●エボラ出血熱 ●クリミア・コンゴ出血熱 ●ペスト
●マールブルグ熱 ●ラッサ熱 ●重症急性呼吸器症候群(SARS)



■ラッサ熱 Lassa fever

病原体:ラッサウイルスLassa virus
好発年齢:特になし
性 差:なし
分 布:西アフリカ諸国(ナイジェリア、ギニア、シェラレオネ、リベリア)

ラッサ熱の背景
■疫学状況
●西アフリカ諸国が流行地域。ウイルスを媒介するマストミス(ネズミ)の分布は流行地域よりも広い。毎年、10 万〜30 万人が感染し、およそ5、000 人が死亡している。感染者のおよそ80%が軽症で、20%が重症となる。

■病原体・毒素
●アレナウイルス属の分節状(−)1 本鎖RNA をもつラッサウイルス。エンベロープをもち、ウイルス内にリボソームがある。

■感染経路
●ラッサウイルスはマストミス属のネズミに持続感染し、唾液、尿などのネズミの排泄物中にウイルスが大量に排泄される。これらに直接触れたり、汚染食物の摂取により感染する。ヒトからヒトへの感染は、血液、組織、分泌物、排泄物との接触ないし性行為(粘膜接触)、そして感染者の咳などによる飛沫感染によって起こるが、通常の皮膚接触では起こらない。

■潜伏期
●5 〜21 日。

診断と治療
■臨床症状
●発熱と倦怠感が緩徐に始まり、高熱、筋肉痛、虚脱が起こる。消化器症状として、腹痛、嘔吐、下痢ないし便秘をみる。滲出性咽頭炎、胸骨背部痛、咳、結膜炎、胸水貯留、顔面のむくみ、粘膜出血、難聴、振戦、脳炎も起こす。さまざまな症状を
示し、特異的なものはない。

■検査所見
●特異的なものはない。AST (GOT )中等度上昇や胸水貯留は予後と関係する。

■診断・鑑別診断
◎確定診断
●ELISA ないし蛍光抗体法(FA )による血清IgM 、IgG 抗体の検出。発症後14 日間の有熱期の血液、血清から、抗体があってもウイルスを細胞培養により分離できるが、バイオセーフティレベル4 (BSL4 )の特殊設備を要する。RT- PCR や免疫組織化学により診断する。

◎鑑別診断
●ほかのウイルス性出血熱、マラリア、赤痢、チフス。

■治療
●早期のリバビリン投与(発症6 日以内であれば、死亡率は10 %以下となる)。補液、電解質バランス、酸素投与、血圧維持などの補助的療法も重要。

■経過・予後・治療効果判定
●入院患者の15 〜20%が死亡、感染者の1〜2%が死亡する。妊娠後期の妊産婦や胎児の死亡率は高い。生存者の症状やウイルス血症は発症から2 〜3 週間持続し、解熱期にウイルス血症は消失する。中和抗体は検出されない。

■合併症・続発症とその対応
●重症患者の1/4 に難聴。約1/3 に種々の程度の聴覚障害をきたす。妊産婦では自然流産を起こす。

■2次感染予防・感染の管理
●現在有効なワクチンはない。患者の分泌物などからヒトに感染するので、感染一般予防的措置が必要。患者は予防的措置をとらないヒトとの接触を避け、医療用廃棄物の滅菌処理も必要である。


    

出典:日本医師会編・発行≪日本医師会生涯教育シリーズ≫「感染症の診断・治療ガイドライン」より、日本医師会の許可を得て転載