アメリカ地域でのデング熱 更新情報

汎米保健機構(PAHO) 2011年03月22日

この更新情報で提示されているのは、加盟各国の保健省によってPAHO/WHOに対する送られた報告、および、国保健省のウェブサイトの更新情報によるものです。
2011年、流行9週までに、全部で206,097例のデング熱症例が、アメリカ地域で報告されました。この中には、重症デング熱症例2744例、223の死亡例が含まれています。次の表は、最新情報を提供できた加盟各国の状況を、亜地域ごとに分けて記載したものです。

図.デング熱症例数と重症デング熱症例数の表

アンデス地域

ボリビア

今年1月に、Beni県で最初にアウトブレイクがおこりましたが、それから雨期に共通の環境的問題によって、他の地域へと拡大してきました。

2011年流行第9週の時点で、デング熱の感染の影響が最も大きい県は、Beni、Santa Cruz、 La Paz、Cochabamba、 Pando、Tarijaで、この地域では住民人口100,000に対して41.8から228.6という高い累積症例発生率が記録されています。これまでに6,850症例のデング熱症例と、17の死亡例が記録されています。2010年以来、血清型1、2、3がボリビアで流行しています。

ペルー

この国の北部地域にあるLoreto県とその首都であるIquitosでは、2010年51週にデング熱のアウトブレイクが始まり、デング熱血清型1型、2型、4型が同時に流行していることが記録されました。このアウトブレイクは、この地域で起こった最も大規模な流行であったと考えられます。
流行9週の段階で、Loretoでは、全部で12の死亡例が報告されました。これに加えて、ペルーでは18,776症例の中の74%がこの県に集中していました。

流行2週以来、Loretoでは疑い症例数および入院症例数の減少が続いています。流行9週の時点で、累積症例数は人口100,000人当たり19.6です。もっとも症例の発生率が高い都市は、Iquitos (46.0)、 Belén (39.6)、San Juan Bautista、Punchada (23.4)です。最後に報告されたデング熱死亡例は、2月5日の症例だったことに、特に言及しておきます。
地方当局は、Iquitos市内で水を溜める可能性がある容器の大規模な回収、教育施設の燻蒸処置といった、いくつかの重要な対応策をとってきました。このアウトブレイクを制御するには、地方行政府の積極的な関与が重要でした。

コロンビア

コロンビアでは、2010年後半期に記録された大規模なアウトブレイクの後、昨年のこの時期に比較して症例数は減っています。しかし、流行報告によれば、コロンビアは現在もリスク地域であるとされています。
流行8週までに、6,020例のデング熱症例が報告されており、そのうちの310例が重症デング熱でした。これ加えて、300例のデング熱死亡例が報告されており、そのうち18例が確定症例でした。このことから、重症デング熱症例の5.8%が致死的でした。コロンビア保健省は、デング熱対応指針(IMS-Dengue)にある、すべての項目について実施を強化しており、特に患者管理に重点を置いています。

南アメリカ南部

アルゼンチン

2011年流行10週の時点で、Buenos Aires(3)、the city of Buenos Aires(3)、 Mendoza (1)、Santa Fe(46)、 Salta (2)と 、全国で55のデング熱症例が報告されており、Santa-Fe県のRomangで血清型1のデング熱のアウトブレイクが確認されています。
対応策として実施されたものに、新しい症例の積極的な調査、道路の消毒、水を溜める可能性がある容器の廃棄、幼虫の調査および生育環境の処置などがあります。これに加えて、アウトブレイクの焦点となった地域の隔離作業、および、デング熱が報告された地域に対する燻蒸作業が行われてきました。

ブラジル

2011年流行8週の時点で、ブラジルでは全部で155,618の症例が報告されました。これに加えて、1,588症例の重症デング熱症例と、163の死亡例が記録され、それぞれアメリカ地域全症例の67%および73%占めていました。
報告された症例の52%が6つの州、Acre (11%)、Amazonas(13%)、 São Paulo (2%)、 Paraná (10%)、Minas Gerais(9%)、Goiás ぱらぐ (7%)で報告されました。今年は、例年ごく少数しか報告されていないAmazonas州でのデング熱の増加が観察されました。

パラグアイ

2011年流行9週の間に、実験室診断および疫学的調査によって確定した症例は1,155例でした。これは、昨年の同時期以来最も低い発生率でした。全部で112の確定症例が入院し、このうち10%が重症デング熱の徴候を示しました。今年、全11例の死亡例が確認されました。
感染の伝播が続いている地域で確定した症例は、Alto Paraná、 Concepción、 Amambay県、および首都圏に分布しています。現在、デング熱1型と2型が同時に流行していますが、2型が優勢です。

南部地域の他の国

チリおよびウルグアイの2か国では、引き続きデング熱ウイルスが地域内で流行しているという報告が現在のところありません。

考察すべきこと

デング熱はこの20年間にわたってアメリカ地域で流行しています。これまでのところ、デング熱発生は、流行のピークが次第に高く、ほぼ3から5年ごとに周期的に高くなる傾向がありました。このような再燃傾向は、環境的、社会経済的、政治的、社会的要素といったマクロ的な要素に起因していることは言うまでもなく、この間に、感染に対して感受性がある地域人口が次第に多くなっていること、異なる血清型のウイルスの流行、流行株の毒性の上昇、この地域の新しい場所へとベクターが播種されていること、等によると考えられます。
IMS-Dengue(Integrated Management Strategy)は、デング熱の有病率、死亡率を減少させること、また、デング熱のアウトブレイクと流行による社会および経済的な負荷を減少させることを目的とした、デング熱管理に関するモデルです。IMS-Dengueにより、その他の国々によって開発された同様のプロセス間との比較、亜地域間での比較ができるようになるという、新たな価値が生まれます。
自らIMS-Dengueを実行している18のアメリカ地域の国々では、技術的な分野での情報交換、また、各省および各都市の決定権機関の間での情報交換が常になされてきました。これによって異なった地域で、それぞれの症例における経験や教訓が、一般化され共有されることが可能となり、これらの地域での対応強化に関して、さらなる進歩がもたらされることになりました。

図.アメリカ各国でのデング熱の発生率および流行している型

図.デング熱の多い地域