(No.10)

鳥インフルエンザA(H7N4)ウイルスのヒト感染-中国

2月26日更新

 2018年2月14日に中国国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)は世界保健機関(WHO)に対して鳥インフルエンザA(H7N4)ウイルスへのヒト感染1例を報告しました。本例は同ウイルスへのヒト感染世界初の1報告例となります。

 患者は江蘇省の68歳女性で冠動脈疾患と高血圧症を有しています。患者は2017年12月25日に発症しました。発症7日目に患者は重篤な肺炎の治療目的で地域の病院に入院し、21日後に退院しました。2月12日に中国疾病予防管理センター(CDC)は患者検体から鳥インフルエンザA(H7N4)陽性であることを確定しました。NHFPCは2018年2月13日に診断を確定しました。患者には発症前に生きた家禽への曝露歴があります。

 このインフルエンザウイルスA(H7N4)の遺伝子配列は鳥インフルエンザウイルス由来の遺伝子配列とされる全ての遺伝子配列を有していました。このウイルスはアダマンタンやノイラミニダーゼ阻害剤への感受性があります。

 患者への濃厚接触者28人が監視下におかれています。これまでのところ、濃厚接触者の中で有症状となった者はなく、接触者の咽頭スワブ検査ではすべて陰性でした。

公衆衛生対策

 中国政府はリスク評価を実施しています。また予防措置の強化、コントロール対策、サーベイランス、接触者追跡調査と検査を含めた疫学調査を実施しています。国民へのリスクの伝達や情報の共有が行われています。
 WHO は国家専門機関と連携し、今回の事案を緊密にフォローしています。WHOは加盟国との情報共有をうながし、国際保健規則(2005)に基づいて状況を緊密に監視しています。

WHOによるリスク評価

 本例は世界で最初の鳥インフルエンザA(H7N4)へのヒト感染第1例目です。患者は発症前に自宅で飼っている生きた家禽との接触歴が報告されています。このインフルエンザA(H7N4)ウイルスの遺伝子解析からは鳥インフルエンザ由来であることが示されています。
 
 患者との濃厚接触者での鳥インフルエンザA(H7N4)ウイルス検査は陰性であり、また症状はありません。現状のエビデンスからはこのウイルスには持続的にヒト‐ヒト感染を起こす能力は認めていません。即ち持続的ヒト‐ヒト感染を起こす可能性は低いと思われます。ヒト‐ヒト感染を起こす能力を得た動物由来のいかなるインフルエンザウイルスも理論的にはパンデミックを起こす可能性があります。

 鳥インフルエンザA(H7N4)へのヒト感染例がさらに発見される可能性はあります。しかしこれまでの所は1例が発見されたのみです。また鳥インフルエンザA(H7N4)ウイルスが鳥類の間で循環しているという情報も入手されていません。本評価の信頼性を高めるためには更なる情報の収集が必要です。

WHO によるアドバイス

 国民は生禽獣市場や農場、生きた家禽、家禽の糞で汚染された表面などリスクの高い環境との接触を回避しなければなりません。頻回の手洗いやアルコール手指消毒剤の使用など手指の衛生が推奨されます。WHOは旅行者に対して特別の異なる対策を推奨するものではありません。

 WHOは今回の事案の発生時点では特別のスクリーニング検査の実施や渡航、交易の制限適用を助言するものではありません。

【出典】Emergencies preparedness, response
    Disease outbreak news
    22 February 2018
http://www.who.int/csr/don/22-february-2018-ah7n4-china/en/