●E型肝炎 ●ウエストナイル熱 ●エキノコックス症 ●黄熱
●オウム病 ●回帰熱 ●Q熱 ●狂犬病 ●高病原性鳥インフルエンザ
●腎症候性出血熱 ●サル痘 ●炭疽
●ツツガムシ病 ●デング熱
●ニパウイルス感染症 ●日本紅斑病 ●日本脳炎
●ハンタウイルス肺症候群 ●発疹チフス ●マラリア ●ライム病
●リッサウイルス感染症 ●レプトスピラ症 ●野兎病
●Bウイルス病 ●ブルセラ症 ●インフルエンザ
●急性脳炎(日本脳炎を除く)




■腎症候性出血熱 hemorrhagic fever with renal syndrome(HFRS)

病原体:ハンタウイルスHantavirus、腎症候性出血熱ウイルスHFRSvirus
好発年齢:成人
性差:男性に多い
分布:ヨーロッパ〜アジア全域(特に中国)

腎症候性出血熱の背景
■疫学状況
●極東アジア(中国、数万例/年)と北欧・東欧(数千例/年)が流行地域であるが、ユーラシア大陸全域に発生がある。
●わが国では1960〜70年代に発生が報告。現在は流行はないが主要港湾地区の多くで感染ドブネズミが確認されている。

■病原体・毒素
●ブニヤウイルス科のハンタウイルス属に分類される(−)鎖のRNAウイルスであるハンタウイルス。

■感染経路
●不顕性に持続感染している齧歯類が自然宿主。糞尿中に排泄されるウイルスによる経気道、飛沫感染。咬傷によっても伝播。ダニによる伝播が示唆されているが、確認されていない。
●ヒトからヒトへの伝播は報告されていない。

■潜伏期
●10〜30日。

診断と治療
■臨床症状
●ドブネズミが媒介するソウル型とセスジネズミが媒介するハンターン型の各血清型のウイルスは重症のHFRSを引き起こすことが多い(致死率約10%)。突然の発熱、頭痛、悪寒、脱力、めまい、背部痛、腹痛、嘔吐。発熱とともに出血傾向の出現(顔面紅潮、点状出血、結膜充血)。平均5日間高熱が稽留したのち突然解熱する特有の熱型。重症例では、出血傾向が著しく、DIC、突然の血圧低下とショック症状をきたす。その後乏尿、蛋白尿など腎不全の徴候。軽症例では一過性の尿量の減少のみで急速に回復する。北欧でヤチネズミから感染する軽症型では、発熱、頭痛のあと軽度の蛋白尿がみられるのみで、出血はなく回復する。死亡例はほとんど報告されていない。リバビリンが有効であるという報告がある。

■検査所見
●白血球増加(4〜6病日)、血小板減少(3〜14病日)、蛋白尿(3〜14病日)、腎不全所見、血清抗体価の上昇(7病日頃から出現し、2〜3週頃ピーク。その後長期間存在する)。

■診断・鑑別診断
◎確定診断
●血中抗体価の出現の確認による。抗体の検出は間接蛍光抗体法(IFA)、ELISAによる。白血球からのPCRによるゲノム検索も可能。

◎鑑別診断
●インフルエンザ、デング熱、ワイル病との鑑別が必要とされている。

■治療
●低血圧期に引き続き出現するショックに対する対症療法が重要。

■2次感染予防
●不活化ワクチンが中国と韓国で市販されているが、わが国では用いられていない。ヒトからヒトへの感染は確認されていないが、急性期にはウイルス血症を起こしていると考えられるので、それに対する対応が必要。本ウイルスは70%消毒用アルコールで容易に不活化される。



出典:日本医師会編・発行≪日本医師会生涯教育シリーズ≫「感染症の診断・治療ガイドライン」より、日本医師会の許可を得て転載