●E型肝炎 ●ウエストナイル熱 ●エキノコックス症 ●黄熱
●オウム病 ●回帰熱 ●Q熱 ●狂犬病 ●高病原性鳥インフルエンザ
●腎症候性出血熱 ●サル痘 ●炭疽
●ツツガムシ病 ●デング熱
●ニパウイルス感染症 ●日本紅斑病 ●日本脳炎
●ハンタウイルス肺症候群 ●発疹チフス ●マラリア ●ライム病
●リッサウイルス感染症 ●レプトスピラ症 ●野兎病
●Bウイルス病 ●ブルセラ症 ●インフルエンザ
●急性脳炎(日本脳炎を除く)



■ハンタウイルス肺症候群 Hantaviruspulmonarysyndrome(HPS)

病原体:ハンタウイルス肺症候群ウイルスHantaviruspulmonarysyndromevirus;HPSvirus、シンノンブレウイルスSinNombrevirus
好発年齢:成人
性差:男性に多い
分布:南北アメリカ(アジア、ヨーロッパでの発生報告はない)

ハンタウイルス肺症候群の背景
■疫学状況
●1993年米国南西部で流行が発生以来、1998年9月までに米国30州から196例、カナダから31例、南米(アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ブラジル、ウルグアイ、ボリビア)から229例が報告され、致死率は約40%。
●北米での主要な媒介動物はシカシロアシマウス。南米ではコトンラットやコメネズミ。いずれの齧歯類もわが国には生息していない。

■病原体・毒素
●ブニヤウイルス科のハンタウイルス属に分類される(−)鎖のRNAウイルスであるハンタウイルス。

■感染経路
●不顕性に持続感染している齧歯類が自然宿主。糞尿中に排泄されるウイルスによる経気道、飛沫感染。咬傷によっても伝播すると考えられる。
●1996年のアルゼンチンでの一流行を除き、ヒトからヒトへの伝播は報告がない。

■潜伏期
●10〜14日。

診断と治療
■臨床症状
●前駆症状として突然の発熱、頭痛、悪寒(1〜4日間)。その後、進行性の呼吸困難、酸素不飽和状態が急速に出現する。頻呼吸、頻脈が顕著である。これらは肺水腫、浮腫を原因とする。肺水腫を発症例では入院後数時間〜24時間以内に死亡している。

■検査所見
●白血球増加、血小板減少、血液濃縮。

■診断・鑑別診断
◎確定診断
●米国CDCより発表されている基準では(MMWR1993;42:816―820.)、ARDSと診断され38.3°C以上の発熱を示した例、および酸素吸入を必要として、入院1週間以内に肺滲出液の貯留が認められた例を疑わしい例とする。それらが他の疾病素因や感染症が認められない場合、IgM・IgG抗体の検出、PCRによるウイルス遺伝子の検索または免疫組織学的なハンタウイルス抗原の検出によって確定診断する。

◎鑑別診断
●マイコプラズマ、肺ペスト、A型インフルエンザによるARDSとの鑑別も必要とされている。

■治療
●対症療法による。特に呼吸困難と低血圧、ショックに対する処置。経過が急速であるために致死率が高い。

■2次感染予防・感染管理
●ワクチンは開発されていない。同じハンタウイルスである腎症候性出血熱ウイルスとは抗原性の隔たりが大きく、腎症候性出血熱の不活化ワクチンは有効ではないと考えられる。



出典:日本医師会編・発行≪日本医師会生涯教育シリーズ≫「感染症の診断・治療ガイドライン」より、日本医師会の許可を得て転載