米国で発見された変異型のインフルエンザウイルスについて(更新9:オハイオ州の入院患者について)

2012年9月28日 CDC(原文〔英語〕へのリンク

米国では、2012年7月以降、複数の州で、インフルエンザA(H1N1)09pdm由来のM遺伝子を有する変異型のインフルエンザA (H3N2)ウイルス(H3N2v)に感染した人が発生しています。主に、農業フェアで豚の接触に関連していました。これまでに、米国全体で、305人の患者が発生しており、16人が入院し、1人が死亡しています。オハイオ州では、サーベイランスを強化し、2012年7月28日から9月25日までに、合計106人のH3N2v感染者が確認されました。患者の多くは、軽症で自然に治癒するインフルエンザ様疾患でしたが、オハイオ州では11人の患者が入院しており、米国全体のH3N2vによる入院患者数の69%を占めています。入院患者のうち、6人は患者の年齢(乳児や高齢者)や基礎疾患により、インフルエンザが重症化するリスクが高い患者でした。そのうち1人は死亡しており、これまでに米国でH3N2vに関連して死亡したと報告されているのは、この患者のみです。

今年、オハイオ州でH3N2vに感染して入院した患者の特徴のまとめ

  1. (1)患者の年齢:1歳未満
    • 暴露を受けた日:7月30日~8月5日/発症日:8月5日
    • 豚との接触歴:間接接触。農業フェアに6日間行き、兄弟が豚を見せたが、豚小屋ではベビーカーで長時間過ごした。
    • 基礎疾患:なし
    • 入院期間と入院理由:8月7日~8日;脱水、インフルエンザA型感染
    • 合併症:脱水
    • 画像や検査の所見:なし
    • 治療:オセルタミビル、輸液
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:2日
  2. (2)患者の年齢:7歳
    • 暴露を受けた日:不明/発症日:8月4日
    • 豚との接触歴:間接接触。発症する前の週に、時々、農業フェアに行った。
    • 基礎疾患:急性リンパ性白血病
    • 入院期間と入院理由:8月6日~7日;発熱、経過観察
    • 合併症:脱水
    • 画像や検査の所見:胸部X線は正常
    • 治療:オセルタミビル、セフトリアキソン
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:2日
  3. (3)患者の年齢:12歳
    • 暴露を受けた日:7月30日~8月4日/発症日:8月2日
    • 豚との接触歴:直接接触。農業フェアに3日間行き、豚の運送に関わった。
    • 基礎疾患:なし
    • 入院期間と入院理由:8月3日~4日;脱水、インフルエンザA型感染、気管支炎
    • 合併症:脱水
    • 画像や検査の所見:胸部X線は浸潤影なし、血清重炭酸濃度18 mmol/L
    • 治療:オセルタミビル、輸液
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:2日
  4. (4)患者の年齢:1歳
    • 暴露を受けた日:7月28日~8月4日/発症日:8月5日
    • 豚との接触歴:間接接触。農業フェアに行き、ベビーカーが豚小屋の中に置かれた。フェアでは豚小屋の中に入っていないが、豚も収容されていた羊小屋の中にもベビーカーが置かれ、その小屋の中を歩いた。小屋の中には後に死亡した病気の豚がいたが、豚との直接接触はなかった。
    • 基礎疾患:なし
    • 入院期間と入院理由:8月7日~8日;クループ
    • 合併症:クループ
    • 画像や検査の所見:なし
    • 治療:オセルタミビル、クループに対する治療、メチルプレドニゾロン、輸液
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:3日
  5. (5)患者の年齢:6歳
    • 暴露を受けた日:8月5日~11日/発症日:8月12日
    • 豚との接触歴:直接接触。農業フェアに6日間行き、会場のキャンピングカーに宿泊した。8月6日と7日に豚をなでたと報告されている。
    • 基礎疾患:喘息の既往歴
    • 入院期間と入院理由:8月13日~14日;インフルエンザ様疾患
    • 合併症:両眼の非化膿性結膜炎
    • 画像や検査の所見:胸部X線では急性の所見はない。咽頭培養ではA群β溶血性連鎖球菌が陽性。
    • 治療:輸液
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:抗ウイルス薬は投与されていない
  6. (6)患者の年齢:4歳
    • 暴露を受けた日:7月26日/発症日:8月2日
    • 豚との接触歴:直接接触。農業フェアに1日行った。
    • 基礎疾患:喘息
    • 入院期間と入院理由:8月12日~13日;脱水
    • 合併症:喘息の増悪、中耳炎
    • 画像や検査の所見:胸部X線で過膨張。浸潤影や浸出液の貯留はない。PCR検査でパラインフルエンザウイルス3型が陽性。
    • 治療:輸液、コルチコステロイドの吸入、アルブテロール(サルブタモール)、アモキシリン
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:抗ウイルス薬は投与されていない
  7. (7)患者の年齢:5歳
    • 暴露を受けた日:8月3日~11日/発症日:8月10日
    • 豚との接触歴:直接接触。農業フェアに7日間行った。兄弟が豚を見せたが、普段は他の家族といた。直接接触したかは不明だが、病気の豚とも接触があった。
    • 基礎疾患:なし
    • 入院期間と入院理由:8月11日~13日;点状出血を伴う発熱
    • 合併症:血小板減少
    • 画像や検査の所見:血小板の画像はなく、数は113,000/mm3。
    • 治療:セフトリアキソン、オセルタミビル(オセルタミビルは、投与を開始して1日後に嘔吐のため中止)
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:2日
  8. (8)患者の年齢:5歳
    • 暴露を受けた日:8月4日~5日/発症日:8月9日
    • 豚との接触歴:間接接触。農業フェアに2日間行った。母親が、患者は豚の近くで遊んだと報告した。
    • 基礎疾患:遺伝性の症候群、発達遅滞、喘息。
    • 入院期間と入院理由:8月10日~12日;重度の便秘と肺炎
    • 合併症:肺炎
    • 画像や検査の所見:胸部X線では、気道と気管支に病変があった。骨盤CTでは、結腸に便が充満し、直腸に大きな便塊がみられた。
    • 治療:セフトリアキソン、輸液、鼻カニューレによる酸素投与、経鼻胃管によるポリエチレングリコール電解質液の投与
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:抗ウイルス薬は投与されていない
  9. (9)患者の年齢:6歳
    • 暴露を受けた日:8月10日~12日/発症日:8月14日
    • 豚との接触歴:直接接触。農業フェアに2日間行った。
    • 基礎疾患:なし
    • 入院期間と入院理由:8月15日~16日;脱水
    • 合併症:脱水
    • 画像や検査の所見:なし
    • 治療:オセルタミビル(投与を開始して1日後に嘔吐のため中止)
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:3日
  10. (10)患者の年齢:6歳
    • 暴露を受けた日:不明/発症日:8月25日
    • 豚との接触歴:接触歴はない。農業フェアには行っていない。豚もいる農場で、馬を取り扱う仕事をしている祖母と8月23日にあった。その祖母は、最近、病気に罹患したことはなく、病気の豚もいなかった。
    • 基礎疾患:なし
    • 入院期間と入院理由:8月25日~28日;尿路感染症、外来治療が失敗
    • 合併症:なし
    • 画像や検査の所見:未実施
    • 治療:抗菌薬の静脈注射
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:抗ウイルス薬は投与されていない
  11. (11)患者の年齢:61歳
    • 暴露を受けた日:8月4日~9日/発症日:8月10日
    • 豚との接触歴:直接接触。農業フェアに4日間行った。会場の豚小屋に行き、会場内のキャンピングカーに宿泊した。農業フェアで、豚に直接接触したことが報告されている。
    • 基礎疾患:糖尿病、心筋症、高血圧。リンパ腫の既往歴。
    • 入院期間と入院理由:8月25日~26日;心房細動、呼吸窮迫、低酸素症
    • 合併症:肺炎、敗血症、死亡
    • 画像や検査の所見:胸部CTで両側の浸潤影。血液培養で緑膿菌が陽性。
    • 治療:集中治療室での支持療法、抗菌薬(薬剤名は不明)の静脈注射
    • 発症から抗ウイルス薬の投与までの期間:抗ウイルス薬は投与されていない

出典

CDC MMWR Influenza A(H3N2)Variant Virus-Related Hospitalizations - Ohio, 2012
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6138a3.htm?s_cid=mm6138a3_e

参考

FORTH 最新ニュース

米国で発見された変異型のインフルエンザウイルスについて(更新8)
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/09101315.html