熱帯、亜熱帯地域でのデング熱流行 続報

CDC Travelers' Health (Outbreak Notice) 2011年1月18日

流行状況

デング熱はカリブ海、中央アメリカ、そして、南アジア、中央アジアから戻る旅行者の発熱原因として最も一般的な疾患です[1]。デング熱は、オセアニア、アジア、カリブ海、アメリカ熱帯・亜熱帯地域の国のほとんど、そして、時にアフリカで報告がされています。この疾患は、4種類の類縁ウイルス(DENV-1, -2, -3, -4)の感染により発症し、感染した蚊に刺されることで感染し拡大します。
デング熱の伝播は農村地帯、都市部ともに起こりますが、デング熱感染は都市環境で特に高頻度に報告されています。

世界のデング熱に関する更新情報は、CDCのウェブサイト「DengueMap」を参照してください。

アフリカ

デング熱感染はアフリカ中でみられていますが、報告の頻度は高くありません。また、デング熱がこれまで公的には認められていなかった地域を含む、アフリカ諸国からの帰国者で診断されています。
以下にアフリカおよびその周辺地域での、最近のデング熱の活動状況を示します。

マヨット

2010年3月以来、マヨットではデング熱確定症例が75例、疑い症例が31例報告されています。状況は落ち着いているものの、流行は続いています。今後雨期に入ることから、流行が続くことが予想されます。

レユニオン

2010年12月1日の時点で、レユニオンではデング熱確定症例が17例、疑い症例が37例特定されました。確定症例の15例、疑い症例の10例が輸入例でした。

カーボベルデ共和国

2009年には、21,000例以上のデング熱疑い患者が生じ、6例の死亡例が報告されました。国際連合人道問題調整事務所によると、約60例がセネガル近隣部で発生したとのことです。

ヨーロッパ

2010年9月、フランス保健省が、フランス本土で初めて、地域感染によってデング熱が2例生じたと報告しました。両方ともニースでの症例で、患者は回復しました。フランス当局は、感染の拡大を予防するために、ベクターである蚊の制御とサーベイランスを強化しています。

南太平洋

デング熱は南太平洋で地域流行しており、周期的に広範な流行も繰り返されています。デング流行が起こるとされている典型的な時期以外であっても、旅行者はデング熱に罹患するリスクがあります。マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなどで、今年デング熱の活動性が高いと報告されています。旅行によって定期的にウイルスが持ち込まれる、オーストラリアのクイーンズランド北部でも、今年、デング熱の活動性があることが報告されています。

アメリカ大陸とカリブ海

中央、南アメリカおよびカリブ海のほとんどの国で、デング熱の活動性が報告されています。2010年9月8日の時点で、アメリカ全体で1,432,410例のデング熱症例が報告されています。報告例の中の30,820例が重症デング熱と報告されています。この地域では毎年デング熱の活動性が報告されていますが、中央アメリカやカリブ海諸国の一部では、2010年、異常に大きい規模でデング熱が流行しました。

流行規模が大きい中央アメリカやカリブ海諸国は、ブラジル、コロンビア、コスタリカと、ドミニカ共和国、エルサルバドル、仏領ギアナ、グアドループ、グアテマラ、ホンジュラス、マルティニーク、メキシコ、ニカラグア、プエルトリコ、ベネズエラです。

また、アメリカ合衆国、フロリダ州キーウェストで、デング熱症例が少数報告されています。通常、この地域でデング熱が報告されることはありません。これについてさらに情報が必要な場合には、CDCウェブサイト、フロリダ州キーウェストにおける地域性デング熱流行について、を参照ください。

中東

中東では、2010年を通してデング熱の活動性が報告されており、流行地には旅行客によく知られているサウジアラビアのジッダなどが含まれています。

旅行者に対する推奨事項

旅行者は蚊に刺されないように注意することで、デング熱にかかるリスクを減らすことができます。デング熱を媒介する蚊は、通常夕暮れ時か朝方に人を刺します。しかし、日中でも特に室内や、日陰になっている場所、曇りの時はいつでも刺される可能性があります。
旅行者は下の手順を踏んで、蚊から刺されないようにしてください。

  • 可能な限り、しっかりと網戸がとりつけられているか、エアコンが備わった、また、蚊の駆除を行っている、ホテルやリゾートに滞在するようにしてください。
  • 屋外にでかける場合や十分な網戸がホテルに設置されていない場合には、虫除け剤を皮膚が露出している部分につけてください。日焼け止めが必要な場合には、虫除け剤を使用する前につけてください。

以下の有効成分のいずれかが含まれている虫除け剤を使用してください。

  • DEET、ピカリジン(picaridin : KBR 3023)、レモンユーカリの木の油(PMD)、IR3535虫除け剤を使用する場合には、必ず添付文書にかかれた使用法を守ってください。
  • 通常、どの成分であっても、虫除け剤の蚊に対する防御効果の持続は、有効成分の濃度に比例して長くなります。しかし、50%を超えた場合、持続時間の延長はあまりみられなくなります。有効成分濃度が10%未満の場合、1から2時間以下といった短い防御効果しかえられなくなるかもしれません。
  • アメリカ小児科学会は2ヶ月以上の小児に対して、DEET濃度が30%までの虫除け剤の使用を認可しています。
  • 2ヶ月未満の乳児の場合には裾が伸び縮みして、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳で覆ったベビーカーを使用してください。

乳児、小児に対する虫除け剤の使用については、「乳児小児と安全に旅行するには」のセクション、CDCの「昆虫虫除け剤に関するFAQ」をご参照ください。

注:日本での参考資料

  1. (1)2005年8月24日付け厚生労働省医薬食品局の発表
    • 小児(12歳未満)に使用させる場合には、保護者等の指導監督の下で、以下の回数を目安に使用すること。なお、顔には使用しないこと。
    • 6か月未満の乳児には使用しないこと。
    • 6か月以上2歳未満は、1日1回
    • 2歳以上12歳未満は、1日1~3回
  2. (2)国立感染症研究所安全な忌避剤(虫除け)の使用方法[PDF形式:511KB]
    • 昆虫虫除け剤についてさらに情報が必要な場合には、ウェブページの「蚊やダニから自分を守る」をご参照ください。
    • 屋外に出る際にはゆったりした、すその長いシャツやズボンを身につけてください。
    • さらに予防効果を高めようとするなら、ペルメトリン(permethrin)、もしくはEPAが承認した薬剤を含む虫除け剤を、衣服にも噴霧してもよいです。(ペルメトリンは皮膚にはつけないこと)

症状と治療

デング熱の症状には以下のものがあります。

  • 発熱
  • 高度の頭痛
  • 眼窩痛
  • 関節痛、筋肉痛
  • 発疹
  • 嘔気、嘔吐
  • 出血症状

通常デング熱の症状は軽いのですが、重症なデング出血熱(DHF)を起こすことがあります。この場合、治療しなければ致死的です。以前にデング熱にかかったことがある人のほうが、デング出血熱になるリスクは高くなります。デング熱を予防するワクチンはありません。また、デング熱による病状を治療する、特異的な薬剤はありません。デング熱になった人に対しては、アセトアミノフェンなどの解熱剤を投与することもできますし、経口補水液や輸液製剤などが必要となることもあるでしょう。また、重症な場合には血圧を維持するための治療を必要とする場合もあります。アスピリン(アセチルサリチル酸)やアスピリンを含有している薬剤、その他の非ステロイド系消炎剤(イブプロフェンなど)は出血のリスクが高くなることを考慮し、投与してはいけません。重症デング熱(例えば、ショック切迫状態に合致する所見や症状がある場合)を早期に発見し、治療することにより、デング熱による死亡例を減らすことができます。

もし、あなたが外国に旅行し、発熱をともなう病状がみられた場合には、治療を受けなければなりません。医師やその他の医療従事者に、最近旅行したことを必ず告げてください。

医療従事者向けの情報

デング熱以外の疾患でもデング熱に似た症状を呈するため、デング熱であると正しく診断することが重要です。医療従事者は、症状の出現した時からさかのぼって二週間前まで、熱帯地域に旅行したことがある発熱患者に対しては、デング熱、マラリア、(南アジアやインド洋沿岸の国の場合には)チクングニア熱を鑑別診断としてあげなければなりません。

さらに情報が必要な場合には

デング熱および蚊からの防御方法については以下のリンクをご参照ください。

旅行者のデング熱についての情報がさらに必要な場合は、以下のホームページをご参照ください。