(No.69)

エボラウイルス病-コンゴ民主共和国(21)
2018年10月12日更新

 コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病(EVD)対策は、重大な転機をむかえています。WHOは、社会の不安定さの増大、地域社会の不信による事件、地理的な(感染)拡大増加などがもたらす危機的な状況に直面しています。

 ベニ、ブテンボ、マバラコでは喪に服す期間とゼネラル・ストライキ(ville morte)が正式に終了しました。9月22日にベニで21人が殺された戦いに引き続き、市民社会の指導者らによって組織されました。医療従事者も含まれるville morteの期間は、EVD対策は減速し、エボラ患者との接触者の健康に関する調査や、社会動員、地域社会の取り組みは非常に遅くなるか延期されました。EVDに多大な影響を受けた地域におけるリスクコミュニケーションは深刻な制約を受けるか、中断されました。また実地調査チームが疑い患者を調査し警戒する能力や、安全で尊厳のある埋葬を実行する能力は深刻な制限を受けています。現在、WHOの取り組みは本格的な規模に戻っていますが、安全上の制約による警戒状態が続いています。

 保健省(MoH)とWHO、およびその支援組織は感染が発生している地域の人々と緊密に連携して活動しています。ほとんどの地域社会は対策の取り組みを支持し、治療と予防接種を受け入れています。地域社会と地方自治体の協力により、いくつかの地域で生じた抵抗や不信を克服しています。うわさや誤報に直面した一部の家族は自宅で病気の親族を治療することを選択し、これにより家族や子供たち、治療を提供する人々にも感染が拡大するリスクがあります。また一部の患者は代替医療を求めたり、医療従事者によるフォローアップを避ける行動をとります。安全で尊厳のある埋葬を確実に行うための地域社会の指導者らの協力にもかかわらず、患者の中には伝統的な習慣を好み、拒否する者もいます。医療従事者との接触を避けて、自宅での治療や安全ではない埋葬を行うことは患者自身のリスクを増やし、また治療を提供する人々や子供たち、他の家族、医療従事者のリスクも増やします。さらに、この大規模流行が拡大することにつながります。

 感染が発生している地域は、現在数百キロメートルに及び、これは「レッドゾーン」に移動した感染確定患者を含みます。レッドゾーンは非常に不安定で厳しい環境であり、ここで対策活動を行うことは極めで困難です。効果的なエボラ対策には感染した人々に可能な限り近い、複数の場所にハブを設立することが必要であり、地理的な拡大は前線への資材供給をさらに逼迫します。

 対策チームがアクセスできる場所では、新たな感染集団や新たな地域へ感染が拡大することを予防するための活動が強化されています。WHOは感染が発生している地域において、MoHを支援するために国内外の支援組織と協力して活動しています。大規模流行は新たに、安全でない地域であるTchomia保健行政地区(ウガンダとの国境に近い)にも拡大し、安全上の懸念と同様に全体的な対応に取り組みが続いています。これらの状況の点から、WHOはリスクアセスメントを修正し、全国レベルでは「高リスク」から「非常に高リスク」としました。世界レベルでは低リスクのままです。

 前回の疾病流行情報(10月2日)以来、10人の新たなEVD感染確定患者が報告されました:8人はベニ、1人はブテンボ保健行政地区でいずれも北キヴ州から、1人はイトゥリ州のコマンダ保健行政地区からです。これらの患者のうち8人は、それぞれの地域社会における既知の患者もしくは感染伝播の鎖(transmission chain)とリンクしていました。一方、残る2人は調査中です。

 2018年10月2日の時点で、合計162人のEVD患者(確定例130人、可能性が高い例32人)、うち死亡例106人(確定例74人、可能性が高い例32人)が、北キヴ州の7つの保健行政地区(ベニ、ブテンボ、カルンガタ、マバラコ、マセレカ、ミュジャネーヌ、オイシャ)から、イトゥリ州の3つの保健行政地区(マンディマ、コマンダ、Tchomia)から報告されています(図1)。週あたりの患者発生数は全体的としてわずかに減少傾向が続いています(図2)。しかし、これらの傾向は解釈に注意が必要であり、患者の報告、現在進行中の散発例の検出、警戒調査や接触者追跡の安全上の問題など、予想される遅延を考慮にいれる必要があります。年齢と性別が判明している確定例と可能性が高い例を合わせた155人のうち、15-24歳が22%、25-34歳が19%、35-44歳が23%でした、女性は55%で大きな割合を占めています(図3)。累計では、19人(確定例18人、可能性が高い例1人)の医療従事者がこれまでに感染しており、3人が死亡しています。

 MoHとWHOおよびその支援組織は、感染発生地域と、DRCの他の全ての州、そして周辺の国々で全ての警報を監視し調査しています。2018年10月2日現在、疑い例11人が検査結果を待っている状態です。最新の報告以来、周辺の国々とDRCのいくつかの州で警報が調査されました。現在までに、周辺の州と国々からの全ての警報でEVDは除外されています。

      
        (図1)

            
        (図2)

       
        (図3)

【出典】
WHO Emergencies preparedness, response
Ebola virus disease-Democratic Republic of the Congo
Disease outbreak news 4 October 2018
http://www.who.int/csr/don/04-october-2018-ebola-drc/en/