野生型ポリオウイルスの発生-コートジボワール

2011年4月21日WHO(GAR)

コートジボワールでは野生型ポリオウイルス3型(WPV3)のアウトブレイクが生じています。今年になって、それぞれ麻痺が1月27日、2月24日、および2月27日に始まった新しいWPV3症例が3例報告されました。

分離されたウイルスの遺伝子配列は、2008年中頃に最後に北ナイジェリアで検出されたWPV3へのリンクがあることを示しています。 これは、2000年以来コートジボワールで記録された最初のWPV3発生例です。2008年から2009年にかけて、コートジボワールは西アフリカで感染がみられた野生型ポリオウイルス1型(WPV1)のアウトブレイクによる感染が生じていました(最近、この流行は止まりました)。

現在、コートジボワール内で、また、コートジボワールから外へとWPV3が更に拡大する高いリスクがあります。2000年以来、WPV3が西アフリカのこの地域で記録されたのは初めてです。WPV3の伝播は、北ナイジェリアおよびニジェール、また、2008年以降はベナンとマリのと一部に限って起きていました。現在コートジボワールの治安状況が悪いため、アウトブレイクへの対応は十分なものにならないかも知れません。コートジボワールと他の西アフリカ地域の間では、国内でのサーベイランスのレベルに差があるため(コートジボワールが低レベルであるため)、現時点で気付かれずにいる流行があることは除外できません。

このように、WPV3症例が検出されたことは、レベルの低いサーベイランス状況によって、全世界でのポリオ根絶計画が危機に瀕することを、明らかにしたものと考えられます。 世界的には、WPV3の伝播は歴史上最も低いレベルにあり、2011年に世界で報告された症例は9例だけです。WPV3の伝播の連鎖が起きないように、ただちにそのリンクを断つことが、全世界でのポリオ根絶計画のための喫緊の課題です。

最優先とすべきことは、西アフリカ全体でWPV1に対する高い集団免疫を維持する一方で、WPV3のアウトブレイクを緊急に止めることです。 コートジボワールを除く(詳細については次の段落)西アフリカの15か国で、2回の補充的なポリオウイルス接種(SIAs)が、二価経口ポリオワクチン(bOPV)と三価経口ポリオワクチン (tOPV)を用いて、2011年3月25日に実行され、また、2011年4月29日に実行される予定です。 これに加えて、現在、この二回のSIAs以外に、6か国でアウトブレイクへの対応が計画されています。 このようなより強い対応によって、今年は、第4四半期に予定されている計画SIAsが前倒しで行われるかもしれません。

コートジボワールでは、現在の治安状況と政治状況のために、3月終わりのSIAを行うことができませんでした。 感染の起こった州で、感染に対応した接種が、bOPVを使用して2011年4月下旬に計画されており、これに引き続き、状況が許される限り早く、2回の国家予防接種デー(NIDs)が開催される予定です。この緊急時対応のために、技術的問題の解決、ワクチンの供給、接種計画が実際に可能となるように、計画が策定されつつあります。 コートジボワールにおいて、他の国連組織と非政府組織(NGO)が協同で、特に避難民を対象に、OPVが確実に計画予防接種として実施されるように作業しています。 現在の伝播状況についてモニターが行われ、疫学調査で必要とされた場合には、徹底的な対応がとられるでしょう。

この地域でのサーベイランスレベルのギャップについて、より明確にするため、現在調査が行われています。これは、移住民、難民、十分な管理を受けていない住民も対象としています。すべての集団や地域を対象に(特に高リスクの集団を対象に )、確実に質の高いサーベイランスを受けられるように、国家内でサーベイランス強化が実行される予定です。

WHOの「海外旅行と健康」に概説されている推奨事項に従い、コートジボワール、および他のポリオ感染が生じている西アフリカ諸国へ赴く旅行者、その地域からの旅行者は、予防接種を受け、完全に防御されなければなりません。 過去に3回あるいはそれ以上のOPVの接種を受けた旅行者の場合も、出発の前にもう1回ポリオワクチンの接種を受けるべきです。 この地域への旅行を考慮している免疫のない旅行者については、予防接種をフルコースで受けるべきです。コートジボワール、および、ポリオ感染が生じている他の西アフリカから出発する旅行者は、出発の前に、ポリオの予防接種をフルコースで受けるべきであり、少なくとも出発前に1回の接種を受けるべきです。