(No.101)

国際的に流通している乳児用調製粉乳に関連したサルモネラ(Salmonella Agona)感染症の流行―フランス
12月27日更新

 

 2017年12月2日フランス保健当局は、6ヶ月未満の乳児においてSalmonella Agona株に感染した患者が増加していることを確認しました。その後の調査によりSalmonella enterica serovar Agona(S. enterica血清型Agona)のアウトブレイクはフランスのラクタリスニュートリションサンテ(Lactalis Nutrition Santé)グループで製造されいる乳児用調製粉乳(粉ミルク)に関連していることが確認されました。

 12月21日現在、フランスの様々な地域で、6ヶ月未満の乳児35人のSalmonella Agona感染確定が確認されました。16人の乳児が入院しましたが、全員が完全に回復し死亡者は報告されていません。

 このアウトブレイクは4種類の粉ミルクの摂取と関連しており、特別な医療を必要とする乳児のために開発されたものが含まれます。12月10日、ラクタリスニュートリションサンテは、2017年2月15日から現在までに製造された600以上の関連製品(7,000トン以上)を回収・撤去しました。粉ミルクの関連製品は、50以上の国と地域に国際的に流通していました。

 2017年12月21日、ラクタリスグループは2017年2月15日からCraon工場で製造・包装された全ての乳児用・栄養製品を含む新たな回収を行いました。今回の大規模な回収に含まれた製品の流通を追跡する努力が現在進行しています。また感染の影響を受けた国々に対して国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)を通じて情報が伝えられています。

公衆衛生上の取り組み

 フランス当局は、2017年2月15日以降ラクタリスニュートリションサンテグループが製造した複数の粉ミルクに対して、市場での売買と輸出の停止、そして回収を命じました。12月9日、保健当局はフランスの薬剤師と保健施設に対して、関連する製品の提供を停止するため3つの警告を出しました。適切な代替品についての推奨は、ウェブサイトに掲載されています(下記リンクを参照)。

 2017年12月15日現在、回収された調製粉乳製品は次の48カ国と地域に輸出されています(フランス含む):アフガニスタン、アルジェリア、アンドラ、バーレーン、バングラデシュ、ブルキナファソ、カンボジア、カメルーン、中国、コンゴ、キプロス、コートジボワール、フランス、ガボン、ジョージア、ギリシャ、ギニア、ハイチ、香港(中国)、イラク、コソボ、クウェート、レバノン、マダガスカル、マリ、モナコ、モロッコ、オランダ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、カタール、ルーマニア、サウジアラビア、セルビア、セーシェル、スロヴェニア、スペイン、スーダン、スイス、台湾(中国)、トーゴ、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、ベトナム、イエメン、旧ユーゴスラビア共和国。この製品はまたフランスの海外領土と(国内の)県にも流通しています。

 フランスのINFOSAN緊急連絡窓口と緊密に協力して、INFOSAN事務局は調査、回収そしてリスクマネジメントを推進するため、欧州連合(EU)以外の国にあるINFOSAN緊急連絡窓口(と国際保健規則(IHR)に基づくフランス側の連絡窓口)に製品の流通の詳細を通知しました。またEU内の国々には、欧州の食品・飼料緊急警告システム(RASFF)を通じて直接情報が通知されています。

WHOによるリスクアセスメント

 感染した製品は、製品を摂取する乳児(重篤な疾患や合併症があり危険性に対する感受性が高い集団)に重篤な病気をもたらす危険性があります。フランス当局はアウトブレイクの発生源を特定する調査を現在進行中です。厳しい管理方法がとられていたにも関わらず、同様のアウトブレイクは過去にも発生しています。過去にあったアウトブレイクは他の製品や複数の地域に関連していました。

 粉ミルクは無菌の製品ではありません。サルモネラ菌は生の原材料に存在しており、厳しい乾燥条件下でも長期間生存することができます。ぬるま湯でミルクを調剤すると、サルモネラ菌汚染レベルが低い状態から急速に増加・増殖が可能になり、乳児に重篤な病気とアウトブレイクを引き起こします。

WHOによるアドバイス

 世界保健機関(WHO)は、今回の事例について利用出来る最新の情報に基づき、フランスへのいかなる旅行や貿易に対しても制限を適用しないように忠告しています。

 これらの製品を摂取した小児が症状、例えば発熱を伴う伴わないに関わらず下痢を呈した場合、両親は早急に医師を受診することが推奨されます。Salmonella Agonaが検出された患者は国家の保健当局に報告される必要があります。

 消費者は、粉ミルクの安全な調剤法、保管、および取り扱いに関してFAO(国連食糧農業機関)/WHOガイドラインに沿うことが推奨されます。これはオンラインで利用できます(リンクを参照)。

 感染した調製粉乳の代替品が利用出来ない場合、フランス当局は調製粉乳を70℃で2分間加熱し、乳児に与える前に37℃に冷ますことを推奨しています。これによりサルモネラ菌は不活化します。適切な交換が確認されるまで、この方法は暫定的な実用的解決法として利用できます。詳細については、下記リンクを参照してください。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Outbreak of Salmonella Agona infections linked to internationally distributed infant formula – FranceDisease outbreak news
22 December 2017
http://www.who.int/csr/don/22-december-2017-salmonella-agona-infections-france/en/