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「南米に自転車旅行に出かける方」の疑問
(ハンタウイルス肺症候群、ペスト)

南米の国々を友人と2人で自転車でまわる予定のB君の疑問
昨年、南米旅行した先輩からネズミが媒介する死亡率の高い病気のことを聞かされ、 そのような病気についての基本的なこと、さらに自分でも勉強する方法を知りたいとのこと。
ご心配の病気は、1990年代に入って初めて知られるようになったハンタウイルス肺症候群、もしくは黒死病として古くから知られるペストかと思われます。ただ、南米を旅行されるときまず気を付けるべき病気は、食べ物から感染する旅行者下痢症や蚊が媒介するマラリアなどの一般的に多くみられる感染症です。

事前に現地のこと、病気のことを知って備えておくことが何よりも重要
●ネズミなどの動物が媒介するハンタウイルス肺症候群、ペストなどという病気の正しい知識を持っておくことは、いろいろな環境を長期間にわたり旅行する際の健康管理に必要だと思います。
●黄熱、狂犬病などという日本にない病気も現地にありますので、これらについても知識を持たれることが望まれます。

【黄熱】>>もっと詳しく知りたい方
【狂犬病】>>もっと詳しく知りたい方
【ハンタウイルス肺症候群】>>もっと詳しく知りたい方
1993年に初めて米国で発見
米国内で200人以上の患者と100名以上の死者が出ている病気
南米でも、アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ブラジル、ウルグアイ、ボリビアで発生しています(合計229名罹患し50%の死亡率)。
●人への感染
ネズミの糞尿中に排泄されるウイルスの飛沫によって、起こるといわれています。
●感染すると
インフルエンザ様症状を起こし、重症例では急速に呼吸器症状を起こし死亡します。
●予防方法
流行地ではげっ歯類との接触を避けること、感染ネズミの生息地域に入らないこと、また流行地ではげっ歯類の侵入を促すような不用意な食物の管理を行わないことが上げられています。このウイルスに有効な薬はなく、対症療法が行われます。

【ペスト】>>もっと詳しく知りたい方
ネズミと関係の深い病気
自然界でペスト菌はげっ歯類と、それに寄生しているノミによって循環し、げっ歯類→ノミ→げっ歯類…という感染のサイクルを渡り歩いています。
●人への感染
ノミに刺されるなどしてこのサイクルに巻き込まれると、ペスト菌に感染します。
●治療法
現在ではペストに有効な抗生物質がありますが、早期の治療が必要です。

<関連リンク>
CDCの中南米旅行情報ページ
米国CDCのハンタウイルス症候群の情報ページ
米国CDCの狂犬病の情報ページ

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馬の病気の大流行と人の病気との関係
(ヴェネズエラ馬脳炎)

中米と南米で新興感染症(エマージング・ディジーズ)として知られる動物由来感染症に、このヴェネズエラ馬脳炎があります。
過去にしばしば大規模な流行を引き起こしており、このような広域性の流行を起こすタイプのヴェネズエラ馬脳炎ウイルスは多くの種類の蚊によって媒介されますが、自然界でのウイルス保有宿主動物はまだ分かっていません。

●この疾病の大規模流行
1969年に南米で発生、2年後には米国テキサスまでおよぶ
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この流行により20万頭の馬が死亡、数千人規模で患者が発生

最近では1995年にヴェネズエラと隣国のコロンビアで発生
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9万人が罹患したと推定されています。

※特定の地域で流行を起こすタイプのヴェネズエラ馬脳炎ウイルスは、米大陸各地に分布しており、森林に生息するげっ歯類とイエ蚊(Culex species)の間でウイルスが保たれています。近年にもしばしば小規模の流行を引き起こし、1992年にヴェネズエラ、1994年にペルー、1995〜1996年にメキシコで発生しています。

この疾病に人が感染すると、大人ではインフルエンザ様の症状を呈するのみですが、顕著な脳炎症状が小児にみられることがあります。疾病予防のワクチンは馬用に使われていますが、人用はありません。
●予防対策
流行地では蚊やダニの刺咬を避ける
長袖の衣服を着用する
忌避剤を使用する
ダニの存在が知られる森林等に立ち入らない

●その他の地域の発生状況
蚊のような節足動物が媒介する動物由来感染症の原因ウイルスをアルボウイルスといい、ヴェネズエラ馬脳炎ウイルスもこの仲間です。アルボウイルスが原因の動物由来感染症は世界各地で見られます。

<北米大陸>
東部馬脳炎、西部馬脳炎、セントルイス脳炎、ラクロス脳炎・・・蚊で媒介
ポワサン脳炎・・・ダニ媒介
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人が感染しても多くは症状がでないかインフルエンザ様症状を呈する程度ですが、低率で脳炎症状を引き起こし、死の転帰を迎える場合もあります。

<オーストラリア>
マレーバレー脳炎(オーストラリア脳炎という名称も使われます)・・水鳥を保有宿主として蚊が媒介します。
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1974年の流行では58名が発病し10名が死亡しましたが、感染しても発病する人は1000人に一人の割合といわれています。

<ヨーロッパ>
ロシア春夏脳炎(ロシア、東アジア)、中央ヨーロッパ脳炎(いわゆる欧州に幅広く分布)・・・ダニ媒介
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感染は森林地域での野外作業中に感染ダニに刺咬されたり、またダニに刺され感染した牛、山羊の殺菌されていない乳製品を食べておこります。病気の重篤度は中央ヨーロッパよりも東部ロシア、極東における感染の方が強いといわれています。

<関連リンク>
米国CDCのアルボウイルス情報ページ
米国CDCの各種の脳炎の世界分布情報ページ
オーストラリア州政府のオーストラリア脳炎情報ページ

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忘れられた病気でおばあさんと孫が死亡
(狂犬病)

我が国では、狂犬病で亡くなった方は1970年以降一人もいません。
ここで紹介する南米コスタリカでも、1970年を最後に人の狂犬病の発生は無く、狂犬病は過去の病気として扱われてきたそうです。しかし、国民皆が忘れていたときに、無くなったはずの病気がまた突然やってきたのです。しかも、おばあちゃんとその孫の命を奪うかたちで。
現地の報道(2001年10月29日付けLa Nacion紙)によると、コスタリカの首都サン・ノゼから南に行った街に暮らしていた、69歳のお婆さんと9歳の孫の二人は、猫から狂犬病に感染したようです。そしてここからの対応に問題があったようですが、二人が発症するまでの間、疑われる猫の狂犬病検査も、二人に対する狂犬病暴露後免疫治療も、実施されなかったそうです。
これらの検査と治療は狂犬病発症予防の基本であり、狂犬病発生国では欠かせない対応とされています。
コスタリカでは30年間狂犬病が発生していないことから、動物対策が重要との認識が薄れ、イヌに対する狂犬病ワクチン注射率はわずか3%になっていたとも言われています。また医療機関でも、狂犬病発生を念頭においた動物咬傷事故後の治療が行われていなかったそうです。
狂犬病は人から人に感染が広がるような怖い病気ではありませんが、一旦発症すると絶対に助からない病気です。また、一旦動物にまん延してしまうと、その撲滅には大変な努力と費用が必要となります。
我が国もコスタリカと同じように狂犬病の発生が長期間無いめずらしい国ですが、他の国で起きた事件を教訓に対応を忘れないでいることが重要です。


<関連リンク>
Promed

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