世界におけるインフルエンザ流行状況(29)

2012年10月12日 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域では季節性のインフルエンザの伝播は、まだ、探知されていません。
  • 熱帯地域のほとんどの国では、インフルエンザの検出は低いか減少傾向にあると報告されています。例外は、アメリカ大陸のコスタリカと、アジアのインド、ネパール、ラオス、タイです。
  • サハラ以南のアフリカでは、カメルーンでインフルエンザウイルスの検出数が増加したと報告されています。
  • 南半球の温帯地域ではインフルエンザシーズンが終息しつつあるようです。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域でインフルエンザの伝播を報告しているすべての国で、インフルエンザの伝播は最小で、シーズンオフの水準です。

米国では、最近の更新情報で、豚由来のインフルエンザA(H3N2)vウイルスに感染した確定患者が新たに1名報告されましたが、持続的な人-人感染は確認されていません。さらに詳しい情報は、CDCのホームページに掲載されています。

ヨーロッパでは、23か国がデータを報告していますが、インフルエンザの活動性は、まだシーズンオフの水準です。

アジアの温帯地域では、モンゴルを除いて、全体的なインフルエンザ様疾患(ILI)の活動性は低いままです。モンゴルでは、前回の報告週よりもインフルエンザの活動性が増加しました。肺炎による入院患者数も増加しましたが、主に他のインフルエンザではない呼吸器感染症を起こすウイルスの混在によるものです。中国北部では、9月10日から16日の週に定点機関を受診したILIの外来患者の割合は2.8%であり、前週よりも若干増加していますが、著明な増加ではありません。インフルエンザが陽性となった検体のうち、71%(17検体中12検体)がインフルエンザA(H3N2)で、29%(17検体中5検体)がインフルエンザB型でした。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

中米、カリブ海諸国、南米の熱帯地域でインフルエンザの活動性を報告しているほとんどの国では、引き続き、インフルエンザの伝播が低い水準にあると報告されています。

中米では、主に、インフルエンザB型ウイルスが検出されています。

ニカラグアとコスタリカでは、インフルエンザB型ウイルスとインフルエンザA(H3N2)ウイルスの検出が報告され続けていますが、パナマでは、インフルエンザの活動性は、ほとんど検出されない水準まで減少し続けています。

南米の熱帯地域では、インフルエンザの活動性は低いです。

ブラジルでは、インフルエンザの活動性は、低い水準に減少し続けています。今年、重症急性呼吸器感染症(SARI)の患者の21%(18,105人中3,834人)からインフルエンザウイルスが検出されました。そのうちの67%(3,834人中2,570人)はインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。また、今年、SARIで死亡した患者は1,559人と報告されていますが、そのうちの409人(26%)でインフルエンザウイルスが検出され、335人(82%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09陽性でした。SARIで死亡した患者の49%(1,559人中769人)は女性で、年齢の中央値は44歳(年齢幅は0歳から99歳)でした。また、SARIで死亡した患者の61%で、少なくとも1つ以上の合併症が記録されていました。ILIの定点医療機関で確認された呼吸器感染症を起こすウイルスの年齢分布では、インフルエンザA型は、5歳から14歳で40.7%、15歳から24歳で50%、25歳から59歳で42%、60歳以上で38%を占めました。

サハラ以南のアフリカ

インフルエンザのデータを報告しているサハラ以南のアフリカの国では、カメルーンで、前週、主にインフルエンザA(H3N2)の活動性の増加を報告しました。ガーナでは、主にインフルエンザB型の検出が減少しており、インフルエンザの活動性は減少しているようです。ケニアでは、インフルエンザB型が低い水準で流行し続けていると報告されています。マダガスカルでは、インフルエンザB型が低い水準で報告されています。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域の数か国では、過去数週間、インフルエンザウイルスの流行が著しく、特に、インド、ネパール、タイで著しい流行がみられており、インフルエンザB型ウイルスと、インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが混在しています。

中国南部のインフルエンザの活動性は非常に低く、インフルエンザが陽性となった検体の割合は3.9%(1,183検体中46検体)でした。インフルエンザが陽性となった検体のうち、73%(46検体中34検体)がインフルエンザA(H3N2)、20%(46検体中9検体)がインフルエンザA型(亜型不明)、6%(46検体中3検体)がインフルエンザB型でした。

ベトナムでは、インフルエンザの活動性は減少傾向にあり、インフルエンザB型ウイルスが優勢であると報告されています。ラオスでは、インフルエンザの活動性が増加しており、インフルエンザA(H1N1)pdm09が主に検出されていると報告されています。

カンボジアでは、インフルエンザの活動性は低い状態が続いており、インフルエンザが陽性となった検体のうち、79%(14検体中11検体)がインフルエンザA(H3N2)でした。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域では、すべての国でインフルエンザの活動性が減少し続けています。

南米の温帯地域

南米の南回帰線以南の地域のインフルエンザの活動性は、チリ、パラグアイ、アルゼンチンで減少し続けています。アルゼンチンは、遅れて、インフルエンザの活動性を報告しており、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型ウイルスが検出されていますが、現在は、インフルエンザウイルスの検出数は減少していると報告しています。

チリでは、ILI患者の受診率は、7月上旬に人口10万人あたり19.4と最大になった後、人口10万人あたり8.2と低い水準が続いています。第38週では、インフルエンザが陽性となった検体のうち、65%(48検体中31検体)がインフルエンザB型、19%(48検体中9検体)がインフルエンザA(H3N2)、17%(48検体中8検体)がインフルエンザA型(亜型不明)でした。今年に入って、インフルエンザが陽性になったSARI患者の検体の大部分は、インフルエンザA(H3N2)ウイルスでした。今年報告されたSARIによる死亡者103人のうち、呼吸器感染症を起こすウイルスが確定されたのは14人で、そのうち64%(9人)がインフルエンザA(H3N2)でした。

パラグアイでは、インフルエンザの活動性は、依然として、低い水準です。SARIによる入院率とILIの受診率もこの傾向を反映しています。現在の報告週では、呼吸器感染症を起こすウイルスが検査された検体(5検体)のうち、80%がインフルエンザB型でした。今年、呼吸器感染症を起こすウイルスが確認されたSARIによる死亡者(31人)のうち、18人(58%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09と確定されました。

南アフリカの温帯地域

南アフリカでは、インフルエンザウイルスの検出数は、7月下旬にピークに達した後、減少し続けており、現在は、主にインフルエンザB型が伝播しています。ILIとSARIの患者数も減少しており、インフルエンザが陽性になったSARI患者の検体から検出されるウイルスの大部分はインフルエンザB型です。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア

オーストラリアとニュージーランドでは、インフルエンザシーズンが終息しつつあるようです。オーストラリアの大部分の地域では、インフルエンザの活動性が流行閾値を下回っており、減少傾向が続いていると報告されています。国全体では、インフルエンザA(H3N2)が優勢でしたが、その後、報告されるウイルスのほとんどはインフルエンザB型になりました。9月15日から28日までに、1,470人のインフルエンザ患者が報告され、そのうち53%(782人)はインフルエンザB型で、46%(683人)はインフルエンザA型で、A(H3N2)であろうと考えられています。今年はこれまでに、NNDSS(国の届出疾患サーベイランスシステム)により、インフルエンザに関連した死亡は57人報告されており、年齢の中央値は79歳でした。ほとんどの患者はインフルエンザA型(亜型不明)に感染していたと報告されており、おそらく、インフルエンザA(H3N2)によるものと考えられています。

ニュージーランドでは、ILI患者の受診率は、減少し続けています。1週間のILI受診率は、人口10万人あたり12.7と報告されており、インフルエンザA(H3N2)が主に検出されています。

出典

Influenza update12 October 2012- Update number 170
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html