2010年FIFAワールドカップで南アフリカを訪問するみなさんへ - ガイド

南アフリカ国立伝染病研究所(NICD)

イントロダクション

現在南アフリカは、6月11日から7月11日にかけて開催される、全世界でもっとも大規模なスポーツトーナメントのひとつである2010年FIFAワールドカップのホスト国として、最後の準備をしているところです。公式試合はBloemfontein、Cape Town、Durban、Johannesburg、Nelspruit、Polokwane、Port Elizabeth、Pretoria 、Rustenburgで行われることになっています。国立伝染病研究所(NICD)もこの期間に公衆衛生上のサービス援助のために準備を整えています。私たちNICDは、世界中からの何千という訪問客の皆さまが、どのような伝染性疾患のリスクがあるのか、またワールドカップ期間に皆さまが安全を確保するためどのような行動をとっていただく必要があるのかについて、確実に十分な情報が提供されるようにする責務があります。このために、NICDは「2010年FIFAワールドカップで南アフリカを訪れる皆様へのガイド」を、簡単にアクセスでき必要に応じて更新される情報としてまとめました。

南アフリカの実情について(概略)

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  • 2010年FIFAワールドカップは南アフリカの冬季インフルエンザシーズンの間に開催されることになります。インフルエンザA型(H1N1)豚インフルエンザとも呼ばれるパンデミック株は2010年のインフルエンザ感染の大多数を占めることが予想されます。南アフリカへの旅行者は、渡航医療を行っている臨床医にインフルエンザワクチンの必要性があるか相談すべきです。南半球用の3価のインフルエンザワクチンは2010年3月から入手可能で、インフルエンザA型(H1N1)パンデミック株も含まれる予定です。
  • 南アフリカのすべての州で麻疹(はしか)が流行中です。南アフリカで2010年4月に予定された集団一斉接種キャンペーンによって、麻疹の数は減少すると考えられます。これまでに麻疹ワクチンを受けていないか、以前麻疹にかかっていても免疫があるという証拠がない訪問客の方は、旅行前に麻疹ワクチンを受けることを考慮しなければなりません。
  • 南アフリカでは黄熱病の危険性はありませんが、国際保健規約にしたがい、黄熱病感染のみられる国から南アフリカを訪れる場合には、過去10年以内にワクチン接種を受けたという証明が必須です。黄熱病感染のみられる国はアフリカおよび南アメリカにあります。すべての国のリストはhttp://www.sa2010.gov.za/en/confederations-cup/health-zでアクセスできます。(FORTH:検疫情報管理室)https://www.forth.go.jp/useful/yellowfever.html#world_list
  • 南アフリカはポリオがみられない国と考えられており、1989年以降、野生型のポリオはみられていません。しかし、ポリオの輸入に対しては現在も脆弱です。以下の国からの15歳未満の旅行者はポリオの追加接種を受けるべきです。:Chad、Côte d'IvoireDemocratic Republic of Congo、Ethiopia、Ghana、Guinea、India、Kenya、Liberia、Mali、Nepal、Niger、Nigeria、Sierra Leone、Somalia、Sudan、Pakistan、Togo、 Uganda。
  • マラリアが南アフリカリンポポ州、ムプマランガ州、クワズール・ナタール州の低地帯で発生しています。しかし、冬の月の間に(つまりワールドカップ期間に)感染が起こることはまれです。これに加えて、マラリア感染は試合が開催される都市部では起こりません。マラリアのリスクがある地域を訪問する際には、DEETを主成分とした虫除け剤の使用や、蚊から防護できる服装の着用を常に心がけるべきです。南アフリカでのマラリアのリスクがある地域については、図1を参照してください。
  • マラリアのリスクがある地域を旅行した後に熱性の疾患にかかった人に対しては誰でも、マラリアを強く疑わなければなりません。マラリアの種類としては、熱帯熱マラリアが多くみられます。抗マラリア薬のクロロキンの効かないマラリアが広範囲に分布しているため、治療にはアーテミシンを用いた併用療法を行います。近隣諸国(モザンビークなど)を訪問する予定がある訪問客の皆さまは、蚊に刺されない防護手段をとるだけでなく、マラリアに対する予防薬の内服を考慮する必要があります。2009年マラリア予防ガイドラインは健康省の以下のサイトでアクセスできます。http://www.doh.gov.za/docs/factsheets/guidelines/prevention_malaria09.pdf
    (FORTH:検疫報管理室)https://www.forth.go.jp/useful/malaria.html
  • 南アフリカではHIVやその他の性行為感染症(STIs)の有病率が高値です。安全なセックスを行うこと、感染するリスクを減らすためにコンドームを使用することを推奨します。
  • 南アフリカでは狂犬病が流行しており、主として犬との接触によって起こっています。マングース、ネコ、ウシ、オオミミギツネ(bat-eared fox)、その他の動物も感染している可能性があります。訪問客のリスクは一般的に低く、暴露(咬傷を受けること)を受けた場合には、ワクチンと抗狂犬病免疫グロブリンによる暴露後の予防が利用できます。
  • 南アフリカでは散発的な髄膜炎菌疾患の発生が、5月から10月にかけて季節性に増加します。しかし、旅行前にワクチンを受けることは、通常のこととしては推奨していません。
  • 南アフリカではダニ熱(tick-byte fever)はごくありふれた疾患です。感染しているイヌダニ、ウシダニ、動物ダニによって媒介されます。動物保護地域や農場のような田園地帯や未開地を訪れない限り、感染するリスクは低いでしょう。防護できる服装をすること、DEETを含有した虫除け剤を使用することが、感染ダニに咬まれることを防止するために推奨されます。ダニ熱に対するワクチンはなく、予防的に抗生物質を飲むことに効果があることは示されていません。ダニ熱に対しての治療は利用できます。
  • 南アフリカでは結核(TB)の有病率が高く、国際保健機関(WHO)によって高蔓延国に分類されてきました。TBにかかるリスクが最も高いのが、HIV/AIDS患者のように免疫抑制状態にある人や、糖質コルチコイドやその他の免疫調節薬剤を服用している人です。十分に換気をすること(機械的にあるいは自然に)、日光をあてることがTB感染のリスクを減少させます。このことから、試合が行われるスタジアムでTBにかかるリスクは非常に小さいです。BCGワクチンは乳児・小児に重症型のTBが起こる可能性を減らすために、大多数の発展途上国で出生時に一回接種されています。BCGワクチンは成人型のTB予防には、一定の効果を示していません。このため、ルーチンには推奨されません。さらなる情報は下記にアクセスください。http://www.cdc.gov/tb/publications/factsheets/general/tbtravelinfo.htm
  • 水道の蛇口から水を飲むことは、比較的大きい都市では安全であると考えられています。しかし、小さい町では水の質は様々です。水道水は有害な微生物がいないように処理されています。地域によっては、水道水はミネラル成分のために少し着色しています。この場合、害はなく、質はまだ保たれていると安心してください。川や小川から直接水を飲むことは、水を介する感染のリスクをもたらすことになりえます。
  • スーパーマーケットやレストラン、ファーストフード店で売られている食品は一般に安全と考えられます。地域で売られている肉、鶏肉、海産物、果物、野菜は一般には摂取しても安全です。旅行者として、街路での食品売りや非公式の出店から買った食品を食べる際には注意するように助言申し上げます。FIFAワールドカップの公式施設では食品提供についての認定を行っています。

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