世界におけるインフルエンザ流行状況(22)

2012年7月6日 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域では、インフルエンザシーズンがほぼ終わっており、北半球の温帯地域のほとんどの国では、毎週のインフルエンザのデータ報告をやめています。北半球の温帯地域のインフルエンザシーズンの詳細な報告は6月15日付けの疫学週報に掲載されています。
  • 熱帯地域では、アメリカ大陸のブラジル、パラグアイ、ホンジュラスと、サハラ以南のアフリカ大陸のガーナ、アジアの中国南部、香港、ベトナムで著しいインフルエンザの活動性が報告されています。
  • 南半球の温帯地域で、データを集めているほとんどの国では、インフルエンザシーズンが始まりました。しかし、アルゼンチンでは、まだ、インフルエンザはほとんど検出されていません。また、ニュージーランドでは、過去3週間で、インフルエンザウイルスの検出が持続的に増加しているものの、インフルエンザ様疾患(ILI)の報告は国のベースラインを下回っています。
  • 南半球の温帯地域のチリ、南アフリカ、オーストラリアで、最近数週間に検出された主な亜型はインフルエンザA(H3N2)でした。しかし、南アフリカではインフルエンザB型の検出数も著名に増加したと報告されています。また、オーストラリアでも、南アフリカよりも少数ですが、インフルエンザB型の検出数が増加しています。温帯地域でのインフルエンザA(H1N1)pdm09の報告は非常に少ないですが、中米や南米の熱帯地域では、現在、もっとも高頻度に検出されています。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域でのインフルエンザの伝播を報告しているすべての国で、インフルエンザの伝播は減少し続けており、ほぼシーズンオフのレベルです。インフルエンザの活動性は、カナダ、米国、ヨーロッパ、アジア北部で散発的な発生がみられるのみです。アフリカ北部、地中海東部、オマーンでは、依然として、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型ウイルスがともに非常に少数であると報告されています。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

中米、カリブ海諸国、南米の熱帯地域の数か国では、インフルエンザの伝播が活発になっていると報告されています。

中米では、エルサルバドルで、インフルエンザA(H1N1)pdm09が検出されるレベルが増加し続けています。先週、インフルエンザが陽性になった検体は29%(65検体のうち19検体)で、そのうちの89%(17検体)がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。最近、インフルエンザA(H1N1)pdm09は、ホンジュラス、パナマでも伝播していますが、検出数は非常に低く、伝播は5月にピークを迎えたようです。

カリブ海諸国では、ドミニカ共和国でインフルエンザA(H3N2)の伝播が先週に比べて減少しました。キューバでは、過去数週間に比べて、インフルエンザB型の検出が増加し続けています。ジャマイカでも5月の後半以降、インフルエンザB型の低いレベルの伝播が報告されています。

南米の熱帯地域では、ボリビアのラパス地域で、インフルエンザが検出される割合が増加し続けていると報告されており、先週集められた臨床検体の50%を超える検体でインフルエンザが陽性となりました。検出されたインフルエンザウイルスはすべてインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。重症急性呼吸器感染症(SARI)で入院した人の割合も、先週以降増加しています。ブラジルも5月中旬以降、インフルエンザが検出される割合が持続的に増加していると報告しています。これは、主に南部でSARIの報告数が著しく増加したことと関連しています。インフルエンザが陽性となったSARI症例のうち80%(979例のうち790例)がインフルエンザA(H1N1)pdm09に関連しており、残りはA(H3N2)でした。

サハラ以南のアフリカ

サハラ以南のアフリカでは、利用できるデータは限られていますが、ほとんどの国で、インフルエンザの活動性は非常に低いレベルか、ほとんどありません。アフリカ西部では、ガーナとコートジボワールでインフルエンザA(H3N2)の伝播が報告されており、ガーナではインフルエンザB型も、非常に少数ながら検出されています。マダガスカルではA(H3N2)が高い水準で検出され続けています。解析された30検体のうち、77%がインフルエンザ陽性で、大部分がインフルエンザA(H3N2)でした。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域のほとんどの国で、インフルエンザの活動性は、低いか検出されない水準が続いています。中国南部では過去3週間にくらべて、国の定点機関に受診するILIの患者の割合は変わりませんが、過去2年間の同時期に比べて高い割合が続いています(3%)。主にインフルエンザA(H3N2)が検出されており、インフルエンザA型ウイルスと亜型解析されたうちの81%を占めています。香港では、この時期としては珍しく、インフルエンザの活動性が高い水準で続いていると報告されていますが、現在は減少しているようです。2012年6月17日から6月23日の間、ILIで外来医療機関、私立医療機関、救急部門を受診した患者は減少しており、インフルエンザに関連した入院例と死亡例の割合も過去数週間に比べて減少しました。ベトナムも過去数週間で、インフルエンザA(H3N2)の活発な伝播を報告しています。6月はILI患者の43%(121例中52例)でインフルエンザ陽性となり、そのうち88%(46例)がインフルエンザA(H3N2)で、12%(6例)がインフルエンザB型でした。さらにSARI患者40例のうち、25%(10例)がインフルエンザ陽性であり、5例がインフルエンザA(H3N2)、5例がインフルエンザB型でした。シンガポールもインフルエンザの伝播を報告しています。過去4週間で、ILIの検体(164検体)でインフルエンザの検出頻度は66%でした。2012年5月に検査された検体で、インフルエンザが陽性になったもののうち、インフルエンザB型が52%、インフルエンザA(H3N2)が30%、インフルエンザA(H1N1)pdm09が18%でした。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域では、すべてではありませんが、ほとんどの国でインフルエンザの活動性が著しく増加したと報告されています。

南米の温帯地域

南米の南回帰線以南の地域では、チリで、最近数週間でインフルエンザの活動性が増加し続けています。しかし、アルゼンチンでは、まだ、インフルエンザシーズンは始まっていないようです。チリでは、過去数週間に比べてインフルエンザの検出がさらに増加し、同時にRSウイルスの検出も増加していると報告しています。ILIの活動性が、現在、警戒閾値に近いところまで増加しており、救急部門を受診する患者のうち、呼吸器疾患で受診する者が占める割合は、現在31%に達しており、過去2年間の同時期の報告数を超えています。チリで、今シーズン検出されているインフルエンザウイルスは、ほぼすべてがインフルエンザA(H3N2)です。パラグアイでは、ILIの受診者は増加し続けていますが、過去2週間に比べ、警戒閾値には達していません。また、臨床検体154検体のうち36%がインフルエンザ陽性でした。チリとは対照的に、パラグアイでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09が79%を占め、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型は少数です。アルゼンチンでは、今シーズンは、これまでのところ、インフルエンザウイルスは少数、散発的に検出されているのみです。ILI、SARI、肺炎患者は増加していますが、これは、主に5歳未満の小児で、RSウイルスが多数検出されていることと関係しています。インフルエンザの活動性は、基本的に、検出されない状態が続いています。

南アフリカの温帯地域

南アフリカでは、インフルエンザシーズンが5月下旬に始まりました。ウイルス監視プログラムによる検出率は21%まで増加し、その後、高い水準で推移しています。シーズンが始まって以来、インフルエンザA(H3N2)とB型がほぼ同数検出されており、A(H1N1)pdm09ウイルスの検出は亜型解析されたウイルスのうち1%未満です。RSウイルスの検出も国内で多く報告されています。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアでは、2012年6月17日から23日に、ILIの患者の666検体が検査され、15%(102検体)がインフルエンザ陽性であり、前週(6月中旬は14%)に比べてわずかに増加しており、この5週間、増加傾向が続いています。オーストラリアで検出されるインフルエンザウイルスの大部分(78%)はインフルエンザA型で、そのほとんどがA(H3N2)でした。ニュージーランドでは、ILIとインフルエンザウイルスの検出は過去3週間、増加傾向にありますが、全体的にはILIの割合は、依然として低く、国のベースラインを下回っています。2012年6月18日から6月24日までに検査されたILI検体256検体のうち、20%(50検体)がインフルエンザ陽性で、そのうち32%(16検体)がインフルエンザA(H3N2)でした。残りは、インフルエンザA(H1N1)pdm09、亜型不明のインフルエンザA型、インフルエンザB型が等しい割合でした。

出典

Influenza update6 July 2012- Update number 163

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html