アンゴラおよびコンゴ民主共和国でのポリオの流行

WHO(GAR) 2010年9月8日

アンゴラでは、2007年4月に始まったアウトブレイクが、今年になり、同国内で以前にはポリオがみられなかった地域(Bie,Bengo,Huambo,Lunda,Norte,Lunda Sul,Uige州)へ拡大しています。また、近接するコンゴ民主共和国でも、アンゴラ国境にあるKasai Occidental州でのポリオの再興感染が起きています。このアウトブレイクは、12ヶ月以上の期間続いてきたことから、再興感染として分類されました。

コンゴ民主共和国では、今年に入りアンゴラから輸入されたウイルスに加えて、この国の東部にあるKatanga州在住の、2010年7月20日に麻痺が生じた症例において、アンゴラから以前に輸入されたウイルスと、遺伝学上関連性のあるウイルスが検出されました。これは、2008年にコンゴ民主共和国東部で検出されたものでした。2009年には、同一のウイルスによる症例が、ブルンジにおいて検出されていました。コンゴ民主共和国はポリオ根絶諮問委員会(ACPE)によって「再興感染の疑いがある」とこれまで考えられていましたが、この症例によって、「再興感染が確認された」と変更されました。

ナイジェリアにおいて最近達成されたポリオ根絶計画の進展状況(2010年は2009年同時期に比して症例数の99%の減少があり)、西アフリカ(2010年5月1日以来新規症例なし)、およびアフリカの角(12ヶ月以上症例なし)と比較して、現在は中央アフリカ地域がアフリカでのポリオ根絶計画にとって、もっとも障害になると考えられています。現在、アンゴラのアウトブレイクは、アフリカで地理的にアウトブレイクの拡大がみられている唯一の地域です。この状況は、2010年末までに再興野生型ポリオウイルス伝播をすべて抑止するという、新規国際ポリオ根絶計画(GPEI)2010年-2012年戦略プランの達成を困難にするリスクをはらんでいます。

現在までのところ、とられている制御手段が限られていること、また、歴史的にこの両国の間で国境を越えてポリオが拡大していることがあることから、アンゴラからコンゴ民主共和国へと国際間の野生型ポリオウイルスの拡大のリスクが増加しています。輸入ポリオウイルスの伝播を抑止するには、2010年、この両国でとられたアウトブレイクへの対応は不十分でした。追加予防接種計画(SIA)を独立にモニターした結果によると、最も重要な地域であるアンゴラのLuanda,Lunda Norte,Lunda Sul州で、25%までの小児が、常にSIAの際に接種を受けていませんでした。コンゴ民主共和国東部では、2009年11月以来、ポリオ流行に対する対応はとられていません。このアウトブレイクによってアンゴラおよびコンゴ民主共和国中で、可能な限り多くの小児に対して、緊急に経口ポリオワクチンを接種する必要があります。また、アンゴラおよびコンゴ民主共和国でサーベイランスを強化する必要があります。国内でのサーベイランスに程度の差があるため、ポリオウイルスⅠ型がより広範に流行していることが検出できていない可能性も否定できません。アンゴラ国内でポリオウイルスⅠ型が広い範囲で流行しつつあること、またコンゴ民主共和国で拡大が確認されていることから、国際保健機関(WHO)はさらに両国間で流行が拡大するリスクがあると考えています。コンゴ民主共和国東部でポリオウイルスⅠ型の流行が検出されないにしても続いているとした場合、また過去に国境を予定拡大した事実があるということから、WHOはこの二国間でさらに感染が拡大するリスクが高いと考えています。

県および地域レベルで政治的、行政的なリーダーシップを強く発揮し、緊急に追加予防接種での接種率を上昇させること、急性弛緩性麻痺に対する国内でのサーベイランスのレベル差をなくすことが求められています。アンゴラでは、国家予防接種日が9月に計画されており、さらなる対応が検討されています。コンゴ民主共和国では、追加予防接種がこの新規のポリオ輸入症例に対応して行われており、コンゴ民主共和国東部で、検出されていなかった持続性感染が確認されるきっかけとなった新しい症例が確認されたことに対応して、サーベイランスの強化プランが策定されています。

どのような場合にも、ポリオウイルスが輸入されたことを迅速に検出するため、またそれに対する迅速な対応を容易にするため、中央アフリカおよびアフリカの角において、急性弛緩性麻痺のサーベイランスを強化することが重要です。また、ウイルスが輸入された場合に、その影響を最小にするために、集団免疫のレベルを高める必要があります。WHOの「国際旅行と健康(International Travel and Health)」に概説されている推奨事項に沿って、アンゴラおよびコンゴ民主共和国への旅行者、および両国からの旅行者には、ワクチンにより、完全な防御処置が施される必要があります。

さらに情報が必要な場合には以下を参照ください。
国際ポリオ根絶計画