ナイジェリアで鉱山に関連する大規模な鉛中毒が発生

WHO(GAR) 2010年7月08日

ナイジェリアのZamfara州で、小児鉛中毒の大規模なアウトブレイクが、少なくとも2010年3月以来起きており、金の抽出に際して鉛の多い鉱石を使用することに関係していると考えられています。

3月から4月の間、Zamfara州保健省は、国境なき医師団から地方行政地域(LGA)のBukkuyumおよびAnkaの2つの村で、小児死亡と疾患が次第に増加しているとの報告を受けました。ナイジェリア国家保健省の求めによって、米国疾病管理センターがこのアウトブレイクの調査を助けるためにチームを派遣しました。同じ時期に、ブラックスミス研究所がTerraGraphics Environmental Engineering社からのチームを環境調査のために派遣しました。このチーム、国家および州当局、国境なき医師団およびWHOのナイジェリア事務局が共同作業を行い、この調査によってDaretaおよびYargalma村で100人を超える重症鉛中毒の小児を確認しました。小児の平均鉛血中濃度は119μg/dL(10μg/dLの濃度でも幼若小児には神経学的発達に障害が生じるレベル。)で、それに加えて、土壌の鉛濃度はこの村の中および周囲の住居地域で100,000ppmを超えていることが判明しました(アメリカ合衆国およびフランスで採用されている住居地域の上限は400ppmです。)。

図.ナイジェリアの地図

WHOの対応

ナイジェリア当局は、WHOにこのアウトブレイクの封じ込めを行い、将来同じようなアウトブレイクが起きることを防ぐために、技術上と財政上の援助を行うことを求めました。WHOは3人の疫学研究者、臨床中毒学者、小児科医、環境衛生専門家、検査専門家からなるチームを派遣しました。このチームは、国家保健省からのスタッフとともに作業し、さらに5カ所の村(Tungar-dadj, Abare, Duza, Sunke (Anka LGA), Tungar-guru(Bukuyum LGA))から、同じ原因による高レベルの鉛環境汚染が見られることを確認しました。AbareおよびTungar-guru村の5歳未満の56名の小児から無作為に検体を採取したところ、90%を超える小児が45μg/dL以上の血中鉛濃度(このレベルではキレート治療が推奨されます。)を示し、70%を超える小児が70μg/dL以上の血中鉛濃度(このレベルでは緊急治療が必要です。)を示していました。これらの村では幼若小児の痙攣や死亡が高率に生じており、これが鉛中毒によるものである可能性が高いことが分かりました。国家保健省の病院登録簿のデータによると、鉛中毒が問題となる村はさらに多いと疑われています。

最新の状況

国境なき医師団は、現在BukkuyumおよびAnkaの総合病院に特別に作られた設備で、100名近くの小児に現在キレート治療を行っています。WHOは、国境なき医師団、および多数の各国臨床中毒学者と共同し、治療プロトコールの開発に取り組んでいます。WHOのチームはGusauで血中鉛濃度を測定するための検査施設を設営する援助を行っており、また鉛中毒に対するサーベイランスおよび管理についてのトレーニングを行っています。

鉛中毒による小児死亡と永続性神経障害がこれ以上生じないようにするため、これらの村、特に家庭から鉛汚染を除去することが重要です。それに加え、中毒を起こした小児を確認し、必要なキレート治療を行うことが重要です。しかし、キレート治療が奏功するためには、小児が鉛に暴露されないようにしなければなりません。これは、治療が終わった後も、環境が清浄化されるまで小児が家庭に戻れないことを意味します。ブラックスミス研究所とTerraGraphics社はZamfara州当局とDaretaおよびYargalma村から汚染物質を取り除く作業をしています。おそらく、これ以外の5つの村からも汚染を取り除き、村の小児すべてに対して(中毒を起こした大人、特に妊婦に対しても)鉛中毒患者を同定し治療するためには、さらに多くの財源が必要です。

WHOは国連と共同しつつ、この前例のない環境上の危機に対して財源を確保しています。