パンデミック・インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年2月5日

今週の更新情報

2010年1月31日現在、世界中の209以上の国や地域から少なくても15,174人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

北半球の温帯地域では、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、2009年10月下旬から11月の間にピークを越えて以降、大部分の地域で低下し続けているか、低いままです。数ヶ所の地域、特に、北アフリカ、東部ヨーロッパと東アジアの限られた地域では、依然として活発な徴候がありますが、感染は下火になっています。

北アフリカでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、依然として活発で、地理的に広範囲にわたっていますが、全体としての活動性は、2009年 12月下旬から2010年1月上旬にピークに達した後、減少しています。2010年1月の間、モロッコでは、パンデミック・ウイルスの分離数でかなりの減少がみられ、エジプトでは、新規患者数でかなりの減少がみられました。西アジアでは、パンデミック・インフルエンザの感染は依然として、広範囲にわたっているが、地域的に広がっていますが、全体的な活動性は低いままでした。

南アジアと東南アジアでは、パンデミック・インフルエンザの感染は依然として活発ですが、地理的な広がりは、局地的か、地域的な広がりです。全体的な呼吸器疾患の活動性の強さは、ほとんどの地域で、低いか中等度であると報告されました。インドでは、インフルエンザの活動性は、国の全域で減少が続いていますが、現在、感染が最も活発に起きているのは西部の州です。インドでは、パンデミックH1N1患者数の全体的なピークは2009年12月中旬で、患者の大部分は北部と西部の州で確認されました。タイでは、全体的なILIの活動性は、依然として低いままですが、中部と北部の数県で、インフルエンザの活動性が局地的に増加したことが観察されました。

東アジアでは、パンデミック・インフルエンザの感染は、全域で、依然として活発で、地理的に広範囲に広がっていますが、全体的な活動性は低下し続けています。日本では、全体的なインフルエンザの活動性は減少し続けていますが、南部の沖縄では、他の地域よりも高い感染が続いています。韓国では、ILIの割合は、活動性の大きな波は2009 年11月上旬から中旬にかけてピークに達した後、ベースライン近くまで低下し続けています。モンゴルでは、ILIの活動性は、2009年11月上旬以降、上昇が続いていましたが、ILIの水準は、最近、想定されている季節性の範囲に下がりました。中国の北部・南部では、ILIの割合は、最近の季節性インフルエンザでみられた水準に戻りましたが、検査された呼吸器検体の約30%でインフルエンザが陽性であったことから、インフルエンザウイルスの活発な感染が持続していることが示唆されます。中国で注目すべきこととして、この数週間で、パンデミック・インフルエンザH1N1の流行が低下し続けていますが、それに伴って、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行が増加しています(検出されたインフルエンザウイルスのうち、パンデミックH1N1は34%を占め、季節性のB型ウイルスは66%を占めています)。香港でも、2009年9月から10月の早期に活動性がピークに達し、そのピークよりもかなり低い水準にありますが、パンデミック・インフルエンザウイルスの活発な感染が続いています。

ヨーロッパでは、大部分の地域では、全体的な活動性は低いままですが、限られた数ヶ国では、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染が依然として活発です。20検体以上の定点呼吸器検体を検査している国のうち、少なくても7ヶ国(アルバニア、ブルガリア、チェコ、グルジア、ギリシア、ルクセンブルク、ルーマニア)では、検体のうち20%を超える検体でインフルエンザ陽性であったと報告されましたが、この7ヶ国すべての国で病気の割合は、早期にみられた活動性のピークよりも、かなり低いままでした。スロバキア、ベラルーシ、ロシアでは、過去2週にわたって、ILI/ARIが少し増加したと報告されました。定点の呼吸器検体のうち、インフルエンザ陽性検体が占める割合は、全体として、2009年11月上旬に45%とピークに達した後、14%に低下しています。

アメリカ大陸では、熱帯地域も、北部の温帯地域も、大部分の地域で、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、減少し続けているか、低いままです。中米とカリブ海沿岸諸国では、パンデミック・インフルエンザの感染は持続していますが、大部分の地域では、全体的な活動性は低いか、変化がないままです。

南半球の温帯地域では、パンデミック・インフルエンザの散発例が報告され続けていますが、地域での持続した感染はみられていません。

パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009ウイルスは、世界中で流行している優勢なウイルスとしてとどまっています。最近、中国で、季節性のB型インフルエンザウイルスの検出割合が増加したことに加え、アフリカ、東アジア、東南アジアの一部で、季節性のH3N2とB型のウイルスが低い水準で流行していており、その他の大陸では、散発的に検出されているだけです。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第3週:2009年7月13日~2010年1月24日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年2月7日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

前回の更新情報(2月5日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域:セネガル

前回の更新情報(2月5日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域 死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO) 167
アメリカ地域事務局(AMRO) 7261超
東地中海地域事務局(EMRO) 1018
ヨーロッパ地域事務局(EURO) 3648超
東南アジア地域事務局(SEARO) 1523
西太平洋地域事務局(WPRO) 1675
総数 15292超

※表を左右に動かしてご覧ください。

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください