●E型肝炎 ●ウエストナイル熱 ●エキノコックス症 ●黄熱
●オウム病 ●回帰熱 ●Q熱 ●狂犬病 ●高病原性鳥インフルエンザ
●腎症候性出血熱 ●サル痘 ●炭疽
●ツツガムシ病 ●デング熱
●ニパウイルス感染症 ●日本紅斑病 ●日本脳炎
●ハンタウイルス肺症候群 ●発疹チフス ●マラリア ●ライム病
●リッサウイルス感染症 ●レプトスピラ症 ●野兎病
●Bウイルス病 ●ブルセラ症 ●インフルエンザ
●急性脳炎(日本脳炎を除く)



■インフルエンザ influenza
 
病原体:インフルエンザウイルスinfluenza virus
好発年齢:学童・生徒
性 差:なし
分 布:世界的に分布

インフルエンザの背景
■疫学状況
●毎年、世界中で流行が起き、わが国でも75万〜100万人程度の患者が報告される。流行は、11月上旬頃から散発的に発生し、1月下旬〜2月上旬にピークを迎え、4月上旬頃までに終息する。
●インフルエンザの流行に関する情報としては、1.全国5、000のインフルエンザ定点医療機関にて1週間に診断したインフルエンザ患者数を把握する「感染症発生動向調査」と、2.全国の幼稚園・小学校・中学校などを対象としてインフルエンザ様疾患により学級・学年・学校閉鎖が実施された場合に、その施設数とその時点での患者数を毎週報告してもらう「インフルエンザ様疾患発生動向調査」がある。
●流行のもたらす影響は乳児および高齢者において強く、インフルエンザが流行した年にはその流行に一致して予想されるより多くの死亡(超過死亡)が観察されるが、報告される死亡者の80〜90%を65歳以上の高齢者が占める。
●10〜40年の周期で新型ウイルスにより世界中で大流行を巻き起こす。

■病原性・毒素
●オルソミクソウイルス科に属する直径100nm球状のRNAウイルス。A型、B型、C型に分類される。このうちヒトの世界で流行するのは、A型とB型。A型は、さらにウイルスの表面にある2種類の突起(ヘムアグルチニン;H、ノイラミニダーゼ;N)からアジア型(H2N2)、香港型(H3N2)、ソ連型(H1N1)の3つに分類される。なお、A/北京/263/97(H3N2)といった標記がされるが、これは、A型で97年に北京で263番目に取れたウイルス株であることを意味する。A型は広汎な地域に流行を引き起こすのに対してB型は散発的または局地的な流行にとどまることが多い。
●インフルエンザA型ウイルスは、10〜40年の周期で新型インフルエンザをヒトの世界に登場させており、登場した当初はほとんどのヒトが抗体を有していないために世界中に大流行を引き起こす危険がある。1997年香港で通常はニワトリの強毒型インフルエンザ(AH5N1型)がヒトから分離され、6人の死者を含む18人の患者が発生したが、幸いに感染源であるニワトリを処分した後、発生は終息した。
●なお、インフルエンザに罹患した場合に重症化しやすい集団として、65歳以上の高齢者、慢性気管支肺炎疾患(気管支喘息、慢性気管支炎、肺結核など)、心疾患患者(僧帽弁膜症、うっ血性心不全など)、腎疾患患者(慢性腎不全、血液透析患者など)、代謝性疾患患者(糖尿病、アジソン病など)、免疫不全状態の患者などが指摘されている。

■感染経路
●飛沫核感染。

■潜伏期
●通常は1〜3日程度。

診断と治療
■臨床症状
●典型的なものは、高度の発熱、頭痛、腰痛、筋痛、全身倦怠感などの全身症状が現れ、これらの症状と同時に、あるいはやや遅れて、鼻汁、咽頭痛、咳などの呼吸器症状が現れる。
●熱は急激に上昇して第1〜3病日目には、体温が38〜39°Cあるいはそれ以上に達する。通常であれば1週間程度で寛解する。

■検査所見
●インフルエンザに特有の検査所見はない。

■診断・鑑別診断
◎確定診断
●咽頭拭い液あるいはうがい液を検体としてウイルス分離を行う。また最近では、PCRやA型インフルエンザについては迅速診断キットによるウイルス抗原の証明も行われる。
●患者からペア血清を採取し抗体価の測定を行う。その方法としては、急性期(または初診時)および回復期(2週後)に採血したペア血清について、赤血球凝集抑制反応(HI)や補体結合反応(CF)が行われている。

◎鑑別診断
●呼吸器症状を伴う急性熱性疾患が鑑別疾患の対象となる。溶レン菌性咽頭炎、細菌性肺炎、肺結核、胸膜炎、咽頭ジフテリア、肺炎などがある。また感染性胃腸炎がインフルエンザと臨床診断された報告も少なくない。

■治療
●対症療法が中心。A型インフルエンザには、アマンタジンの使用が認められているが、発症早期に投与することが重要。なお、腎臓から排泄されることから副作用を考慮して、腎機能低下の多い高齢者などでは減量などの注意が必要。

■経過・予後・治療効果判定
●通常は1週間程度で治癒に向かうが、特に高齢者では肺炎を合併して死亡に至る例が少なくない。
●また、99年1〜3月まで行われた厚生省の調査で、インフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発生して死亡した小児の例が報告された。

■合併症・続発症とその対応
●頻度および重症度からいって最も重要なものが肺炎である。インフルエンザウイルスそのものによるものもあるが、一般的には細菌の2次感染による。神経合併症として小児の脳炎・脳症のほかライ(Reye)症候群がある。これは、ミトコンドリア障害とされており、脳症および肝障害が出現する。アスピリンの投与が疫学的に関係があるとされている。またこれ以外に筋炎、心筋炎などの合併症も報告されている。

■2次感染予防・感染の管理
●特に消毒や患者家族に対する聞き取り調査の必要はない。
●インフルエンザの予防としては、一般的な予防とワクチンによる予防がある。一般的な予防としては、十分な栄養・休養といったものにかぜの予防と併せて手洗い、うがいなどがある。
●インフルエンザワクチンは、流行が予測される株を孵化鶏卵尿膜腔に接種培養したものを精製し、エーテル処理により分解し、HAが規定量を満たすように希釈調整されたHAワクチンであり、A香港型、Aソ連型およびB型の3種類の株の抗原が含まれている。副反応としては、局所の発赤、膨張、疼痛など、また全身反応として発熱、悪寒、頭痛、倦怠感などを認めることがあるが、2〜3日中に消失する。厚生省に報告があった副反応の発生頻度は、100万回に0.36とされている。
●慢性疾患を有する高齢者など、インフルエンザに罹患した場合に重症化する危険性の高い群においては、特にインフルエンザワクチンによる予防が勧められる。



出典:日本医師会編・発行≪日本医師会生涯教育シリーズ≫「感染症の診断・治療ガイドライン」より、日本医師会の許可を得て転載