マ ラ リ ア M a l a r i a マラリアは、熱帯・亜熱帯地域に広く分布する重要な感染症で世界100ケ国余りの国々で流行しています。WHO(The World Health Report)の推計では、全世界で1年間に3億〜5億人の患者、150万人〜270万人の死者があると報告されています。また、そのうちの90%はアフリカ熱帯地方であると報告されています。 日本でも1935年頃までは年間数万人の患者が発生していましたが、媒介する蚊の撲滅などの結果、現在では海外で感染する、いわゆる輸入マラリア感染患者のみの発生であり、毎年100名〜150名が報告されています。 日本では感染者数が少ないために医者の認識が低く、風邪などと誤診されやすく、そのため、治療が遅れ死亡するケ−スもいくつか報告されています。 そこで、海外へ行かれる旅行者のためにマラリアの概要と分布について説明します。
2 感染方法と潜伏期 ハマダラカ属の蚊に吸血されることによって感染します。マラリア原虫を持つ蚊に吸血され、人の体内でマラリア原虫が侵入してから発症するまでの期間(潜伏期)は熱帯熱マラリアで12日前後、四日熱マラリアは30日、三日熱マラリアと卵型マラリアでは14日程度と報告されています。 3 症状 一定の潜伏期間の後、悪寒、震えと共に体温が上昇し、1〜2時間続きます。その後、悪寒は消えますが、体温は更に上昇し、顔面紅潮、呼吸切迫、結膜充血、嘔吐、頭痛、筋肉痛などが起こり、これが4〜5時間続くと発汗と共に解熱します。これを熱発作と呼びます。この熱発作の間隔は、感染するマラリアの種類によって異なり、四日熱マラリアは72時間、三日熱、卵型マラリアは48時間ごとに起こりますが、感染初期では発熱が持続する傾向が多いようです。 一般に熱帯熱マラリアは、他のマラリアと異なり高熱が持続する傾向があり、平熱まで下がることはほとんどありません。また、症状も重く治療が遅れると意識障害、腎不全などを起こし、死亡することもまれではありません。 4 予防方法 (1)第一の予防方法としては、蚊による刺咬を防ぐことが第一ですので防虫スプレ−(ポンプ式のもの、ガス式は機内への持ち込みが制限されることがあります)や蚊取線香も多少は有効ですし、肌を露出しない服装(薄手の物はだめ)も効果があります。 (2)感染を防ぐワクチンのような予防接種はなく、感染しても発病しないための予防内服薬が何種類かありますが、薬剤に耐性のあるマラリア(耐性マラリア)の存在が大きな問題となっており、予防薬の服用に際しては現地のマラリア汚染状況などによって決める必要があります。 以下、予防薬を紹介します。(WHO情報より) @クロロキン( Chloroquine )
Aプログアニール( Proguanil )
Bメフロキン(Mefloquine)
Cドキシサイクリン(Doxycycline) *クロロキン耐性マラリアが大半を占める地域で使用される。
日本では、2001年11月からメフロキンの販売が行われるようになりました。取り扱っている医療機関については、検疫所まで問い合わせ下さい。 国内での入手先が少ないことや渡航先で流行している耐性マラリアの情報が少ないことから現地で購入も考えて下さい。また、予防薬は規則的に服用しないと発症は防げません。そのため、帰国してからも4〜6週間は飲み続けなければなりません。 マラリアの流行地域 〈アジア〉 中国南部、フィリピン、ベトナム、ラオス、タイ、カンボジア、ミャンマ−、インドネシア、マレ−シア、パプアニュ−ギニア、モルジブに発生していますが、一般に都市周辺部やリゾ−ト地では危険性が少なく、森林、山岳地帯に多く流行しています。また、クロロキン耐性のマラリアが数多く報告されています。 〈アフリカ〉 北緯20°〜南緯25°までの広範な地域に流行しており、アジア地域と比較しても、その流行は濃厚で都市部であっても感染する可能性があります。 また、東アフリカ、西アフリカ沿岸ではクロロキン耐性マラリアが報告されています。 〈中南米〉 グアテマラ、ホンジュラス、コロンビア、エクアドル、ペル−、ガイアナ、スリナム各国の平野部や森林地帯および低山岳地帯(標高1500m以下)、ブラジルのアマゾン全域、ボリビアの平野部に流行しています。 一般に1500m以上の高原地帯や山岳地帯での発生はないとされていますが、1800mの高地でも流行したとの報告もあります。また、クロロキン耐性マラリアは、ほとんど全域で報告されています。
※マラリアを媒介するのはハマダラカ属ですが、イエカやヤブカの仲間も黄熱やデング熱など様々な感染症を媒介しますので、やはり、蚊には御注意を!
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参考リンク
国立感染症研究所感染症情報センタ−:マラリアウェブ
JOHAC海外勤務健康センタ−:マラリア対策