パンデミック・インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年2月12日

今週の更新情報

2010年2月7日現在、世界中の212以上の国や地域から少なくても15,292人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

北半球の温帯地域では、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、ほとんどの国で低下し続けました。感染が活発に続いている地域のほとんどは、遅れてピークを迎えた地域で、特に、北アフリカ、南アジア、東アジアです。注目すべきこととして、セネガルが、西アフリカで、過去1ヶ月間にパンデミックH1N1 2009の最初の患者が確定された3番目の国(西アフリカ全体で5番目の国)となりました。このことが、西アフリカにおいて、これまでは地域でパンデミック・インフルエンザウイルスの感染が広がる重要な時期ではなかったのが、より広範囲に感染が広がる時期の始まりを告げることになるのかを決めるのには、現時点では根拠が不十分です。

北アフリカでは、パンデミック・インフルエンザの感染は続いていますが、活動性は、地域全体で過去1ヶ月以上、かなりの低下がみられました。モロッコでは、ILIの水準がベースライン近くに戻り、エジプトでは、確定患者数がかなり減少しました。

南アジアと東南アジアでは、パンデミック・インフルエンザの感染は地域全体で広範囲な流行が続いていますが、全体的な活動性は、ほとんどの地域で減少し続けているか、低いままです。インドでは、インフルエンザの感染は続いており、特に西部で目立ち、それより少数ですが、北部でもみられています。タイでは、全体的な活動性は低いままで、前週と変わりませんが、中部と北部で、インフルエンザの活動性が局地的に増加したことが報告されました。

東アジアでは、パンデミック・インフルエンザの感染は地域全体で続いていますが、ほとんどの地域で、全体的な活動性は大幅に低下しました。中国では、パンデミック・インフルエンザウイルスと季節性インフルエンザウイルスが、同時に流行が続いていますが、この数週間、B型の季節性インフルエンザウイルスが優勢になっています。日本では、インフルエンザの活動性は、他の地域よりも大きな活動性がみられた沖縄を含み、季節性のベースラインに向かって減少し続けています。韓国では、ILIの水準がベースラインに近づき、かなり減少しました。

ヨーロッパでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、広く流行が続いており、特に、中部、南部および東部ヨーロッパ全域で続いていますが、全体的な活動性は、冬の流行期の早期にみられた活動性のピークから、かなり減少しました。20検体以上の定点呼吸器検体を検査している15ヶ国では、インフルエンザの陽性検体が占める割合は、0~14%の範囲でした。最近、スロバキア、スロベニア、ロシアでは、ARIの割合がわずかに増加していますが、インフルエンザウイルスの検出と関係しているようにはみえず、たぶん、呼吸器感染症を起こす他のウイルスの流行によるものだと思われます。

サハラ以南のアフリカでは、限られたデータですが、サーベイランスデータをWHOに報告しているほとんどの国で、パンデミック・インフルエンザの感染は局地的で、全体的な活動性は低いかもしれません。

アメリカ大陸では、熱帯地域も、北部の温帯地域も、大部分の地域で、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、減少し続けているか、低いままです。中米とカリブ海沿岸諸国では、パンデミック・インフルエンザの感染は持続していますが、大部分の地域では、全体的な活動性は低いか、変化がないままです。グアテマラでは、呼吸器疾患が増加傾向にあり、強い感染が報告されましたが、この増加した活動性は、インフルエンザウイルスの検出の増加と関係しているようにはみえず、たぶん、呼吸器感染症を起こす他のウイルスの流行によるものだと思われます。

南半球の温帯地域では、パンデミック・インフルエンザの散発例が報告され続けていますが、地域での持続した感染はみられていません。パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009ウイルスは、世界中で流行している優勢なウイルスとしてとどまっています。最近、中国で、季節性のB型インフルエンザウイルスの検出割合が増加したことに加え、アフリカ、東アジア、東南アジアの一部で、季節性のH3N2とB型のウイルスが低い水準で流行していており、その他の大陸では、散発的に検出されているだけです。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第4週:2009年7月13日~2010年1月30日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年2月7日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(2月5日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域:セネガル

前回の更新情報(2月5日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)167
アメリカ地域事務局(AMRO)7261超
東地中海地域事務局(EMRO)1018
ヨーロッパ地域事務局(EURO)3648超
東南アジア地域事務局(SEARO)1523
西太平洋地域事務局(WPRO)1675
総数15292超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください