(No.8)

コレラ-モザンビーク

2月23日更新

 2017年10月27日、モザンビーク保健省は世界保健機関(WHO)にコレラのアウトブレイクを報告しました。2017年8月14日から2018年2月11日にかけて、1,799人のコレラ患者と1人の死亡者(致死率0.06%)が2つの州から報告されました;ナンプーラ州(1580人)とカーボ・デルガード州(219人)。患者数と死亡者数は、過小報告の可能性があります。このアウトブレイクは迅速診断と培養検査で確定されました。

 このアウトブレイクは北東のナンプーラ州のMemba地区で始まり、そして2017年10月15日までにErati地区に広がりました。11月19日までには同じ州の2つの離れた地区(ナカロアとナンプーラ市)に広がりました。

 患者の発生は11月中旬にピークに達し、1週間で252人が報告されました;このピークの後、報告された患者数は急速に減少しました(図1)。報告された患者数の緩やかな増加が2017年12月下旬から観察されています。2018年1月5日、最初の患者がナンプーラ州の北にあるカーボ・デルガード州のPemba市から報告されました。2018年のこれまでに、各週の患者数は30-60人で推移しています。


 モザンビークにおけるコレラのアウトブレイクは、過去5年間で毎年発生しています。今回の流行前にも、最近では2017年1月に始まり、そして2017年4月に終息しました。この結果は、患者数2,129人、死亡4人(致死率0.2%)でした。2017年の流行は3つの州(テテ、ナンプーラ、マプト)と6つの地区で起こりました。

公衆衛生上の取り組み

 WHOとその支援組織は、アウトブレイクを抑えるための対策活動を支援しています。以下の対策が進行中です。

・保健省は現在進行中の対策について議論するため毎週国家レベルの調整会議を開催しています。WHO、UNICEF、MSF(国境なき医師団)、赤十字などの支援組織はこの会議に参加し、支援しています。
・特に地区レベルでは、複数の部門が協調しています;様々な部門における対策活動で協調し、地区の担当者によって指導されています。
・WHOはナンプーラ州の状況を迅速に評価し、国家調整会議でその知見を共有しました。
・WHOは患者の管理、発見、報告を改善するために、ナンプーラ州とカーボ・デルガード州で患者管理とサーベイランスに関する研修を支援しています。
・UNICEFの支援を受けて国と地方の保健当局は、コレラ治療センターを設置し消耗品、医薬品、感染予防・制御用品を供給するための支援を提供しました。コレラ治療センターは、感染が発生した各地域に設置されました。
・感染が発生している地区では、飲料水の質や衛生状況、衛生管理の改善が行われています;国と地方の保健当局および支援組織の協力を得た水供給部門が行いました。
・社会動員とリスクコミュニケーション活動が進行中です;国と地方の保健当局が支援組織の協力を得て行っています。

WHOによるリスクアセスメント

 このアウトブレイクにおいて、コレラを他の州や地区に広げるリスク因子には、飲料水の不足、家庭用飲料水の汚染があり、清潔な水へのアクセスや、適切な衛生管理、下水の処理を改善する必要性が重要視されています。このアウトブレイクでコレラ患者が発生した3つの州は、洪水による重大な影響を受けています。洪水により人々は立ち退き、医療施設を含むインフラに被害が出ています。気象予報によると、この大雨は今後3ヶ月間続きアウトブレイク拡大に繋がる可能性が示されています。

 感染が発生した2つの州では疫学的および環境的調査が行われておらずリスク因子が不明であるため、このアウトブレイクの大きさを決定することは不可能です。現段階における優先事項は、サーベイランスシステムを強化し、コレラのデータ収集と患者リスト作成を一致させ、またコミュニティレベルで積極的な患者発見の仕組みを導入することです。さらに、コレラ患者の定義は、全ての疑い例に対して厳格に適用されるべきです。これにより、このアウトブレイクにおける過小報告を減らし、患者発見が改善できます。その他の対策活動、たとえば患者管理、WASH(健康/水と衛生の環境を整備する)介入活動、社会動員もまた、国、州、地区、コミュニティレベルで強化される必要があります。

 全体的なリスクは国家レベルで高くなっています;この評価は、特に現在の流行の動態や対策活動に関する情報の不足が原因です。地域レベルおよび世界レベルにおけるリスクは低いと評価されます。

WHOによるアドバイス

 WHOはコレラの伝播を防ぐために、安全な水へのアクセス、下水処理能力、そして衛生設備の改善を推奨しています。サーベイランスの強化、とくにコミュニティレベルでは強化が推奨されます。感染発生地域では、患者管理へのアクセスも改善される必要があります。流行が他の地域へ拡大する場合は、迅速にこれを発見し対応する国家の能力が必要です。流行の拡大を抑えるためには経口コレラワクチン提供もまた考慮する必要があります。

 WHOは利用出来る情報に基づいて、モザンビークへの旅行や貿易に対するいかなる制限も推奨していません。安全な飲料水の利用や、一般的な衛生習慣の実施および上記予防手段によりこの病気を防ぐことができます。

コレラに関するさらなる情報は、下記リンクを参照下さい。
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs107/en/
http://www.who.int/cholera/task_force/en/

【出典】
Emergencies preparedness, response
Disease outbreak news
Cholera – Mozambique
19 February 2018
http://www.who.int/csr/don/19-february-2018-cholera-mozambique/en/