パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年3月5日

今週の更新情報

2010年2月28日現在、世界中の213以上の国や地域から少なくても16,455人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

要約:北半球の温帯地域では、ヨーロッパとアジアの一部で、ウイルスの感染が続いていますが、ほとんどの地域では、インフルエンザの活動性は低下しており、低い水準にあります。現在、最も活発な感染がみられているのは、東南アジアと、東部・南東部ヨーロッパの一部地域です。アジアでは、最近、インフルエンザB型の報告数がますます増加しました。

南アジアと東南アジアの国々では、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行が続いています。タイでは活動性が増加し、ミャンマーではパンデミックウイルスの地域的な流行の報告が続いていますが、両国ともに、国全体の活動性の強さは依然として低い状態です。この地域では、他のすべての国で、呼吸器疾患の活動性が減少しています。東アジアでは、香港と台湾を含むほとんどの地域で、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染が低い水準で続いているか、ベースラインの水準に戻っています(日本と韓国)。注目すべきこととして、この地域では、季節性のB型インフルエンザウイルスの活動性が増加しており、モンゴル、中国、東南アジアの一部地域では、優勢なインフルエンザウイルスとなっています。日本でも、インフルエンザB型に関連した集団発生が報告されました。

オーストラリアとニュージーランドでは、全体的なインフルエンザの活動性は低い水準のままで、前年の同時期の水準です。今週、南太平洋諸島の国からは、H1N1インフルエンザの新規患者は報告されませんでした。

西ヨーロッパでは、インフルエンザの活動性は低く、大部分はベースラインに戻りました。しかし、東ヨーロッパの多くの国(ロシア、ブルガリア、アルメニア、モルドバ)では、まだ、呼吸器疾患の活動性が、ベースラインに比べて、若干増加していることを報告しています。呼吸器検体のうちインフルエンザが陽性となった検体の占める割合は、第7週では約3.5%に減少しました。陽性検体の大部分はパンデミック・インフルエンザでしたが、季節性のインフルエンザ H3N2とインフルエンザB型ウイルスがわずかに検出されました。

アメリカ大陸の北部の温帯地域では、パンデミック・インフルエンザウイルスは非常に低い水準での流行が続いており、パンデミック・インフルエンザの活動性は全体的に低く、減少している傾向にあります。しかし、メキシコとペルーでは、呼吸器疾患の活動性がわずかに増加しています。全体的な強さは依然として弱く、パンデミック・インフルエンザがどの程度関連しているかは不明です。中米とカリブ海沿岸諸国では、ほとんどの地域で、全体的な呼吸器疾患の活動性は低いままです。

北アフリカと西アジアでは、インフルエンザの活動性は低い状態です。しかし、報告によれば、パキスタンとアフガニスタンの北西部の地域では、呼吸器感染症が増加しています。この増加した活動性は、インフルエンザの流行によるものかどうかは明らかではありません。

サハラ以南のアフリカでは、サーベイランスデータは非常に限定されたものですが、西アフリカの数ヶ国で、パンデミック・インフルエンザの患者数の報告が増加しています。アフリカの他の地域のデータでは、ほとんどの国で、インフルエンザの活動性は低く、感染は散発的な状態が続いていると示唆されます。季節性のインフルエンザH1N1、H3N2、インフルエンザB型が、依然として、若干検出されていると報告されています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第7週:2009年7月13日~2010年2月20日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年2月28日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(2月26日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域はありません

前回の更新情報(2月26日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)167
アメリカ地域事務局(AMRO)7539超
東地中海地域事務局(EMRO)1018
ヨーロッパ地域事務局(EURO)4388超
東南アジア地域事務局(SEARO)1633
西太平洋地域事務局(WPRO)1710
総数16455超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください