パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年4月1日

今週の更新情報

2010年3月28日現在、世界中の213以上の国や地域から少なくても17,483人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザウイルスH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数の情報のモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発にみられているのは、アジア、アメリカ、アフリカ大陸の熱帯地帯です。パンデミック・インフルエンザウイルスの活動性は、北半球および南半球の温帯地域のほとんどで、依然として低いままです。パンデミック・インフルエンザウイルスは、依然として世界中で流行しているインフルエンザウイルスとしては優勢ですが、季節性B型インフルエンザウイルスは東アジアのほとんどで優勢であり、東南アジア、西アジア、東アフリカ、東および北ヨーロッパの一部では、低い水準ですが検出数が増加しました。季節性のA型インフルエンザ(H3N2)は、アジアとオーストラリアの一部で非常に少数ではありますが、引き続き検出されています。

東南アジアでは、パンデミック・インフルエンザウイルス感染が依然として活発ですが、地域差がみられます。タイでは、パンデミックウイルスの流行が最も活発であることが引き続き報告されていますが、活動性は最近ピークに達したか、減少し始めた可能性があります。タイの県全体の約半数では、外来患者の10%以上がインフルエンザ様疾患(ILI)によるものとの報告でした。定点での外来患者の呼吸器検体のうち、インフルエンザ陽性は、2010年2月中旬のピーク時約30%より、10%まで低下しました。マレーシアでは、限られたデータですが、新しい症例の報告は続いていますので、パンデミック・インフルエンザウイルス感染が持続していることが示唆されます。インドネシアでは、最近パンデミック・インフルエンザが活動性であるとの報告はありませんが、季節性のインフルエンザA(H3N2)およびB型ウイルスが、低いレベルで検出され続けています。ミャンマーでは、限られたデータですが、2010年2月中の活発な感染時期からパンデミック・インフルエンザウイルス感染は減少しています。

南アジアでは、バングラデシュを除いて、パンデミック・インフルエンザウイルスの活動性は依然として低いままです。バングラデシュでは、2010年2月下旬以降、新たな症例の増加と関連してパンデミック・インフルエンザウイルスの地理的な拡大が報告されています。インドでは、西部でパンデミック・インフルエンザウイルスの感染が低いレベルで続いています。

東アジアでは、全体としてパンデミック・インフルエンザの活動性は依然として低いですが、季節性のB型ウイルスの感染は増加し続けています。中国では、ILIの活動性は著しく低下しました。しかし、最近の数週間でも呼吸器検体の約20~30%は、インフルエンザ陽性となりました。これらのうち、85%以上が季節性のB型インフルエンザウイルスでした。モンゴルでは、最近の季節性のB型ウイルスに起因するインフルエンザの活動性が大きく増加した後、低下し続けています。日本および韓国では、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染が衰え続けており、ILIはほぼベースラインに戻りました。他の東アジアおよび東南アジア、オセアニア(香港、日本、韓国、台湾、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、オーストラリア)では、季節性のB型ウイルスの流行は低いレベルです。また。東および東南アジア、オセアニアで、特にインドネシアおよびオーストラリアでは、季節性インフルエンザ (H3N2) が少数検出されています。

北アフリカおよび西アジアでは、限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザウイルスは低いレベルで流行を続けており、全体として疾患活動性は、この地域のほとんどで低いままでした。イランでは、最近はパンデミック・インフルエンザウイルスは検出されていませんが、季節性のB型ウイルスは引き続き低いレベルで検出されています。

サハラ以南のアフリカでは、限られたデータによるとパンデミック・インフルエンザウイルスの流行には依然として地域差がありますが、特に活発な地域は、西アフリカおよび東アフリカの一部の地域です。東アフリカ、特にルワンダおよびタンザニアでは、パンデミック・インフルエンザの局地的流行が続いています。パンデミック・インフルエンザウイルスは、依然として西・東アフリカで流行している優勢なインフルエンザウイルスですが、季節性のH3N2、H1N1、および季節性のB型ウイルスも少数検出されました。

アメリカ大陸の熱帯地域では、全体的にみて、インフルエンザの活動性は依然として低いままですが、一様ではなく、多くの国では一部の地域に限って活発な感染が認められます。グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、パナマ、ブラジル、ペルー、ボリビアでは、2010年3月の少なくとも一週以上の間みられたパンデミック・インフルエンザウイルスの流行に関連して、呼吸器疾患が増加傾向にあると報告されました。一部地域でパンデミック・インフルエンザの活動性が増加したのは、数カ国では学校でのアウトブレークと関連がありました。しかし、いくつかの地域での疾患活動性は、他のウイルス性呼吸器疾患との共流行によるものかもしれません。

パンデミック・インフルエンザウイルス流行のもっとも活発な地域は、ブラジルのようです。ブラジルでは北部地域の疾患活動性がパンデミック・インフルエンザウイルスの感染と関連しています。メキシコでは、データは限られていますが、2010年の3月を通して、パンデミック・インフルエンザウイルスの地域的な活動性感染が、いくつかの州で依然として起こっていることが示唆されていますが、全体的なインフルエンザの活動性は、秋のインフルエンザシーズンにみられたピークまでには増加しませんでした。

北米と南米の温帯地域では、インフルエンザウイルスの感染は低い水準で続いており、全体的なパンデミック・インフルエンザ感染は依然として低いままです。米国ではILIの活動水準は、米国における季節ベースラインより低いままですが、10の地域サブカテゴリーのうち3地域では、ILI活動性がベースラインを再度上回ったとの報告がありました。パンデミック・インフルエンザ感染の最も活発な地域は、現在、米国東南部、特にアラバマ州、ジョージア州、サウスカロライナ州であり、これらの州ではインフルエンザの活動性が拡大していることが報告されています。これに一致して、最近の数週間のパンデミックH1N1の確定重症例の増加も、米国東南部で認められました。カナダでは、ILI活動性は季節ベースラインより低いままです。南半球の温帯地域では、全体的なインフルエンザの活動性は低いままでパンデミックと季節性インフルエンザウイルスが散発的に検出されています。

ヨーロッパでは、地域全域で、特に南欧と東欧全域で低い水準でパンデミック・インフルエンザウイルスの流行が続いています。定点の検体のうち、インフルエンザウイルスが陽性になる割合は低値です(4.6%)。三カ国(ラトビア、リトアニア、ブルガリア)は、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあると報告していますが、この傾向は、パンデミック・インフルエンザウイルスの検出の増加と関連はありません。季節性のB型ウイルスの流行増大は、ロシア連邦のシベリアおよび極東地域において認められ、イタリア、スウェーデンでは、低い水準ではありますが、このウイルスの優勢な流行が続いています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な流行を監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの週更新情報を参照してください。

ウイルスのサーベイランスデータの更新情報

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第11週:2009年7月13日~2010年3月20日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、急性呼吸器疾患の傾向、呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年3月28日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(3月26日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域はありません

前回の更新情報(3月26日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)167
アメリカ地域事務局(AMRO)8175超
東地中海地域事務局(EMRO)1019
ヨーロッパ地域事務局(EURO)4669超
東南アジア地域事務局(SEARO)1726
西太平洋地域事務局(WPRO)1727
総数17483超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査が実施されていないか、インフルエンザに関連していると認識されていないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください