(No.5)

ブラジルにおける黄熱
1月26日更新

 

 2017年7月1日から2018年1月14日の間に、ブラジルで黄熱の診断確定患者35人(死亡例20人、調査中の疑い例145人を含む)が報告されています。この数週間のうちにブラジルでは黄熱診断確定例がサンパウロ州、ミナスジェライス州では3倍に増加しています。診断確定例はサンパウロ州(11人の死亡例を含む20人)、リオデジャネイロ州(1人の死亡例を含む3人)、ミナスジェライス州(7人の死亡例を含む11人)、連邦直轄区(1人の致死例)となっています、
 診断確定例の全ては地理的にヒト以外の霊長類における動物間流行が報告されている地域で感染しているようです。ミナスジェライス州では2016/2017のアウトブレイクにおいてはヒト感染が見られなかった市から報告されています。サンパウロ州の最も多くの患者が報告されているマリポラはサンパウロ市の北部地域から15Kmに位置しています。リオデジャネイロ州の新規発生患者はバレンサ、テレゾポリスの両市から報告されており、後者はリオデジャネイロ市から96Kmに位置しています。
 2018年1月11日には現在黄熱ウイルスが循環しているブラジル、サンパウロ州のマリポラ、アチバイアを2017年12月19日から2018年1月8日にかけて旅行していたオランダ人が帰国後の検査でPCR陽性となり、診断確定しています。この患者は黄熱ワクチン接種歴がありませんでした。2018年1月7日に発症し、患者には高熱、頭痛、筋肉痛、嘔気、嘔吐、下痢症状がありました。
 2017年を通じて動物間流行は報告されていましたが、2017年9月以降に著明な増加を認めています。ヒトと動物共通感染や、動物が関連している感染の多発は感染伝播に好条件の生態系の中で高頻度のウイルス循環が起こっていることを示しています。2017年7月1日から2018年1月14日までの間に、以前には黄熱のリスクがないとされていた地域も含んで21州で2442例のこの動物間流行がヒト以外の霊長類で報告されています。その中で411例は診断が検査により確定されており、747例は調査中、817例は診断不確定例、467例は除外診断例となっています。確定例は4州(マットグロッソ、ミナスジェライス、リオデジャネイロ、サンパウロ)で報告されています。しかし大多数(88%)の診断確定例はサンパウロ州からの登録です。


Fig.1. ブラジル2016年1月1日~2018年1月14日までの各疫学週における黄熱診断確定患者数の分布

 公衆衛生対策

 サンパウロ州でヒトの黄熱感染例と動物間流行が報告された2017年9月以降、政府の専門機関が通常のワクチンキャンペーンと、先制的ワクチンキャンペーン活動を行ってきました。さらに、国家、市レベルでの保健衛生機関では患者の治療のための医療サービス強化を実施、リスクコミュニケーションを実施してきました。
 2018年1月のはじめに大きな黄熱のアウトブレイクの危険性を回避するために、ブラジル保健省は標準使用量(0.5ml)および部分使用量(0.1ml)の両方の黄熱ワクチンキャンペーンを実施することを通知しています。このキャンペーンはサンパウロ州と、リオデジャネイロ州で1月25日~2月17日の間に、バイーア州で2月19日~3月3日の間に実施される予定です。目標はこれら3州77市の21,800,000人(16,500,000人に部分量使用、5,300,000人に標準量使用)にワクチン接種をすることです。

 WHOによるリスク評価

 2017年7月以後に報告された動物間流行による数はかつて黄熱のリスクが低いと考えられていたサンパウロなど大都市の市街地域での関心事となっています。
 ブラジルの専門機関は2016年と2017年のアウトブレイク時に対策を実施してきましたが、2016年11月28日~2017年1月15日、2017年11月27日~2018年1月14日のアウトブレイクと比較すると小規模であったといえます。ワクチン未接種者が黄熱の伝播には好条件な動物共通感染を起こしうる地域に居住していることは現在起こっている伝播の様式を変化させるリスクが高くなっていることを示しています。
 ブラジルの専門機関が黄熱に対する標準投与(0.5ml)および部分量投与(0.1ml)を含めて大規模ワクチンキャンペーンを実施するという決定をしたことにより黄熱の伝播が有効に限定化される事が期待されます。そのスケールと展望において今回の大規模ワクチンキャンペーンは重要な数値的理論に基づいてのチャレンジと位置づけられそうです。
 最近発生した黄熱ワクチン未接種渡航者による黄熱の確定診断は当事国においても渡航者に対するワクチンの推奨と周知再強化の必要性を示しています。
 WHOによるブラジルへの国際間渡航者に対する推奨事項は2018年1月16日に更新されており、以下のリンクで閲覧可能です。
WHO recommendations for travelers, Brazil

 ウイルス血症の状態で帰国した人は主に媒介蚊が存在する地域で黄熱の伝播サイクルを作り出すリスクを有しています。
 現時点で黄熱がネッタイシマカによって伝播したという証拠はありません。患者が発生したいくつかの州で2016年と2017年のアウトブレイク時に行われた昆虫学的な研究によりますと、吸血蚊は別々の地域で黄熱ウイルス陽性であったという結果が得られています。
 WHOは疫学的状況のモニターを継続し、最新の情報に基づいてリスク評価を見直していきます。
 ブラジルにおける黄熱の発生状況についてはブラジル保健省から入手できます。
 ブラジルの現在の状況に関連して国際旅行者に対するワクチン接種推奨の更新
 ブラジルおよびアメリカにおける他国の黄熱の情報については定期的にPAHO/ WHO で定期的に発行され
 ています。

【出典】http://www.who.int/csr/don/22-january-2018-yellow-fever-brazil/en/
Emergencies preparedness, response
Yellow fever – Brazil