研究課題
ボルナ病ウイルス感染の実態に関する疫学的ウイルス学的研究
主任研究者(所属機関)
池田和彦(東京都精神医学総合研究所)

<抄録>

研究目的
ボルナ病ウイルスがヒトの精神疾患の病因のひとつになっている可能性が指摘されている。一方、ボルナ病ウイルス遺伝子が献血者の血球で検出されるという報告がなされている。これは輸血の安全性にかかわる問題でもあるので、わが国における献血者血液のボルナ病ウイルス遺伝子の有無を多施設・盲検で検索することを大目標とする。

研究方法

本格的調査をすすめるにあたり、本年度は東京地区の献血者血液70検体について、ボルナ病ウイルスp24遺伝子およびp40遺伝子の有無について、6研究施設・盲検検索をおこなった。血球RNAはコード化され、6研究施設おくられ、共通のプライマーをもちいて、各研究施設のプロトコールにしたがってnested RT-PCR検索がなされた。

結果と考察
すべての検体でPDGF-A遺伝子(血球単核細胞が主要産生細胞)の増幅のがみられ、血液検体はnested RT-PCR法に適用可能であることが判明した。陽性コントロールの盲検検索の結果から、6施設においてBDVp24およびp40遺伝子が高感度で検出できることが判明した。血液70検体検索をおこなった結果、BDVp40遺伝子は、5施設(1施設では施行されていない)すべてで、陰性であった。BDVp24遺伝子検索については、施設間で成績の違いがみられた。5施設についてはすべて陰性と判断され、1施設において1検体が陽性とされるものがあった。この1検体陽性の真偽は、今回の検索からは不明であった。したがって、本検索では、「東京地区の献血者血液検体の約5%においてBDVp24遺伝子断片がnested RT-PCR法によって検出される」、という過去の報告を支持する成績は得られなかった。また、nested RT-PCR法では、ある程度の頻度で偽陽性がみられることが明確となり、血球を対象とする本法がヒトにおけるボルナ病ウイルス感染の有無をしらべる検索法として妥当かどうかは、なお検討の余地があると考えられた。

結論
東京地区の献血者血液70検体について、ボルナ病ウイルスp24遺伝子およびp40遺伝子の有無について、6研究施設・盲検検索をおこなった結果、先の報告(東京地区の献血者血液検体の約5%においてBDVp24遺伝子断片がnested RT-PCR法によって検出される)を支持する成績はえられなかった。動物の病原体であるボルナ病ウイルスがヒトに病原性をもつかどうかを調べるさいには、現時点では、同一検体をすくなくとも2つ以上の研究施設で検索して検討するという手順が必要だと考えられた。