世界におけるインフルエンザ流行状況(33)

2012年12月7日 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北半球の温帯地域の多くの国、特に北米では、インフルエンザウイルスの検出数が増加していると報告しています。カナダと米国では、季節性の流行閾値を超えましたが、活動性は米国南部で最も高かったです。ヨーロッパでは、インフルエンザの活動性は、依然として低いですが、わずかに増加し続けています。
  • 南アジアと東南アジアでは、カンボジアを除き、インフルエンザの活動性は低い水準にあると報告されています。
  • サハラ以南のアフリカでは、インフルエンザの活動性は低い水準にあると報告されています。
  • 南半球の温帯地域では、インフルエンザの活動性はシーズンオフの水準です。

北半球の温帯地域

北半球の温帯地域では、インフルエンザの検出数が増加し続けており、インフルエンザ様疾患(ILI)の割合や検査された検体のインフルエンザ陽性率も増加していると報告されています。米国とカナダは、インフルエンザの流行シーズン入りを公表しました。

北米

米国南部の数州とカナダ南部の州でインフルエンザの活動性が増加したと報告されています。米国では、現在、ILIの活動性の割合が季節性の流行閾値に達しました。主に流行しているインフルエンザウイルスは、国によって顕著に異なっています。カナダではインフルエンザB型の活動性はほとんどみられませんが、米国では多く報告されています。また、メキシコでは、インフルエンザB型が優勢です。

カナダでは、インフルエンザに関するすべての指標が前週よりも増加したと報告されました。国全体では、外来患者に占めるILI患者の割合は、前週の2.1%から2.9%に増加しました。また、インフルエンザウイルスが陽性となった臨床検体の割合は、前週の5.9%から9.6%に増加しました。インフルエンザの活動性は、7地域で局地的、21地域で散発的であると報告されています。インフルエンザの集団発生は8件発生し、そのうちの1件は病院、5件は長期療養施設、2件はその他の施設で発生しました。現在の報告週では、限られた病院サーベイランスシステムによって、小児のインフルエンザに関連した入院患者が7人、20歳以上の成人でインフルエンザに関連した入院患者が27人と報告されています。

カナダでは、検出されたウイルスの98%(278検体中271検体)がインフルエンザA型であり、2%がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型のうち、95%がインフルエンザA(H3N2)で、5%がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。シーズン当初から、国立微生物学研究所で35株のインフルエンザウイルスの抗原解析が行われました。インフルエンザA(H3N2)の22株は、すべてワクチン株のA/Victoria/361/2011に類似しており、インフルエンザA(H1N1)pdm09の4株は、すべてワクチン株のA/California/7/2009に類似していました。インフルエンザB型ウイルスのうち、7株はワクチン株のB/Wisconsin/1/2010(山形系統)に類似しており、2株はB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統で、2011年から2012年の季節性インフルエンザワクチンに含まれていた株)に類似していました。今年、これまでに検査されたインフルエンザA(H3N2)の19株、インフルエンザA(H1N1)pdm09の4株、インフルエンザB型ウイルスの8株では、ノイラミニダーゼ阻害薬に対する抵抗性は認められませんでした。

現在、米国では、最近数年間に比べて6週から7週早く、インフルエンザの流行シーズンに入りました。ILIの受診率は季節性の流行閾値の2.2%に達しました。5,342検体のうち15.2%がインフルエンザ陽性であり、前週の7.5%から増加しました。インフルエンザの活動性は地域によって異なっており、南部の5州(テキサス、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、テネシー)ではILIの活動性が高いものの、39州のILIの活動性は非常に低いと報告されています。

米国では、インフルエンザ陽性検体のうち70%がインフルエンザA型で、30%がインフルエンザB型でした。亜型の情報が得られたインフルエンザA型のうち、99.5%がインフルエンザA(H3N2)でした。10月以降、米国疾病予防管理センター(CDC)は、140株のインフルエンザウイルスの抗原解析を行いました。インフルエンザA(H3N2)の90株は、すべて、現在使用されている季節性の3価ワクチンに含まれるA/Victoria/361/2011-likeでした。インフルエンザA(H1N1)pdm09の2株は、いずれも、現在のワクチンに含まれるA/California/7/2009-likeに類似していました。解析された48株のインフルエンザB型ウイルスのうち、34株はB/Wisconsin/1/2010-like (山形系統)であり、14株はビクトリア系統でした。今年、これまでに検査されたインフルエンザA(H3N2)の122株、インフルエンザA(H1N1)pdm09の2株、インフルエンザB型ウイルスの81株では、ノイラミニダーゼ阻害薬に対する抵抗性は認められませんでした。

第47週にアイオワ州からインフルエンザA(H3N2)vに感染した者が1人報告されました。この患者の接触者から、新たな患者は確認されていません。この患者は、今年9月28日以降、初めて報告されたインフルエンザA(H3N2)v感染症例です。インフルエンザA(H3N2)vに関するさらに詳しい情報は、CDCのホームページに掲載されています。

ヨーロッパ

ヨーロッパ全域のインフルエンザの活動性の水準は、依然として低い状態が続いていますが、数か国でインフルエンザウイルスの検出が増加したと報告されています。欧州連合(EU)と欧州経済領域(EEA)の28か国は、11月の最終週におけるILIや急性呼吸器感染症(ARI)の活動性は低いと報告しています。ヨーロッパ全体で、11月第3週に検査された検体のうち3%がインフルエンザウイルス陽性でした。11月第4週には陽性割合が9%近くに増加しました(EUとEEAのデータのみ)。さらに、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、セルビア、リトアニア、エストニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ、アルメニア、ウズベキスタン、ロシア中部など数か国では、ILIやARIの活動性の増加がみられると報告されています。

第40週以降に定点医療機関で検出されたインフルエンザウイルスのうち、46%がA型ウイルスで、54%がB型ウイルスでした。亜型が解析されたA型ウイルスのうち、3分の2はインフルエンザA(H3N2)で、3分の1はインフルエンザA(H1N1)でした。第40週以降、2か国(英国とドイツ)で13株のインフルエンザウイルスの抗原解析が行われ、6株がA/Victoria/361/2011 (H3N2)-like、2株がA/Perth/16/2009 (H3N2)-like、3株がB/Florida/4/2006-like、2株がB/Wisconsin/1/2010-likeでした。

インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザB型ウイルスを含む15株が検査されましたが、いずれも、ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルとザナミビルに対する抵抗性は認められませんでした。

アフリカ北部と地中海東部

中東諸国では、インフルエンザの活動性は低い水準と報告されています。アルジェリアでは、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型ウイルスが多少伝播していると報告されています。バーレーンでは、数週間、インフルエンザA(H1N1)pdm09が検出されたとの報告が続いています。イスラエルでは、以前にインフルエンザA(H1N1)pdm09が検出されていましたが、現在は主にインフルエンザA(H3N2)が低い水準で報告されています。

アジアの温帯地域

アジアの温帯地域全体では、インフルエンザの活動性は、依然として低い水準が続いています。中国北部では、インフルエンザが陽性になった検体は44検体(5.5%)であり、34検体がインフルエンザA型(このうち30検体がインフルエンザA(H3N2))、10検体がインフルエンザB型(系統不明)でした。インフルエンザが陽性となった検体の割合は、前週の3.3%から増加しました。モンゴルでは、インフルエンザの活動性は低く、インフルエンザが陽性となった検体は、82検体中3検体(2.5%)であり、すべて、インフルエンザA(H3N2)でした。韓国と日本のインフルエンザの活動性も、依然として低い状態が続いています。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

中米では、ニカラグアで、インフルエンザB型とインフルエンザA(H3N2)の活動性の減少がみられています。ホンジュラスでは、インフルエンザA(H3N2)が報告されていますが、活動性は、まだピークに達していません。コスタリカ、パナマ、ホンジュラスでは、依然として、RSウイルスの活動性がみられています。

カリブ海では、ジャマイカで、インフルエンザB型の活動性が低い水準と報告されています。キューバでは、以前、インフルエンザB型の検出が報告されましたが、現在は、インフルエンザA(H1N1)pdm09の検出が報告されています。グアドループとマルティニークのRSウイルスの流行は減少しています。

南米の熱帯地域では、インフルエンザの活動性は減少し続けており、ウイルス検出数も少数であると報告されています。ブラジルとパラグアイでは、インフルエンザは全体的な傾向としては減少しており、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型が散発的に検出されていると報告されています。ペルーでは、過去数か月間、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザB型の伝播がみられましたが、全体的に低い水準です。

サハラ以南のアフリカ

サハラ以南のアフリカでは、依然として、インフルエンザが伝播していますが、コートジボワール、カメルーン、エチオピア、ガーナを含むほとんどの国で減少していると報告されています。エチオピアとガーナでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09のみが報告されていますが、カメルーンとケニアでは、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型がみられています。マダガスカルでは、インフルエンザB型の流行が続いていると報告されています。

アジアの熱帯地域

アジアの熱帯地域では、インフルエンザの伝播が続いていますが、全体的には減少しているようです。インドとラオスでは、主にインフルエンザA(H1N1)pdm09が検出されていますが、インフルエンザが陽性となった検体は9月下旬にピークに達した後に減少しています。スリランカとタイでは、インフルエンザの3種類の亜型すべてが伝播していると報告されていますが、陽性検体数は減少しています。カンボジアでは、インフルエンザが陽性となった検体数は前週と同様であり、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザB型が同時に流行しています。ベトナムでは、インフルエンザB型が優勢ですが、減少しています。

シンガポール、香港を含む中国南部では、インフルエンザの活動性は、依然としてシーズンオフの水準です。

南半球の温帯地域

南半球の温帯地域では、すべての国で、インフルエンザの活動性が減少し続けており、現在、シーズンオフの水準です。

出典

Influenza update07December2012 - Update number 174

http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html