アジア、インド洋地域のチクングニア熱の流行状況

CDC Travelers' Health (Outbreak Notice) 2010年6月8日

チクングニア熱についての情報

2006年以来、アジアおよびインド洋地域の一部で、チクングニア熱の活動性がみられるとの報告があります。この疾患に対するサーベイランスを強化している国もあり、この地域全体で症例報告が続いています。

チクングニア熱は感染した蚊が人を刺すことによって広がる病気です。症状としては、突然の発熱、関節痛(腫れがある場合とない場合があります)、悪寒、頭痛、悪心、嘔吐、背部痛、そして発赤やかゆみをともない、ある部位からその他の部位にと拡がる発疹や皮膚の違和感などがあります。チクングニア熱は、主に、アフリカとアジアの地域に存在します。2007年、イタリアでチクングニアの局地的な感染が起こりました。

以下の例は、アジアとインド洋地域における最近のチクングニアの流行について注目したものです。

2009年、マレーシア保健省は4430例を超えるチクングニア熱がみられたと報告しました。死亡例は報告されていません。もっとも感染が多かった地域はSarawak Kedahの北部の県で、引き続いてKelantan, Selangor, Perakでした。チクングニア熱の活動性は2010年でも続いています。5月15日の段階でさらに549例の増加があり、主としてSarawakで発生がありました。

2009年の間にタイでは49,069例のチクングニア熱の症例報告がありました。ほとんどの症例がこの国の南部で報告されています。インドネシアでも43,000例以上が報告されています。

チクングニア熱の現在フランス領レユニオン島でも活動性を持っています。ここでは、3月17日から5月19日にかけて、チクングニア熱確定例が67例、疑い例が23例報告されました。ほとんどの症例がSaint-Paulの西部地域で同定されています。健康当局はこの島でのチクングニア熱のサーベイランスを強化しています。

旅行者に対する推奨事項

チクングニア熱になることを防ぐ薬剤やワクチンはありません。CDCはチクングニア熱が報告されている地域に旅行する旅行者に、蚊に刺されないように次のような注意を守るように推奨します。

  • 屋外にでかける場合や網戸が十分でない建物にいる場合には、昆虫忌避剤を皮膚の露出部につけてください。日焼け止めが必要な場合には、昆虫忌避剤を使用する前につけてください。
  • 以下の有効成分のいずれかが含まれている忌避剤を使用してください。DEET、ピカリジン(picaridin:KBR 3023)、レモンユーカリの木の油(PMD)、IR3535忌避剤を使用する場合には、必ず添付文書にかかれた使用法を守ってください。
  • 通常、忌避剤の蚊に対する防御効果は、どの成分であっても有効成分の濃度に比例して持続性が長くなります。しかし、50%超えた場合、持続時間の延長はあまりみられなくなります。有効成分濃度が10%未満の場合、1から2時間以下といった短い防護効果しかえられないかもしれません。
  • アメリカ小児科学会は2ヶ月を超える小児についてはDEET濃度30%までの忌避剤使用を認可しています。
  • 2ヶ月未満の乳児の場合には、ベビーカーを下部に伸展性がありベビーカーにぴったりと合う蚊帳で覆って使用してください。乳児、小児に対する忌避剤の使用については、「乳児小児と安全に旅行するには」の「昆虫およびその他の節足動物に対する防御」のセクション、CDCの「昆虫忌避剤に関するFAQ(小児)」をご参照ください。
  • 昆虫忌避剤についてさらに情報が必要な場合には、ウェブページの「蚊やダニから自分を守るには」をご参照ください。
    あなたが熱をともなう病気になり、チクングニア熱にかかった可能性があると考えた場合には、医療機関を受診してください。この疾患に対する特異的な治療はありませんが、医師は症状を軽減させることができる可能性があります。それ以上蚊に刺されないように注意してください。それは、この疾患にかかっている場合、あなたを蚊が刺すことによって、他の人に疾患が拡大する可能性があるからです。

さらに旅行情報をお求めの場合には、「目的地別情報」のセクションから旅行を計画している国を選んでください。

臨床医に対する助言

現在地球全体でチクングニア熱の活動性がみられていることを臨床医は認識しておいてください。チクングニア熱は、発熱、悪寒、全身の筋肉痛などのマラリア、デング熱などと同様の症状で発症する可能性があります。しかし、急性期が過ぎた後にもチクングニア熱の患者は関節痛や関節炎が長引く可能性があり、このため、医療従事者はリューマチ性疾患の可能性を考え、検査を始める可能性があります。このような症状や調光は数ヶ月間に渡り持続する可能性があります。

さらに情報が必要であれば、CDCの「海外旅行のための健康情報2010」の「チクングニア熱」のセクションをご参照ください。

さらに情報が必要な場合には

チクングニア熱の潜伏期間(感染が生じてから病気になる期間)は通常3~7日ですが、可能性としては2~12日までになります。チクングニア熱は通常数日から2週間持続します。しかし、中には倦怠感が数週間持続する患者もみられます。ほとんどの患者は、強い関節痛と関節炎症状を訴え、それが数週から数ヶ月に渡って持続します。症状はデング熱と似ていますが、デング熱の一部でみられる出血熱やショックは、チクングニア熱ではみられません。通常デング熱の患者は自力で改善し、この疾患で亡くなることはほとんどありません。

医療ケアはチクングニア熱による症状に対する治療に対するものです。安静にし、水分を補給し、基礎疾患のため禁忌でなければイブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン(パラセタモール)といった軽めの鎮痛薬を使用することによって、発熱や疼痛などの症状を軽減することができます。入院しなければならないほど状態が悪くなる人はあまりいません。チクングニア熱になった人は、このウイルスがそれ以上伝播しないように、蚊に刺されることがないように注意しなければなりません。

他の蚊によって起こる疾患

チクングニア熱がみられる地域の多くで、蚊に刺されることによって、デング熱、マラリア、日本脳炎、黄熱病などの病気がみられます。もし、熱帯地域や亜熱帯地域を旅行するようならば、蚊に刺されないような手段を講じなければなりません。

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