●E型肝炎 ●ウエストナイル熱 ●エキノコックス症 ●黄熱
●オウム病 ●回帰熱 ●Q熱 ●狂犬病 ●高病原性鳥インフルエンザ
●腎症候性出血熱 ●サル痘 ●炭疽
●ツツガムシ病 ●デング熱
●ニパウイルス感染症 ●日本紅斑病 ●日本脳炎
●ハンタウイルス肺症候群 ●発疹チフス ●マラリア ●ライム病
●リッサウイルス感染症 ●レプトスピラ症 ●野兎病
●Bウイルス病 ●ブルセラ症 ●インフルエンザ
●急性脳炎(日本脳炎を除く)




■ライム病 Lymedisease(Lymeborreliosis)

病原体:ライム病ボレリアBorreliaburgdorferisensulato(広義)、B.burgdorferisensustricto、B.garinii、B.afzelii
好発年齢:特になし
性差:なし
分布:北米、欧州、ロシア、日本を含む極東地域

ライム病(ライムボレリア症)の背景
■疫学状況
●欧州、北米がライム病の一大流行地である。アジアでは中国、韓国、台湾で患者が報告される。わが国では北海道、長野を中心として患者が発生している。これは媒介者であるシュルツェマダニが比較的寒冷地に生息するためである。最近、欧米からの輸入症例が増加している。

■病原体
●スピロヘータ科ボレリア属の細菌で、遺伝学的性状により現在までに10種に分類される。このうちBorreliaburgdorferisensustricto(狭義)、B.garinii、B.afzeliiがヒトに病原性を示すことが確認されている。わが国ではB.garinii、B.afzeliiがIxodespersulcatus(シュルツェマダニ)により媒介されるが、B.burgdorferisensustricto(狭義)は存在しない。

■感染経路
●病原体を保有する野ネズミ、鳥に吸血し有毒化したマダニにより媒介される。わが国の媒介種シュルツェマダニは中部以北の比較的寒冷地の山間部に生息し、北海道では平地の草むらでも普通にみられる。

■潜伏期
●マダニ刺咬より数日〜数週間。マダニは数日間吸血し続け、若虫では数mm、成虫では1cm程度まで飽血する。ボレリアのマダニからヒトへの伝播には、48時間以上の吸血が必要とされる。ただし、咬着したマダニをひねりつぶした場合は、機械的に病原体の注入が起こり感染の確率が高まる。

診断と治療
■臨床症状
●感染初期:マダニ刺咬部を中心に特徴的遊走性紅斑(erythemamigrans;EM)が出現する。経過とともに遠心性に拡大し、数cm〜数十cmに達する。EMは唯一ライム病に特異的な病態であるが、これがみられない症例も報告されている。また、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感などインフルエンザ様症状を伴うこともある。
●播種期:2次性遊走性紅斑、神経症状、心疾患、ぶどう膜炎、関節炎、筋肉炎など、多様な症状を呈するため、臨床所見のみからの診断は困難である。
●慢性期:慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性脳脊髄膜炎、慢性関節炎を呈する。いまのところ、わが国では慢性期のライム病は報告されていない。

■診断・鑑別診断
◎確定診断
●EMの皮膚生検、神経症状を呈した患者では、骨髄液をBSK2培地に接種し、34°Cで2〜4週間培養することで分離できる。抗体の検出は、ELISA、ウエスタンブロット法、間接蛍光抗体法(IFA)などが用いられる。

◎鑑別診断
●早期の遊走性紅斑には、体部白癬、銭形湿疹、環状肉芽腫、蜂巣炎、刺虫症、早期(拡散期)、晩期では、ベル麻痺、中枢神経腫瘍、ウイルス性心筋炎、急性リウマチ熱、心内膜炎、ウイルス性髄膜炎、髄膜脳炎、その他の無菌性髄膜炎、化膿性関節炎、急性リウマチ熱などの、神経症、循環器症、髄膜炎、関節炎。

■治療
●抗生剤による治療:アモキシシリン、ミノサイクリン、セフトリアキソンなど。

■経過・予後・治療効果の判定
●感染初期であれば、抗生剤の2週間連続投与で完治する。

■2次感染予防・感染の管理
●患者からの2次感染の可能性はない。わが国で使用可能なワクチンはない。



出典:日本医師会編・発行≪日本医師会生涯教育シリーズ≫「感染症の診断・治療ガイドライン」より、日本医師会の許可を得て転載