パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年4月23日

今週の更新情報

2010年4月18日現在、世界中の214以上の国や地域から少なくても17,853人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発にみられているのは、西及び中央アフリカです。しかし東南アジアや中央アメリカでもまだ流行は続いています。パンデミック・インフルエンザの活動性は北半球・南半球の温帯地域では低レベルで続いています。一方、季節性のB型インフルエンザの検出される地域は増加傾向にあり、東アジア、中央アフリカ、北及び東ヨーロッパでは流行中のインフルエンザウイルスとして優位に認められます。僅かな数ですが最近、中央アメリカでも季節性のB型インフルエンザが検出されました。季節性インフルエンザH3N2はまだ南及び東南アジア(主にインドネシア)で検出され続けていますし、西アフリカや東ヨーロッパのいくつかの国で散発的に見つかっています。

ヨーロッパではほとんどの国で呼吸器疾患の頻度は低く、インフルエンザの割合は、呼吸器検体での陽性率6.8%程度に過ぎないと報告されています。また、今週も引き続き低いながらもB型インフルエンザの検出率がA型を上回っていることが分かりました。注目すべきこととして、東ヨーロッパからは季節性インフルエンザH1N1及びH3N2の散発例が報告されています。

東アジアでは、パンデミック・インフルエンザはほとんど検出されなくなりました。中国、モンゴル、韓国でのインフルエンザ様疾患(ILI)は主にB型インフルエンザに起因しています。中国ではインフルエンザ全体の活動性は引き続き低下傾向にあり、今週パンデミック・インフルエンザの検出はありませんでした。モンゴルではB型インフルエンザがまだ流行していますが、最近のピーク以後は減少傾向にあります。韓国ではこの数週間、B型インフルエンザ流行の増加に伴い、呼吸器疾患の増加傾向が報告されていす。また、この地域では季節性インフルエンザH1N1及びH3N2の散発例が続いています。

南及び東南アジアで最もパンデミック・インフルエンザが流行しているのはマレーシア、シンガポール及びタイです。この地域ではパンデミック・インフルエンザが優位に流行していますが、同時にインフルエンザH3N2やB型インフルエンザもシンガポール、タイ、インドネシアで流行しています。シンガポールではILIや急性呼吸器感染症(ARI)の発生率は先週に比べて増えてはいますが、依然として流行閾値を超えていません。一方、インドネシアはこの地域の他の国々とは異なり、インフルエンザH3N2が優位に流行し、B型インフルエンザやパンデミック・インフルエンザはほとんど検出されていません。マレーシアではILIによる呼吸器疾患による受診が、ほとんどの州で先週に比べて増加していると報告がありました。バングラデシュでは少数ですが先週に比べてパンデミック・インフルエンザが引き続き増加していることが検出されています。

入手可能な限られた情報によると、北アフリカでの呼吸器疾患の活動性は低いままのようです。アフリカのサハラ以南の入手可能な情報からは西アフリカでのパンデミック・インフルエンザ流行がコミュニティレベルで進行していることが分かります。セネガルでの流行のピークは2月でしたが、ガーナでの活動性は斬減傾向ではあるものの、依然活発な様子です。コートジボワールやニジェールでは呼吸器疾患が増えているようではありますが、ウイルスに関する情報は入手できませんでした。中央アフリカではカメルーンで低いレベルのパンデミック・インフルエンザの活動性が伝えられています。加えてアンゴラからは少数の季節性インフルエンザH3N2が検出されました。東アフリカではパンデミック・インフルエンザが減少はしているもののルワンダからまだ検出されているのに加えて、依然として少数の季節性インフルエンザH3N2がルワンダとケニアで報告されています。南アフリカからは呼吸器疾患の増加やパンデミック・インフルエンザの検出は報告されていません。中央アフリカのいくつかの国ではB型インフルエンザの検出が増加しているようです。

アメリカの熱帯地域のエクアドルやエルサルバドル、グアテマラからは呼吸器疾患が増えていると報告がありました。グアテマラでは呼吸器疾患での受診が先週に比べて80%増加しました。また、注目すべきこととして、RSVやパラインフルエンザ、アデノウイルスなどの呼吸器感染ウイルスが少数のパンデミック・インフルエンザに加えて同時に検出されました。メキシコでは2010年4月の初めに、ILIや重症急性呼吸器疾患(SARI)の症例が前週に比べて38.6%減少したことが、定点観察でわかりました。

南半球の温帯地域では、チリでの地域的なILIの増加が過去4週で認められたと報告されています。国内でのILIのレベルは流行閾値以下ではありますが、Los Lagos, Tarapacá、また南部のいくつかの地域でILIのレベルが流行閾値を超えました。最新の報告週では、定点サーベーランス検体の6.8%で呼吸器ウイルスが陽性でした。これらの陽性検体のうち52.9%がRSV陽性であり、23.5%がアデノウイルス、11.8%がパンデミック・インフルエンザウイルス陽性でした。オーストラリアやニュージーランドでは冬季のコミュニティーレベルでのインフルエンザの流行に関する証拠はまだありません。オーストラリアでは少数のパンデミックH1N1やB型インフルエンザが散発的に検出されています。

週間アップデート(ウイルスサーベーランスデータ)

抗ウイルス薬耐性のパンデミックH1N12009ウイルスは積算で285のままです。2010年4月16日以降、追加はありません。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第14週:2009年7月13日~2010年4月10日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス[PDF形式:425KB]

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年4月18日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(No.96, 4月16日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域:なし

前回の更新情報(No.96, 4月16日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域:なし

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)168
アメリカ地域事務局(AMRO)少なくとも8309
東地中海地域事務局(EMRO)1019
ヨーロッパ地域事務局(EURO)少なくとも4783
東南アジア地域事務局(SEARO)1769
西太平洋地域事務局(WPRO)1805
総数少なくとも17853

※表を左右に動かしてご覧ください。

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください