狂犬病の流行・インドネシア・バリ島

CDC Travelers' Health, Outbreak Notice 2011年6月20日

2008年12月にインドネシア農業省は、インドネシア・バリ島の犬に狂犬病のアウトブレイクが発生していることを国際獣疫事務局に届出しました。2011年6月現在、バリ島で報告された狂犬病による死者数は100名を超えています。ヒトおよび動物の狂犬病症例は、バリ島南端の観光客の人気スポット近傍とバリ島全体で確認されています。アメリカ疾病予防センターは、バリ島のどこを訪れる渡航者に対しても狂犬病に対する予防措置を取るよう勧告しています。

バリ島内では次のような行為はとても危険であり、狂犬病にかかる可能性があります。

  • 狂犬病に暴露したかどうかわからない動物や、ワクチン接種歴がわからない動物に近づくこと。
  • 農村部に長期に滞在することや、自転車での走行や、キャンプ、ハイキングなど、戸外で活動すること。こういった行動は、動物と接触する危険が高くなります。
  • 動物に触ったり、一緒に遊ぶこと。
  • 帰国する時に持ち帰る目的で、動物の里親になること。

狂犬病とは

狂犬病はヒトと動物にかかり、急速に進行する致死性の疾患です。大抵は、動物に咬まれることにより感染しますが、動物の唾液が目、鼻、口や損傷した皮膚から入り込むことにより感染することもあります。主なヒトの感染源は犬や一定の野生動物で、キツネ、アライグマ、マングースやコウモリの例が知られています。

世界では毎年約50,000人が狂犬病で死亡しており、大部分は小児です。海外渡航する人は、狂犬病にかかる可能性があります。したがって、全ての海外渡航者は狂犬病から身を守る方法について知っている必要があります。以下に海外渡航者が狂犬病から身を守る方法について説明します。

動物に咬まれないために

  • 野生動物であれ、ペットであれ、どんな動物にも触らないことです。外国のペットは狂犬病の予防接種を受けていないことがあります。
  • 国内に持ち帰ることを目的に外国で動物の保護等を行わないでください。その犬や猫が狂犬病にかかっていたとしても、実際に症状を現すのは数日~数週間後になることがあります。
  • 小児をしっかり監督してください。特に、犬、猫や野生動物(サルなど)のまわりでは特別な注意を行ってください。これはとても重要なことです。というのは、小児は非常に動物に咬まれやすく、咬まれたことを親に知らせないことがあり、しかも重症にもなりやすいからです。
  • ペットを連れて海外渡航する場合には、ペットを厳重に管理してください。現地の動物と決して遊ばせないようにしてください。特に、野良の動物との接触にはご注意ください。

動物に咬まれたり引っかかれたりしたら

  • 流水と石鹸で傷をよく洗いましょう。
  • 症状がなくても、大きな傷でなくても、すぐに医療機関を受診してください。狂犬病になることを予防するためにただちにワクチン接種が必要な場合があります。その場合には複数回のワクチン接種が必要です。
  • 咬まれた国によっては適切な治療を受けられない場合があります。その場合にはワクチン接種を受けるために帰国するか、医療水準の高い他の国に向かう準備を行ってください。
  • 帰国後に、旅行中に動物に咬まれたもしくは引っかかれたことを医師に告げてください。

旅行前に、自分が加入した海外旅行損害保険の補償対象に海外で受ける治療と、治療を受けるための緊急輸送費用が含まれているか確認してください。もし、含まれていない場合、これらの特約補償の含まれた保険への加入を検討してください。

医療従事者の方へ

GeoSentinel(感染症に関するトラベルクリニックのネットワーク)のデータは、2008年5月以降、バリ島から帰国した旅行者に対する狂犬病ワクチンの暴露後予防的接種の希望が増加しています。GeoSentinelは、旅行に関連する疾病をサーベイランスする世界的な連絡、データ収集ネットワークです。GeoSentinelは、国際旅行医学会とCDCの協力により運営されています。

旅行前の健康相談において、医療従事者は動物に咬まれないようにすることの大切さを十分に説明するようにしてください。また、インドネシアへの旅行者には緊急時の輸送特約または外国での治療特約への加入を勧めるようにしてください。

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