中央アジアとロシア連邦北カフカス地域のポリオ流行について

WHO(GAR) 2010年11月15日

2010年11月13日中央アジアおよびロシア連邦北カフカス地域で現在みられているポリオのアウトブレイクについては、さらに国際的に拡大するリスクが高い状態が続いていると考えられます。
中央アジアでは、2010年8月12日にカザフスタンで麻痺が生じた小児から分離されたポリオウイルスの遺伝子配列から、このウイルスは、タジキスタンのアウトブレイクを引き起こし、その後、ロシア連邦、トルクメニスタン、そしておそらくウズベキスタンでのアウトブレイクを引き起こした、流行中のウイルスであると確認されました。ロシア連邦では、ダゲスタン共和国(the Republic of Dagestan)で、9月25日に発症したポリオの追加症例が検出され、ロシア連邦北カフカス地域でポリオの流行が進行していると確認されています。

中央アジアでのアウトブレイクの震源となったタジキスタン(11月3日の時点で458のWPV1(野生型ポリオ1型)症例)では、5回の経口ポリオウイルスワクチン(OPV)の大規模接種キャンペーンの後、2010年7月4日以来、新たなポリオ症例は報告されていません。最終接種に当たる6回目が11月8~12日に計画されています。 トルクメニスタン(3例のWPV1症例が発生)では、2010年6月28日以来、新たなポリオ症例は報告されておらず、4回の大規模OPVワクチンキャンペーンが終了しました。 2010年8月12日にカザフスタンでは、南部カザフスタン州(SKO)のSaryagachで、唯一の症例である7歳の少年の麻痺が報告されました。締めくくりとなる2回目の大規模なOPV一斉接種が11月の1週目に行われる予定です。

ロシア連邦の14番目の症例(9月25日に麻痺を起こした小児)によって、ロシア連邦北カフカス地域の症例総数は、ダゲスタンとチェチェン(Dagestan, Chechnya)からの6例(それぞれ3例)となりました。 タジキスタンからの2つの別の輸入症例に引き続いて検出された、ダゲスタン(Dagestan)の2010年7月15日の発端症例、チェチェンの2010年8月4日の発端症例以降流行が続くウイルスの遺伝子の配列は、この14番目の症例のウイルスのものと一致しています。 ロシアの他の8症例は、それぞれが輸入例として感染したもので、最後の症例は2010年7月2日に生じました。 これらの症例のいずれも、OPVによる地域でのキャッチアップ予防接種後、現在進行している感染には関連なく生じました。 ロシア連邦北カフカス地域において、流行が継続していることに対応して、ロシア連邦は、流行地域で11月1日に大規模OPVワクチンの初回接種を開始しました、2番目の接種が11月の下旬に計画されています。 この二回の接種は6カ月~15歳までのすべての小児を対象としています。
ウズベキスタンでは中央アジアの現在のポリオアウトブレイクの間、ポリオ症例が確認されていませんが、急性弛緩性麻痺(AFP)症例からの糞便サンプルが、現在のところWHO公認の実験室で検査されていないため、国でポリオが流行しているものの、感染伝播に気づかれていない可能性を除外することはできません。 トルクメニスタン、カザフスタン、およびタジキスタンの国境地域それぞれに、ポリオ症例の報告がみられています。少なくとも1人ウズベキスタン国籍者が、ロシアへの到着後すぐに麻痺症状を呈しており、ポリオ感染の潜伏期を考えた場合には、ウズベキスタン出国前に感染に罹患していた可能性があることが示唆されます。ウズベキスタンはポリオウイルスの輸入とポリオアウトブレイクのリスクを考慮して、4回の全国的なOPVキャンペーンを行いました。(最終回は10月25~31日にかけて行われました。)
中央アジアあるいはロシア連邦北カフカス地域からポリオウイルスが輸入されるリスクがある国は、AFP症例の監視強化を続け、すべての検体の処理をWHO公認のポリオウイルス実験室で検査し、ポリオに対する定期予防接種の接種率を高レベルに維持し、一般住民にワクチンを受けていない人がないようにするため、必要に応じて、補完的なOPVワクチン接種活動を行うべきです。

「WHO:国際旅行と健康」のガイドラインに示された推薦事項に従って、ポリオ感染がある国に行く旅行者、その国からの旅行者は、ワクチン接種による完全な予防を受けるべきです。 また、過去に3回ないしそれ以上の回数、OPVによるワクチン接種を受けた旅行者に対しても、出発前にさらに1回ポリオワクチンの接種を受けるように勧めるべきです。 ポリオ予防接種を受けておらず、ポリオ汚染地域に旅行する予定がある人は、ポリオ予防接種を完全に受けるべきです。 ポリオ感染のある領域からの旅行者の場合、出発前に、ポリオ予防接種が完全に終わっていなければなりません。少なくとも、出発前にOPVを1回は受けなければなりません。
WHOヨーロッパ地方事務局は、中央アジアとロシア連邦北カフカス地域で進行中のポリオアウトブレイクで引き起こされた公衆衛生上の危機を、IHRの下で報告義務のあるものとして、すべての加盟国に警告しました。
WHOは引き続きヨーロッパの加盟国とそのパートナーに対して、担当大臣、主な医療関係者、パートナーへのメールの形で、また、ヨーロッパ地域ウェブサイトへの投稿の形で、更新情報を提供します。

また、疫学情報、対応に関する情報、およびリスクアセスメントなどをカバーできる現況報告として、情報提供を行っていきます。