世界におけるインフルエンザ流行状況(2)

2011年9月23日WHO(原文〔英語〕へのリンク)

要約

  • 北半球の温帯地域の国々ではインフルエンザの活動性は低いかほとんど認められていません。
  • 地域の国々ではインフルエンザの活動性は低いですがいくつかの流行が、アメリカ(キューバ、ホンジュラス、ボリビア)、西アフリカ(カメルーン)、南アジア(インド、タイ、ベトナム、シンガポール)で報告されています。
  • 南アフリカでの流行は低レベルになりました。オーストラリアでは検査室確定インフルエンザの報告がノーザンテリトリー州を除くクイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、および他の州で減少してきています。オセルタミビル耐性(ザナミビル感受性)のインフルエンザA(H1N1)2009がニューサウスウェールズ州ニューキャッスル地域でクラスター発生しましたが、患者に旅行歴はなく死亡者も出ていません。ニュージーランドでのインフルエンザ様疾患(ILI)は国内流行基準値付近での発生が続いていて、その大部分はインフルエンザBです。

北半球の温帯地域

この地域の国々ではインフルエンザのオフシーズンです。ほとんど全ての国で活動性が低いか流行がありません。

熱帯地域

中南米の熱帯地域;低レベルでの流行が報告されています。第24週から中米とカリブ地域ではRSウイルス(RSV)がその大部分です。キューバでは第29週からインフルエンザA(H3N2)が低レベルで循環しています。ホンジュラスでもインフルエンザA(H3N2)が循環していましたが、8月中旬にピークに達しました。H3N2の循環とともにわずかなA(H1N1)とB型も認められました。ボリビアではインフルエンザA(H1N1)とインフルエンザA(H3N2)が散発的に認められています。以前コロンビアで報告されたインフルエンザ(H1N1とわずかなH3N2)とブラジル(おおよそ同数のH1N1、H3N2とB型)の流行はほとんど終息しました。

サハラ以南アフリカ;西部で流行が続いており、特にカメルーンではインフルエンザBが優勢ですが少数だったインフルエンザA(H1N1)2009が先週から増加してきています。東部アフリカでは3月のピーク以降、インフルエンザB、A(H3N2)、A(H1N1)2009の混在した流行が続いています。ケニアでの流行はこの2~3週間で陽性検体が減少してきており、インフルエンザBとA(H3N2)、A(H1N1)2009が混在しています。

アジアの熱帯地域;インフルエンザの活動は局在しています。インド、バングラディシュ、シンガポール、タイから主にインフルエンザA(H3N2)の中等度の流行が報告されています。インドでの流行はピークに達し低レベルに向かっています。これらの国ではわずかにB型とA(H1N1)2009も報告されています。対照的に、ベトナムでは2011年初めからA(H1N1)2009が優勢に流行を続けており8月中旬にピークに達しました。ラオスではA(H3N2)の流行が優勢ですが低レベルです。カンボジアではA(H1N1)2009とB型陽性の検体数がわずかに増加してきていると報告されています。シンガポールではILIでの受診者は急性呼吸器疾患の1%で低レベルです。8月の検体のうち69%がA(H3N2)で、続いてB型が20%、A(H1N1)が6%でした。

南半球の温帯地域

南米;低レベルでの活動が報告されており、インフルエンザシーズンはピークに達し減少しつつあります。チリではA(H1N1)2009の検出が過去4週間のうちで最も少なく、ILI活動性と呼吸器疾患で救急を受診する患者数も低レベルでした。第35週(8月29日~9月4日)に、A(H1N1)2009で10人が死亡しました。そのうち9人が基礎疾患を持っていました。アルゼンチンでの状況も低レベルの活動性でILIと重症急性呼吸器疾患(SARI)は減少してきています。インフルエンザ陽性の検体数も減少してきておりA(H1N1)2009とA(H3N2)がともに循環しています。パラグアイではILIでの受診率がわずかに増加し(~9%)、SARIでの入院、ICU入院、関連性死亡数は5%以下です。いずれも過去数週間と同じか減少しており、検査検体からインフルエンザウイルスは検出されていません。ウルグアイではSARI入院率とSARI死亡率が減少し続け5%以下になっています。SARIICU入院率は第31週以降減少してきて5%です。

南アフリカ;6月はじめのピーク時から低レベルで発生しています。インフルエンザシーズン中はA(H1N1)2009が優勢でわずかにB型とA(H3N2)が認められました。特に、南アフリカは8月下旬に2回目のピークを迎え、A(H3N2)とB型が認められました。

オーストラリア、ニュージーランド、南太平洋;オーストラリア・ノーザンテリトリー州を除くクイーンズランド州、ニューサウスウェールズ(NSW)州、さらにほとんどの州で検査室診断インフルエンザ報告数は減少し続けています。しかしこれら多くの州からの報告数は2010年のピーク時の報告数より高い値です。オセルタミビル耐性A(H1N1)2009ウイルスによる感染がNSWから2例追加報告されました。この2例は以前報告のあった発生地域へ出かけたことはありませんでした。報告された耐性ウイルスはザナミビルには感受性で、ワクチンによって誘導される抗体が反応しないような抗原変異は起こしていませんでした(ワクチンは有効である)。以上のことから、オーストラリアでのシーズンを示す数は減少してきていますが、耐性ウイルスが広範囲に広がっていることが示唆されます。

B型が優勢なタスマニアとNSWを除いて、大部分の州、地域ではA(H1N1)2009の報告がほとんどですが、B型もともに循環しています。ウエスタンオーストラリア州ではA(H1N1)2009とA(H3N2)、わずかなB型が報告されています。9月2日までに、国立届け出疾患サーベイランスシステム(NNDSS)はシーズンピークであった8月5日の週に1,952人の患者を報告し、累積では19,987人の患者数を報告しています。5月1日から9月1日までに118人のインフルエンザ入院患者(うち13人がICU入院)がビクトリア州、南オーストラリア州、西オーストラリア州、オーストラリア首都特別地域で報告されました。入院患者の56%、ICU入院患者の77%がA(H1N1)2009でした。平均年齢は46.6歳でした。

ニュージーランドにおいてILI症状で受診した人は住民10万人あたり50.7人で、流行基準値付近ですが高レベルには達していません。検出ウイルスはB型が主体です。サモア、フィジー、ソロモン諸島、マーシャル諸島、トンガ、キリバス以外の多くの太平洋諸島では低レベルの活動性が報告されています。