欧州月間麻しんモニタリング(EMMO)サーベイランスレポート(2011年7月)(抄訳)

ECDC 2011年08月09日

前月号からの主な更新内容

・前回の報告以来、5,000例以上の麻しん症例増加がEUおよびEEA/EFTA加盟国から報告されており、今年の累積症例数は26,000例を超えています。
・2011年に最も累積症例数が多い国は、フランス(14,040)、イタリア(4,000)、スペイン(2,407)、ルーマニア(2,072)、およびドイツ(1,361)です。
・6月以降、新たにスロベニア、イタリア、ルーマニアの3か国で麻しんのアウトブレイクが報告されました。
・ラトビアでの初めての麻しん症例が報告され、ドイツからの帰国者でした。
・現在のところ2011年に麻しん症例が報告されていない国は、監視されている30か国のうちキプロス、ハンガリー、アイスランド、リヒテンシュタインの4か国です。
・世界青年の日(WYD; World Youth Day)やその他の大規模なイベントがヨーロッパで夏季に予定されおり、ヨーロッパで麻しんの伝播が起こるリスクと他国への麻しんの輸出がおこるリスクが増大することが懸念されます。

背景

麻しんは、感染性が高く、死亡することもある疾患ですが、ワクチンを接種することにより安全かつ効果的に感染を阻止することができます。2回の接種を行うことで、ワクチン接種者の98%がこの疾病に対する終生免疫を獲得します。麻しんウイルスはヒトのみに感染するものであるため、全人口の大部分がワクチン接種を行うことができれば、この疾患を根絶することが可能であろうと考えられています。EUおよびEEA/EFTA加盟国を含む、ヨーロッパ領域における世界保健機構加盟国は、2015年までに麻しんを根絶しようとしています。麻しんを根絶するには、麻しん抗原を含むワクチン(MCV)の2回接種によるワクチン接種率を95%以上に維持することが必要です。

ECDCは、EUおよびEEA/EFTA加盟国内におけるの麻しん伝播をモニターしており、疫学的な情報の更新を毎月行っています。欧州月間麻しんモニタリング(EMMO)の報告は、種々の情報源からの情報に基づいています。たとえば、各国政府のウェブサイト、EUVAC.NETデーターベース、欧州早期警告対応システム(EWRS)、メディアからのレポートで信憑性が確認されたもの、および各国政府機関からのパーソナルコミュニケーションといったものです。調査データの対象期間は各国政府ごとに異なっており、EMMOに報告される症例数は、暫定的なデータとして取り扱われる必要があります。

MCV接種率に関するEMMOのデータは、特に断りがなければ、WHOの感染症集中情報システム(CISID)から取得したものです。CISID上のデータは、WHO加盟国による毎年のWHO/UNICEFF合同報告様式による届出に基づいています。各国が異なる方法論に基づきワクチン接種を行い、ワクチン接種率の評価を異なる定義に基づいて行っているため、各国のワクチン接種率を互いに比較することは不可能です。MCVの二回目接種の推奨年齢は、各国でかなり違っており、事態をさらに複雑にしています。EU27カ国中18カ国だけが、生後24カ月齢におけるMCV2回接種率を評価しています。EMMOの目的は、ヨーロッパ域内において疾病防御対策を効果的に行うために、麻しんの感染状況を経時的に更新して公開し、2015年の麻しん根絶という共通の目標を支援することです。

概括

2011年の前半6カ月の間では、21,000例を超える症例が、EUおよびEEA/EFTA加盟国から報告されました(表1)。これらのデータは暫定的なデータであり、データがさらに追加されることにより数の増加が見込まれています。さらに、国によっては、かなり過少報告されていると考えられています。

フランスでは最も多くの患者が発生しており、2011年にヨーロッパ諸国で報告された症例の半数以上を占め、6名の死亡者を出しています。一方、ルーマニア、スイス、スペイン、ベルギー、デンマーク、英国およびイタリアも、2010年と比較すると2011年に症例報告数が大幅に増加しています(表1、図2)。EUにおけるアウトブレイクは、主として加盟国間における伝播によって生じています。

2011年6月6日に、欧州連合理事会[PDF形式:110KB]は、EU域内および加盟招待国において麻しんを感染制御するためには一層努力が必要であり、ワクチン接種活動を活発化し、特に、孤立して集団分布しているウイルス感受性のある個人を標的とする必要があると結論しました。

ECDCは、感染症、特に麻しんに対するワクチン接種を受けることが重要であると考えています。ワクチン接種は、欧州連合内に在住する人であって、音楽会、スポーツイベントや宗教上の集まりのような各種イベントに参加する予定の有る人には特に必要なことです。世界からの350,000人の参加が見込まれている2011年8月にマドリッドで予定されている世界青年の日(WYD; World Youth Day)のような多数の人間が参加するイベントでは、ウイルス感受性のある人が麻しんに暴露される大きなリスクが存在します。感染した参加者が発症前に帰国し、自国にこの疾病を拡散させる可能性があります。

夏休みに先立ち、海外旅行を計画している人に対してワクチン接種の状況を更新する(必要に応じて再接種する)ことを推奨している国もあります。

表1 麻しん症例と死亡例の累積数、罹患率、最終報告日および情報源;EU/EEA加盟国2011年

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図1 疫学調査によって確認された麻しん症例の分布(2011年7月時点)および麻しんワクチンの2回接種率(2009, CISID*); EU/EEA加盟国2011年

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*:接種率(%)は、WHO/UNICEFF合同年次レポートおよびWHO地域事務局報告(2011年6月1日付)に報告された各国公式数値です。

図2 罹患率(症例数/1,000万人/日)の国ごとの分布; EU/EEA加盟国2011年7月

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