パンデミック・インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年1月15日

今週の更新情報

2010年1月10日現在、世界中の208以上の国や地域から少なくても13,554人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

現在、パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発に起きているのは、北アフリカ、南アジア、東部・南東部のヨーロッパです。

北アフリカでは、限られたデータですが、インフルエンザの感染は、地域全体で、依然として活発ですが、特にモロッコ、アルジェリア、エジプトで活発だと示唆されます。西アジアでは、限られたデータですが、12月よりも前に、既にピークを迎えたと思われる数ヶ国で、パンデミックウイルスの流行が広範囲で続いていると示唆されます。北アフリカと西アジアでは、依然として、パンデミックH1N1 2009ウイルスが優勢なインフルエンザであり、季節性のインフルエンザウイルスは散発的に検出されるのみです。

南アジアでは、亜大陸の北部と西部でインフルエンザの感染が活発な状態が続いています。ネパールでは、12月と1月に、ARIの活動性の増加と、インフルエンザの活動性が地理的に地域的から広範囲にわたったことが報告されました。インドでは、全体としては、12月中旬から下旬に活動性のピークがあったようですが、感染の状況は地域で異なっています。西部の州では、最近増加傾向にあり、北部の州では活発ではあるものの、減少しており、東部と南部の州の活動性は、全体として低い状態です。スリランカでは、12月中に、地理的に広範囲な感染と、呼吸器疾患の増加傾向が報告されましたが、活動性は、最近、横ばいとなったかもしれません。

ヨーロッパでは、パンデミック・インフルエンザの感染は、依然として、大陸全域で地理的に広範囲にわたっていますが、全体的な活動性は、11月以降、大幅な減少が続いています。ルーマニア、ウクライナ、トルコ、スイスでは、呼吸器疾患の活動性が中等度の強さと報告されましたが、いずれの国でも、ILI/ARIの割合が減少か横ばいでした。20検体以上の定点呼吸器検体を検査している国のうち、少なくても4ヶ国(ルーマニア、グルジア、ドイツ、フランス)では、検体の25%以上でインフルエンザが陽性であったと報告されました。ヨーロッパ全体で、インフルエンザ陽性検体が占める割合は、2009年11月の初期に、45%とピークに達した後、22%に低下しています。パンデミックH1N1 2009ウイルスは、依然として、ヨーロッパ地域で流行している優勢なインフルエンザであり、季節性のインフルエンザウイルスは散発的に検出されるのみです。

東アジアでは、インフルエンザの活動性は、依然として広範囲にわたっていますが、全体としては低下し続けています。日本では、インフルエンザの活動性は、高い状態のままですが、2009年11月の終わりにピークを迎え、それ以降は減少しました。中国では、インフルエンザの感染は活発な状態で、地域によって差がありますが、全体としては、北部・南部の中国では2009年11月中旬にピークを迎え、それ以降は大幅に減少しています。香港では、インフルエンザの活動性は、相変わらず高い状態にありますが、2009年9月下旬から10月上旬にあった活動性の大きなピークよりも大幅に低下しています。モンゴルでは、ILIの割合は、2009年10月下旬以降、季節性のベースラインを上回り、高い状態にありますが、2009年11月に活動性のピークが観察され、それ以降、大幅に減少しています。韓国では、2010年1月上旬に、インフルエンザの活動性の広がりが地域的であることと、呼吸器疾患が増加傾向であることが報告されています。パンデミックH1N1 2009ウイルスは、依然として、この地域で流行している優勢なインフルエンザですが、非常に少数ではあるものの、中国北部では季節性のH3N2ウイルスの感染が続いています。

アメリカ大陸では、熱帯地域も、北部の温帯地域も、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、減少し続けているか、低いままです。北米では、インフルエンザの活動性のピークは、メキシコで10月上旬、アメリカで10月中旬、カナダで10月下旬でした。メキシコの中部と北部では、インフルエンザの活動性が増加した地域が小数あるかもしれません。

南半球の温帯地域では、パンデミック・インフルエンザの散発例が報告され続けていますが、地域での持続した感染はみられていません。このことは、冬期に強く高レベルの感染を経験した地域の人口集団の免疫は、ウイルス感染がより少ない夏の間、持続した感染が再度起こることを防ぐのに十分高いということを示唆しています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

ウイルスのサーベイランスデータの更新情報

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第53週:2009年7月13日~2010年1月3日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年1月3日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(1月8日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域はありません。

前回の更新情報(1月8日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域:スーダン

地域死亡者数*
アフリカ地域事務局(AFRO)131
アメリカ地域事務局(AMRO)7016超
東地中海地域事務局(EMRO)883
ヨーロッパ地域事務局(EURO)2788超
東南アジア地域事務局(SEARO)1289
西太平洋地域事務局(WPRO)1447
総数13554超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください