ギリシャでウエストナイルウイルス感染症が発生

情報源 HPA (Health Protection Agency:イギリス) 2010年8月19日

2010年8月新たにギリシャでウェストナイルウイルス(WNV)感染症のアウトブレイクが発生しました。

ギリシャの保健当局はギリシャ本土でのWNVのアウトブレイクを確認しました。2010年8月10日の時点で、中央マケドニア(Central Macedonia)地方(ペリフェラス)で20例が確定診断され、2名が死亡、1例は地方都のテッサロニキ市(Thessaloniki)での症例でした。ギリシャで人のWNV症例が報告されたのは、初めてのことです。ポルトガル、リスボン北部の農村地帯でも一人の疑い症例が報告されています。

ウェストナイルウイルス(WNV)感染症

潜伏期間は通常3~15日です。WNVに感染した症例のほとんど(80%)は全く症状がみられず、20%に、軽いinfluenza症状(発熱、頭痛、筋肉痛)、時にリンパ節の腫脹と胸部・心窩部・背部の発疹がみられます。しかし、1%未満あるいはおよそ150人に1人は疾患が重症化し、脳炎、髄膜炎または髄膜脳炎をきたします。このような患者は頭痛、発熱、項部硬直、目の痛み、失見当識、全身の脱力感、痙攣、昏睡などの症状をきたすことがあります。体のしびれや麻痺も生じる可能性があります。50歳以上の人でWNVが重症化する可能性が高くなります。イギリスやウェールズでは現在までWNVの輸入症例はほとんど報告されていません。

診断

WNV感染症は、特に最近南ヨーロッパや北アメリカに旅行しており、別表に記す神経症候群をきたしている患者に対して、あるいはその他の合致する症状をきたしている患者に対して、鑑別診断として考慮さなければなりません。

採取すべき検体

  1. 1.ペア血清、もしくはペアとなる全血検体(症状出現後0~日の急性期検体、及び症状出現後14日~21日の回復期検体)
    症状出現後8日までに、ほとんどの症例で、WNVに対するIgM抗体が確認されるようになります。ほとんどの症例で、病後2カ月までIgM抗体が検出されます。中には感染後12カ月以上にわたって検出される場合もあります。感染後3週間ごろにはWNVに対するIgG抗体が検出されるようになります。
  2. 2.脳脊髄液、理想的には急性期(症状出現後8日以内)
    感染後、初期の数日間に、WNVに対するIgM抗体が検出できるようになります。また、ウイルスは症状出現後8日以内の急性期の脊髄液から、分離、あるいはRT-PCRによって同定できる可能性があります。疾患発症後期の脳脊髄液検体も診断に有用であることがあります。

日本での連絡先国立感染症研究所ウイルス第一部第2室 03-5285-1111(代表))
http://www.nih.go.jp/vir1/NVL/WNVhomepage/WN.html

表、ウエストウイルス(MNV)の神経症候群