パンデミック・インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年1月8日

今週の更新情報

2010年1月3日現在、世界中の208以上の国や地域から少なくても12,799人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

現在、パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発に起きているのは、中部・東部・南東部のヨーロッパ、北アフリカ、南アジアです。

ヨーロッパでは、パンデミック・インフルエンザの感染は、依然として、大陸全域で地理的に広範囲にわたっており、中部・東部・南東部のヨーロッパの数ヶ国でウイルスの流行が強い状態が続いています。特に、最近、呼吸器疾患の活動性が強いと報告された、ポーランド、セルビア、ウクライナ、グルジアで目だっています。先週、定点から20検体以上の臨床検体を検査している国の中で、インフルエンザが陽性であった検体の割合が最も多く観察されたのは、ギリシャ(72%)、グルジア(54%)、スイス(49%)、ポルトガル(48%)、ドイツ(48%)、ルクセンブルク(40%)、ルーマニア(30%)、ポーランド(25%)、アルバニア(23%)でした。西部および北部ヨーロッパの大部分の国では、ILI(インフルエンザ様疾患)/ARI(急性呼吸器感染症)の割合は大幅に減少し続けており、多くの場所では季節性のベースラインに近いところまで戻りました。西部ヨーロッパでは、季節性のH3N2インフルエンザの散発例が確認されていますが、非常に少数です。ヨーロッパの大部分の国での粗死亡率(人口100万人あたりの、パンデミックH1N1インフルエンザに関連した累積死亡者数)は、北半球・南半球の他の場所で観察された率と同程度のようで、世界的な死亡率の傾向と、比較的一致していると示唆されます。

北アフリカと西アジアでは、限られたデータですが、インフルエンザの感染は、依然として活発だと示唆されます。西アジアでは、既に、インフルエンザの活動性のピークを迎えたのかもしれませんが、北アフリカ諸国では、特にエジプトで、呼吸器疾患の活動性が増加し続けていると報告されています。高いレベルの ILIの活動性と、インフルエンザウイルスの検出の増加は、アルジェリアで11月、モロッコでは12月に観察されましたが、その後、活動性はピークとなったようです。

南アジアでは、パンデミック・インフルエンザの感染は、依然として、地理的に広範囲にわたっており、亜大陸全域で活発です。特に、呼吸器疾患の活動性が増加傾向であると報告された、インド北部、ネパール、スリランカで目だっています。東南アジアでは、インフルエンザの感染は、地理的に局地的から広範囲となっています。全体的にはインフルエンザの活動性は低いようにみえますが、一定していません。タイでは、過去3週間、ILIの局地的な増加が報告されました。ベトナムでは、9月から11月にかなりのインフルエンザ感染が起こった後、12月に活動性は著しく減少しました。ラオスとカンボジアでは、全体的な呼吸器疾患の活動性は、12月中に減少していたことが報告されました。

東アジアでは、インフルエンザの感染は、依然として、地理的に広範囲で、活発なままですが、全体的には低下しているようです。インフルエンザ/ILIの活動性は、日本、中国の北部と南部、台湾、香港で減少し続けています。パンデミックH1N1は、明らかに、依然として優勢を保って流行しているウイルスですが、季節性のH3N2ウイルスの感染が、非常に少数ながらも、中国北部で続いています。モンゴルでは、ILIのわずかな増加が再度報告されました。

中央アジアでは、ウズベキスタンで11月下旬、キルギスタンで12月上旬に、呼吸器疾患の活動性が、ピークに達して以来、ILI/ARIの割合が低下しているという証拠があります。

アメリカ大陸では、熱帯地域も、北部の温帯地域も、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、減少し続けているか、低いままです。北米では、インフルエンザの活動性のピークは、メキシコで10月上旬、アメリカで10月中旬、カナダで10月下旬でした。この3ヶ国では、予想通り、春・夏の流行期に比べて、秋・冬の流行期では、かなり多くの患者数が記録されました。カナダでは、秋・冬の流行期は著しく早期に、相当なインフルエンザの活動性を経た後、現在、ILIの割合は季節性のベースライン以下に下がっています。

南半球の温帯地域では、パンデミック・インフルエンザの散発例が報告され続けていますが、地域での持続した感染はみられていません。このことは、冬期に強く高レベルの感染を経験した地域の人口集団の免疫は、ウイルス感染がより少ない夏の間、持続した感染が再度起こることを防ぐのに十分高いということを示唆しています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

ウイルスのサーベイランスデータの更新情報

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第52週:2009年7月13日~12月27日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年1月3日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(12月30日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域、死亡例が報告された国や地域はありません。

地域死亡者数*
アフリカ地域事務局(AFRO)131
アメリカ地域事務局(AMRO)6880超
東地中海地域事務局(EMRO)708
ヨーロッパ地域事務局(EURO)2554超
東南アジア地域事務局(SEARO)1165
西太平洋地域事務局(WPRO)1361
総数12799超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください