パンデミック・インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年2月19日

今週の更新情報

2010年2月14日現在、世界中の212以上の国や地域から少なくても15,921人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

流行状況は、先週の更新情報から大きな変化はありません。北半球の温帯地域では、東部・南部ヨーロッパ、南アジア、東アジアの限局した地域で、パンデミック・インフルエンザの感染が続いており、感染は活発ですが、減少しています。西アフリカの数ヶ国では、患者数の増加が報告されましたが、広範囲な感染が起こっていると結論づけるのには、まだ根拠が不十分です。タイとジャマイカで、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあると報告されましたが、この呼吸器疾患の原因は、現時点では不明です。

東南アジアでは、数ヶ国で呼吸器疾患が増加傾向にあると報告されましたが、全体的な活動性は低いままでした。タイでは、インフルエンザの散発的な感染が数ヶ月続いた後、呼吸器疾患の活動性が増加し、24県でILIの増加が目立ったと報告されましたが、国全体としての活動性は低いままです。ミャンマーとインドネシアでは、インフルエンザの活動性が局地的に増加し、呼吸器疾患が増加傾向にありますが、全体的な活動性は低いと報告されました。南アジアでは、インドの北部と西部で、インフルエンザの感染が続いていますが、インド、ネパール、バングラデシュ、スリランカでの全体的なインフルエンザの活動性は減少し続けているか、低いままでした。東アジアでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は続いていますが、ほとんどの国(中国、日本、韓国)では着実に減少しています。北朝鮮は例外で、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあると報告されました。西アジアでは、多くの国で、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染が続いていますが、この地域全体としての現在の活動性は低いままです。

北アフリカでは、パンデミック・インフルエンザの感染は続いていますが、活動性は、過去1ヶ月以上、かなり低下したとの報告が続いています。サハラ以南のアフリカでは、限られたデータですが、ほとんどの地域では、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は散発的なものかもしれないと示唆されます。西アフリカでは、数ヶ国で、パンデミック・インフルエンザの確定患者数の増加が報告され続けていますが、この地域で、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあると報告している国はありません。

ヨーロッパでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、中部と南東部ヨーロッパ全域で続いていますが、ほとんどの地域では、全体的な活動性は低いままでした。ギリシア、ブルガリア、トルコ、スロバキア、モルドバ、ロシアだけが、呼吸器疾患の活動性が中等度と報告しました。スロバキアとロシアでは、数週間、ARI/ILIの増加が報告されましたが、この2ヶ国の活動性の増加は、呼吸器感染症を起こす他のウイルスの流行によるものかもしれません。20検体以上の定点呼吸器検体を検査している12ヶ国のうち、ハンガリーだけが、インフルエンザの陽性検体が20%を超えたと報告しました。

アメリカ大陸では、熱帯地域も、北部の温帯地域も、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は低い水準で続いていますが、大部分の地域では、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、減少か、低いままの状態が続きました。中米とカリブ海沿岸諸国では、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は持続していますが、大部分の地域では、全体的な活動性は低いか、変化がないままです。ジャマイカでは、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあると報告されましたが、全体的な活動性は低いままです。

パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009ウイルスは、世界中で流行している優勢なウイルスとしてとどまっています。最近、中国で、季節性のB型インフルエンザウイルスの検出割合が増加したことに加え、アフリカとアジアの一部で、季節性のH3N2とB型のウイルスが低い水準で流行しています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第5週:2009年7月13日~2010年2月6日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年2月14日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

前回の更新情報(2月19日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域:ニジェール

前回の更新情報(2月19日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)167
アメリカ地域事務局(AMRO)7433超
東地中海地域事務局(EMRO)1018
ヨーロッパ地域事務局(EURO)4056超
東南アジア地域事務局(SEARO)1562
西太平洋地域事務局(WPRO)1685
総数15921超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください