パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年3月12日

今週の更新情報

2010年3月7日現在、世界中の213以上の国や地域から少なくても16,713人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発にみられているのは、東南アジアですが、アジアの他の地域や、東部・南東部ヨーロッパで、パンデミックウイルスの流行が低い水準で続いています。西アフリカでは、限られたデータですが、この地域でのパンデミック・インフルエンザウイルスの感染が増加しているかもしれないと示唆されます。注目すべきこととして、アジアでは、季節性のB型インフルエンザウイルスの検出数がますます増加しており、西の方へ広がっているようです。

サハラ以南のアフリカでは、限られたデータですが、西アフリカの地域で、パンデミック・インフルエンザウイルスの地域内感染が進行中で、広がり続けていると示唆されますが、活動性のピークがあるという明らかな証拠はありません。セネガルやコートジボワールなどの数ヶ国にある、サーベイランスの定点では、パンデミック・インフルエンザウイルスの検出数の増加がみられています。しかし、現在、患者の重症度に関するデータは限られています。ルワンダでも、最近、インフルエンザの活動性が増加したと報告されました。アフリカの東部と南部では、パンデミック・インフルエンザの活動性のピークは早期にみられ、東部では 2009年11月、南部では2009年の夏にピークとなりました。

南アジアと東南アジアの国々では、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行が続いています。しかし、全体的な感染は、依然としてタイで最も活発にみられており、特に2010年1月中旬以降、感染が活発です。タイでは、約半数の県で、全外来受診者数のうち、10%を超える患者がILIのために受診し、定点では、ILIの患者の約25%でインフルエンザが陽性であったと報告されました。タイにおける、現在の患者数の増加は、2009年6月から9月にかけてみられた早期のピーク時に比べ、依然として、ずっと低い水準にあります。バングラデシュでは、呼吸器疾患の増加傾向にあると報告されましたが、全体的なインフルエンザの活動性は低いままです。インドでは、インフルエンザウイルスの感染は西部で低い水準で続いていますが、他の地域の活動性は、大部分で収まりました。

東アジアでは、パンデミック・インフルエンザの活動性が低い水準で続いています。日本と韓国ではベースラインの水準に戻っています。モンゴルでは、最近ILIの活動性が急に増加しましたが、主に、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行が再興したことに関連していました。中国では、パンデミック・インフルエンザの活動性は、2009年11月のピーク時以降低下しましたが、全体的なインフルエンザの活動性は依然として高くなっており、これは主に、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行が増加したことによるものです。

北アフリカと西アジアでは、大部分の地域では、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は低いままですが、イラクとアフガニスタンは例外で、この2ヶ国は、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあり、インフルエンザが地域的に広がっていることを報告しました。アフガニスタンでは、呼吸器疾患の活動性が増加したことに伴い、医療機関への影響が中等度であると報告されました。イランでは、全体的なインフルエンザの活動性は低いままですが、最近検出されたインフルエンザウイルスはすべて季節性のB型インフルエンザウイルスでした。

ヨーロッパでは、全体的なパンデミック・インフルエンザの感染は減少し続けましたが、東部・南東部ヨーロッパの地域では、パンデミック・ウイルスの流行が低い水準で続いています。呼吸器検体のうちインフルエンザが陽性となった検体の占める割合は依然として低い(6.8%)ですが、前週に比べてわずかに増加しました。パンデミックH1N12009ウイルスは、ヨーロッパ地域で流行している優勢なインフルエンザウイルスとして留まっていますが、ロシアとスウェーデンは例外で、B型インフルエンザがパンデミック・インフルエンザとともに優勢か、B型が優勢と報告されました。

アメリカ大陸の温帯地域では、インフルエンザウイルスの流行は低い水準で続いており、全体的なパンデミック・インフルエンザの感染は、依然として低いままです。中米では、ニカラグアとホンジュラスで、呼吸器疾患の活動性がわずかに増加したと報告されましたが、学校での集団感染の増加によるものかもしれません。しかし、その増加に、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行がどの程度関連しているのかは、明らかではありません。ブラジルでは、全体としての強さは弱いですが、インフルエンザウイルスの地域的な拡大に伴って、呼吸器疾患の増加傾向が報告されました。

南半球の温帯地域では、全体的なインフルエンザの活動性は低いままで、パンデミックと季節性のインフルエンザウイルスは散発的に検出されています。

パンデミック・インフルエンザウイルスは、世界中で流行している優勢なインフルエンザとして留まっています。しかし、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行が、アジア全域、東部ヨーロッパの地域、東アフリカで、増加し、広がり続けており、とりわけ中国、モンゴル、イラン、ロシアでみられています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第8週:2009年7月13日~2010年2月27日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年3月7日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(3月5日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域はありません

前回の更新情報(3月5日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)167
アメリカ地域事務局(AMRO)7576超
東地中海地域事務局(EMRO)1019
ヨーロッパ地域事務局(EURO)4571超
東南アジア地域事務局(SEARO)1664
西太平洋地域事務局(WPRO)1716
総数16713超

※表を左右に動かしてご覧ください。

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください