状を表し、疑い例に分類されました。すべての接触者はフォローアップを完了しました。
 マダガスカルのパスツール研究所は、33のYesinia pestisの分離株を培養しましたが、それらはペスト制圧国家プログラムによって推奨されている抗生剤に対して、すべて感受性がありました。
 ペストはマダガスカルの一部の地域において風土病であり、少なくとも2018年4月のペストのシーズンの終わりまで、新たなペストの感染例が起きる可能性があります。

公衆衛生上の取り組み

 マダガスカル保健省は、WHO、マダガスカルパスツール研究所、他の機関、利害関係者やパートナーの支援を得て、取り組みを調整しています。
 マダガスカル保健省は、アウトブレイクへの取り組みの努力を調整するため、アンタナナリボ(Antananarivo)とトアマシナ(Toamasina)で危機管理ユニットを立ち上げました。
 全ての感染例と接触者は、無料で治療又は予防的な抗生剤の投与を受けています。
 
公衆衛生上の取り組み対策は以下を含んでいます。
Ÿ全ての流行地域における疫学サーベイランスの強化と感染例発見の強化
Ÿ 新規症例の迅速な調査
Ÿ 検体採取と検体移送と検査
Ÿ 全ての肺ペスト患者の隔離と治療及び腺ペスト患者の治療
Ÿ 積極的な接触者の発見、追跡、モニタリング及び、無料での予防的抗生剤の提供
Ÿ 駆除(げっ歯類と媒介昆虫のコントロールを含む)
Ÿ 腺ペストと肺ペストの予防に対する住民の意識向上
Ÿ 医療従事者間の意識向上、症例の発見、感染コントロール、感染防御の改善
Ÿ 埋葬の実施にあたっての感染対策情報提供
 WHOは、アウトブレイクへの取り組みを支援するため地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)における地域と世界のパートナーを調整し、動員しています。そして、必要であればさらなる迅速な取り組み支援を確実にするためパートナーと共に活動するつもりです。
 共に活動して、保健省、WHO、GOARNと他のパートナーは、接触者の追跡のために1800人以上のコミュニティ・ヘルスワーカーと接触者追跡スーパーバイザーとして約300人の医師を訓練し、感染例調査のために迅速対応チームを樹立しました。国際赤十字(IFRC)、ユニセフ(UNICEF)と米国国際開発庁(USAID)は、ペスト治療センターの樹立を含む感染患者管理を支援しています。ペスト症例の検査室における確定診断は、マダガスカルのパスツール研究所によって実施されました。WHOとパスツール研究所は、検査と確定診断のための検査能力を強化するために、検体採取と辺縁地域からのパスツール研究所検査室への検体体の移送のシステムを確立しました。

WHOとパートナーは、出国時のスクリーニング継続の必要性について再評価について保健省を支援し、また適切な提言を実施します。

WHOは、ペストに対する心構えと実戦上の準備活動を全体的な多様な災害に対する心構えと準備体制の機能に統合するために、これらの国々を支援し続けます。

WHOによるリスク評価

 2017年11月8日以降、確定診断された腺ペスト感染例の、また2017年11月14日以降確定診断された肺ペストは通知されていません。2017年11月19日に、全ての接触者のフォローアップは終了しました。しかしながら、「マダガスカルのペストは季節性であり、WHOは感染例の追加報告があることを予想しています。従って、保健省、WHO、そしてパートナーは2018年4月まで、予防と対策の活動を維持することが重要です。より長期間の戦略が、ペストの予防、準備と対策は必要になるでしょう。
 現在の疫学と対策能力に基づいて、WHOはペストの国レベルのリスクは中等度です。地域全体と世界レベルのリスクは低いです。

投稿に対するWHOからのアドバイス
今日まで、国際的な旅行に関連して報告された感染例はありません。WHOは、マダガスカルへの旅行や貿易におけるいかなる制限にも反対するアドバイスを行っています。肺ペストのアウトブレイクは封じ込められており、近隣諸国によって導入された旅行に関連する対策は打ち切られることをWHOは提言します。

11月の3日の世界観光機関(UNWTO)事務局長の訪問を受けて、国連はマダガスカルにおける観光に信頼を表明し、マダガスカルに対するいかなる旅行や貿易の制限にも反対するというWHOのアドバイスをそっくりそのまま繰り返しました。

【出典】 Emergencies preparedness, response
     Disease outbreak news
Plague – Madagas
http://www.who.int/csr/don/27-november-2017-plague-madagascar/en/