パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年4月9日

今週の更新情報

2010年4月9日現在、世界中の213以上の国や地域から少なくとも17,700人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

現在の状況は、最後の更新時からほとんど変更はありません。パンデミック・インフルエンザの流行が最も活発にみられているのは、東南アジア、西アフリカ、アメリカ大陸の熱帯地域です。南半球の温帯地域にあるチリでは、通常の南半球の冬季インフルエンザシーズンの開始に先立ち、早期の局地的なパンデミック・インフルエンザウイルスの流行が起きている証拠があります。季節性B型インフルエンザは東アジアで、活発な流行が続いていますが、アジアの他の地域やヨーロッパでも低い水準で検出されています。

東南アジアで、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染伝播の活動性が最も高いのは、引き続きタイです。しかし、全体として、疾患の活動性は2009年の2月末のピーク以来、かなり低下してきました。報告された最近の週では、ILIの外来患者と肺炎入院患者の、定点の呼吸器検体におけるパンデミック・インフルエンザ陽性率は、それぞれ、6.7%と16%でした。低い水準ですが、季節性のインフルエンザH3N2およびB型インフルエンザウイルスも、この数週タイで検出されています。マレーシアでは、データは限られていますが、パンデミック・インフルエンザの活動性はおそらく低下しており、新しい症例はほとんど検出されていません。インドネシアでは、最近みられた季節性インフルエンザウイルスH3N2の低い水準での流行は、消退しつつあるようです。

南アジアでは、限られたデータによると、パンデミック・インフルエンザウイルス感染がもっとも活発な地域は、引き続きバングラデシュで、2009年2月末以来症例数の増加が検出されています。インド西部において、パンデミック・インフルエンザウイルスの低い水準での流行が持続していますが、インド亜大陸のその他の地域では、パンデミック・インフルエンザの活動性は全体として低いままです。

東アジアではパンデミック・インフルエンザウイルスの流行は引き続き非常に低い水準で、概してほとんどの地域で、呼吸器疾患の罹患率は引き続き低値です。中国では、現在のインフルエンザの活動性は、(検出されるインフルエンザウイルスの90%超と算出されている)季節性インフルエンザB型の流行による一方、全体的なILI罹患率は、推定される季節性の水準相当に留まっています。モンゴルでは、ILI罹患率は、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行に関連してみられた最近のインフルエンザの活動のピークの後、引き続き減少しています。韓国、香港、台湾では、ILIの罹患率およびインフルエンザウイルスの検出は全般的に低値のままですが、最近の数週では、季節性インフルエンザB型のウイルスが分離される割合が増加しています。

サハラ以南のアフリカでは、限られたデータですが、西アフリカおよび中部西アフリカ各地、および、程度は低いものの、東アフリカの限定された地域に、パンデミック・インフルエンザウイルスが活発に流行し続けていることが示唆されています。2009年3月初旬から中旬にかけて、コートジボワールとガーナの両国で採取された呼吸器検体の23%がインフルエンザ陽性でした(分離されたウイルスの大部分がパンデミック・インフルエンザウイルスH1N1)。セネガルでは、パンデミック・インフルエンザの感染伝播は依然として活発ですが、定点の検体のパンデミック・インフルエンザ陽性率が、2010年2月上旬にみられたピークの67%から、報告された最近の週の17%に低下したように、活動性は低下しつつあるようです。カメルーンでは、この2週間で呼吸器検体の38%(13/34)がインフルエンザ陽性でした。この中の71%がパンデミック・インフルエンザで、29%が季節性のB型インフルエンザウイルスでした。東アフリカ地域、特にルワンダとタンザニアでは、パンデミック・インフルエンザの感染が依然として活発である地域がみられます。パンデミック・インフルエンザウイルスは、引き続き西アフリカ、東アフリカで流行しているインフルエンザウイルスとして優勢です。しかし、少数の季節性インフルエンザウイルスH3N2も検出されています。

ヨーロッパでは、パンデミック・インフルエンザウイルスは、依然として限られた地域に低い水準で流行しています。全体として、定点の呼吸器検体におけるインフルエンザの検査陽性率は低いままです(6.2%)。最近報告のあった週では、定点でのインフルエンザB型の全検出数はパンデミック・インフルエンザウイルス検出数を上回りました。イタリアでは、31%(9/29)の定点の呼吸器検体が検査上インフルエンザ陽性であり、そのすべてが季節性のB型インフルエンザでした。ヨーロッパのほとんどの国で、呼吸器疾患の罹患率は低いと報告されています。グルジアだけがインフルエンザの活動が広域にみられると報告されています。

アメリカ大陸の熱帯地域では、限られたデータによると、全体として引き続きインフルエンザの活動性は低いままですが、いくつかの国では局地的に感染の活動性が高い地域があり、活動性の変動がみられます。これにはキューバ、グアテマラ、ペルー、ボリビアなどがあり、これらすべての国で、報告のあるこの2週間のうち少なくとも1週間で、局地的から地域的なレベルへのインフルエンザ活動の拡大に関連して、呼吸器疾患の増加傾向があると報告しています。メキシコでは、データは限られていますが、2010年3月を通じて、パンデミック・インフルエンザウイルスの局地的な活発な感染伝播が、いくつかの州で依然として起こっていることが示唆されています。特に、連邦直轄地のいくつかの地域で、パンデミックH1N1ウイルス感染の重症例や致死例の増加が報告されています。ブラジルでは、過去1か月の間、多地域に渡って、定点当たりのILI水準の増加が報告されています。しかしながら、最近のパンデミック・インフルエンザウイルス感染による重篤で致死的な疾病は、北部地域から報告されています。

北米の温帯地域では、インフルエンザウイルスの流行が依然として非常に低い水準であるため、全体的に見てパンデミック・インフルエンザ感染は低いままです。米国では、全体的なILIの活動水準は、全国的なベースラインを下回ったままで、(地域的な増加は、定点あたりのパンデミック・インフルエンザウイルスや、他のインフルエンザウイルスの検出の増加には関連しませんが、)米国南西部において地域のベースラインをわずかに上回ったに過ぎません。米国におけるパンデミック・インフルエンザウイルス感染伝播の最も活発な地域は、現在は、南東の3州のようです。そのいずれの州においてもインフルエンザ活動性の地域的な拡大が報告されました。

南半球の温帯地域では、全体的なインフルエンザの活動性は低いままで、パンデミック・インフルエンザウイルスや、季節性インフルエンザウイルスの検出は主として散発的なものに留まっています。注目すべきことして、チリは、過去2週間、少なくとも3地域で、少数の重症例を含むパンデミックウイルスの新たな検出を報告しています。通常の冬季のインフルエンザシーズンに先立つ、この早期の限られたパンデミックウイルスの流行が何を意味するのかは、まだわかっていません。

季節性インフルエンザH3N2散発的な検出は、アジア、アフリカ、オーストラリア、そしてアメリカで報告され続けています。しかしながら、最も活発な(しかし全体としては低い)季節性H3N2 ウイルスの流行は、インドネシアで報告されています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第9週:2009年7月13日~2010年3月27日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年4月4日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(3月28日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域はありません

前回の更新情報(3月28日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)167
アメリカ地域事務局(AMRO)8217超
東地中海地域事務局(EMRO)1019
ヨーロッパ地域事務局(EURO)4763超
東南アジア地域事務局(SEARO)1733
西太平洋地域事務局(WPRO)1801
総数17700超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください