2012年に初めて報告されたインフルエンザH3N2変異型ウイルス感染

2012年4月12日 CDC(原文〔英語〕へのリンク

ユタ州で小児のインフルエンザA(H3N2)変異型ウイルス感染例が報告されました。今年初めての報告です。CDCは、このウイルスが2011年後半に米国で報告された12例のA(H3N2)変異型ウイルスに非常に類似したものであると確定しました。このウイルスは人、豚、鳥のインフルエンザウイルスの遺伝子と、2009 H1N1ウイルス由来のM遺伝子を持っています。患者は豚との接触歴があったと報告されています。現在、感染源や他の患者の有無を調査中です。

この患者は、3月下旬に発熱があり、医療機関を受診しました。検査でインフルエンザA型陽性となり、オセルタミビルで治療を受け、自宅療養で回復しました。

この症例は、通常のサーベイランスで発見されました。検体は、詳細な解析を行うため、公衆衛生検査施設に送られました。公衆衛生検査施設では、インフルエンザウイルスの変異型である可能性があると確認され、CDCの検査でインフルエンザA(H3N2)変異型ウイルスと確定されました。

このウイルスは、豚での感染は知られていましたが、人での感染が発見されていなかったので、変異型インフルエンザウイルスと呼ばれています。このユタ州の症例を含め、2009年7月以降、合計21例の患者が報告されました。21例のうち13例が2009 H1N1ウイルス由来のM遺伝子を持っており、2011年7月以降に発生しています。13例のうち12例が18歳未満で発生しています。すべての患者が回復しています。この事例に似たウイルスの感染は、2011年7月から11月の間に、インディアナ州で2例、ペンシルバニア州で3例、メイン州で2例、アイオワ州で3例、ウエストバージニア州で2例の報告がありました。13例のウイルスからは、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビル(タミフルⓇ)とザナミビル(リレンザⓇ)に耐性を示す遺伝子マーカーは検出されていません。

2011年にインフルエンザA(H3N2)変異型ウイルスに感染した12例のうち、約半数は発症する前に豚との接触歴がありました。このウイルスの豚での感染頻度は不明ですが、米国の豚のインフルエンザ・サーベイランス・プログラムによって、豚で検出されています。限定的な人から人への感染は2011年11月にアイオワ州とウエストバージニア州で発生しています。

2012年4月13日のMMWRに掲載された、“インフルエンザA(H3N2)変異型への交差免疫反応性抗体と、交差反応性抗体に対する2010~2011年の季節性インフルエンザワクチン接種の影響”は、季節性インフルエンザワクチンの接種でH3N2変異型の感染を防ぐことができるかどうかを調べたものです。この研究では、季節性インフルエンザワクチンを接種しても、小児ではH3N2変異型の感染を防ぐことはできず、成人でも限定的な効果しかないということが明らかになりました。この研究の結論は、インフルエンザA(H3N2)変異型が人から人へと容易に、広く感染するようになった場合には、A(H3N2)変異型に特異的なインフルエンザワクチンが必要だとしています。

CDCはH3N2変異型ワクチン候補株のウイルスを作りました。H3N2変異型に対するワクチンは開発中で、数か月以内に臨床試験を始めるための準備が進められている模様です。

2005年12月以降、米国での変異型インフルエンザウイルスの感染は合計36例になりました。残りの15例はH1N2の変異型あるいはH1N1の変異型ウイルスの感染でした。

通常、豚の間で流行しているインフルエンザウイルスが人に感染することは稀ですが、最近、検出される頻度が増加しています。患者を注意深く調査し、感染源を特定し、他の感染例がないか、また、人から人への感染が進んでいないかどうかを確認する必要があります。

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