2013年のニュース

世界におけるインフルエンザ流行状況 (更新1)

2013年1月18日 WHO ( 原文〔英語〕へのリンク

要約

  • 北米のインフルエンザの活動性は高いままで、一部の指標では、この地域ではピークに達しているようです。米国とカナダの重症度を示す一部の指標では、最近の数年間よりわずかに高くなっています。流行は、例年より早く始まり、他の呼吸器ウイルスの循環と一致しています。北米では、インフルエンザA(H3N2)が優勢で、インフルエンザA(H1N1)pdm09は希です。
  • ヨーロッパとアジアの温帯地域の多くの国では、インフルエンザの活動性は増加していると報告されています。ヨーロッパでは、インフルエンザA(H1N1)pdm09が北米に比べて、比較的に顕著にみられています。
  • 地中海東部とアフリカ北部の数か国では、インフルエンザが陽性となる検体の検出は減少していると報告されています。この地域ではインフルエンザA(H1N1)pdm09が優勢です。
  • アジアの熱帯地域では、インフルエンザの活動性は過去数週間と同様であり、低い水準での伝播が続いています。
  • サハラ以南のアフリカでは、ほとんどの国で、インフルエンザの活動性は減少しています。
  • カリブ海、中米、南米の熱帯地域では、インフルエンザの活動性は低い水準に減少していますが、ボリビアは例外で、インフルエンザA(H3N2)の伝播が増加しています。
  • 現在、南半球では、インフルエンザの活動性はシーズンオフの水準です。

北半球の温帯地域

北米

 北米では、インフルエンザの活動性が昨年12月初めから今年に入り、急激に増加しており、予想以上に早くなっています。インフルエンザの活動性の一部の指標では、まだ上昇していますが、他の指標ではピークに達した可能性があるようです。

 カナダでは、インフルエンザ様疾患(ILI)の受診率は、昨年12月上旬から増加していましたが、1月第1週目にわずかに減少しました。ILI受診率は、前回の報告の67.1/1,000人から、58.7人に減少しました。受診率が最も高かったのは、5歳から19歳の年齢層で、次いで5歳未満の小児でした。インフルエンザウイルスが陽性となった検体の割合も、12月末の34.5%から1月初めは32.4%とわずかに減少しました。しかしインフルエンザの活動性が広範囲に拡大していると報告している地域数が増加しました(アルバータ州(AB)で2、ブリティッシュコロンビア州(BC)で2、マニトバ州(MB)で1、ニューファンドランド・ラブラドール州(NL)で3、オンタリオ州(ON)で5、ケベック州(QC)で2)。また、インフルエンザの集団発生は今年の第1週目に急激に増加しました。1月第1週目に、国内から新たに107件の集団発生が報告され、過去2年間のどの週よりも著しく高い数となっています。ILI受診率も、昨年12月下旬に2週連続で、95%の信頼区間を越えました。新たに検査で確定診断されたインフルエンザに関連した小児の入院患者は、69人で55%は0~2歳でした。今年第1週目に検査で確定診断されたインフルエンザに関連した入院患者は298人で、このうち252人の亜型情報が利用可能でした。これらの患者の96.4%(252人中243人)がインフルエンザA型で、このうちおよそ51.4%(243人中125人)がインフルエンザA(H3N2)で、12.1%(243人中5人)がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。インフルエンザに関連した入院患者の半数以上(54%、298人中162人)が65歳以上でした。利用可能な138人のデータのうち、14.5%が集中治療室(ICU)に入院しました。1月第1週目に報告されたインフルエンザに関連した死亡者は14人報告されており、1人を除くすべてが65歳以上でした。除いた1人は0歳~4歳でインフルエンザA型でした。

 カナダでは、依然として、インフルエンザA型が優勢であり、インフルエンザB型の検出は非常に少数です。1月第1週目に、インフルエンザが陽性となった3,864検体のうち、98.1%がインフルエンザA型であり、1.9%がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型のうち、95.9%がインフルエンザA(H3N2)で、4.1%がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。シーズン当初から、国立微生物学研究所で193株のインフルエンザウイルスの抗原解析が行われました。193株のうち、143株がインフルエンザA(H3N2)で、25株がインフルエンザA(H1N1)pdm09で、25株がインフルエンザB型でした。インフルエンザA(H3N2)の143株はワクチン株のA/Victoria/361/2011に抗原的に類似していました。また、インフルエンザA(H1N1)pdm09の25株はワクチン株のA/California/7/2009に抗原的に類似していました。インフルエンザB型ウイルスのうち、21株はワクチン株のB/Wisconsin/01/2010(山形系統)に抗原的に類似しており、4株はB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統で、2011年から2012年の季節性インフルエンザワクチンに含まれていた株)に類似していました。ノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビルまたはザナミビルに対する耐性が認められた検体はありませんでした(オセルタミビルに対する耐性は178検体で検査、ザナミビルに対する耐性は176検体で検査)。

 米国でもインフルエンザの活動性は高い水準で維持されていますが、昨年12月末に数か所の地域ではピークに達したかもしれないという根拠がいくつかあります。ILIの受診率は、国の閾値である2.2%を超えたままですが、4.3%に減少しました。インフルエンザが陽性となった検体の割合も、昨年12月最終週の35.2%から32.8%となり、3週連続で減少しました。ほぼすべての州(47州)でインフルエンザの活動性が広範囲であると報告しています。122都市の死亡報告システムを通して報告された肺炎やインフルエンザによる全死亡の割合は、過去数週間で初めて国の閾値の7.2%(過去10シーズンの上限90%信頼区間)をわずかに超えましたが、一般的には例年並みのレベルです。昨年12月最終週にインフルエンザに関連した小児の死亡が2人報告されましたが、今シーズンはこれまでに合計20人報告されています(2011年-2012年は34人の小児死亡が報告)。いずれの死亡もインフルエンザA型に関連しており、1人はインフルエンザA(H3N2)でした。昨年10月1日から今年1月5日までの間に検査で確定診断されたインフルエンザに関連した入院患者は3,710人であると報告されており、人口10万人当たり13.3でした。2011年-2012年のシーズン末の入院患者の累積率を比較すると、比較的おだやかなシーズンだった2011年-2012年は8.6で、2010年-2011年は21.4でした。入院患者の最も高い年齢層は65歳以上で人口10万人当たり53.4で、次いで0歳~4歳(人口10万人当たり22.4)であると報告されています。すべての入院患者のうち、86.2%(3,710人中3,198人)がインフルエンザA型で、13.0%(3,710人中484人)がインフルエンザB型ウイルスに関連していました。亜型解析されたインフルエンザA型の入院患者のうち、98.7%(777人中767人)がインフルエンザA(H3N2)で、1.3%(777人中10人)がインフルエンザA(H1N1)pdm09でした。予想されたとおり、検査で確定診断されたインフルエンザによる入院患者の割合で多くを占めていたのは、65歳以上の年齢層で、成人の入院患者で最も一般的な基礎疾患は代謝性疾患、心血管系疾患、肥満、喘息を除く慢性肺疾患であると報告されています。出産可能年齢の女性(15歳~44歳)の入院患者55人のうち、10人が妊娠していました。小児の入院患者で最も一般的な基礎疾患は喘息、神経学的疾患、免疫抑制状態でした。小児の入院患者の40%以上に基礎疾患は認められませんでした。

 米国では、検出されているインフルエンザウイルスの大部分がインフルエンザA(H3N2)ですが、カナダに比べてインフルエンザB型の割合も高くなっています。1月第1週目にインフルエンザが陽性となった4,222検体のうち、80%がインフルエンザA型で、20%がインフルエンザB型でした。亜型の情報が得られたインフルエンザA型ウイルスのうち、98%がインフルエンザA(H3N2)でした。昨年10月1日以降、CDCは521株のインフルエンザウイルスの抗原解析を行いました。インフルエンザA(H1N1)pdm09の17株すべて、いずれも、A/California/7/2009-likeで、インフルエンザA(H3N2)の327株のうち99.4%は、A/Victoria/361/2011-likeでした。解析された117株のインフルエンザB型ウイルスのうち、66.7%は今シーズンに使用されている3価の季節性インフルエンザワクチンに含まれるB/Wisconsin/1/2010-like (山形系統)であり、33%はビクトリア系統でした。昨年10月1日以降に検査された、600株のインフルエンザA(H3N2)、70株のインフルエンザA(H1N1)pdm09(40株はザナミビルに対する検査)、230株のインフルエンザB型ウイルスでは、ノイラミニダーゼ阻害薬に対する耐性は認められませんでした。しかし、まれな散発例として、インフルエンザA(H1N1)pdm09とインフルエンザA(H3N2)のオセルタミビル耐性が、世界各地で検出されています。さらに詳しい情報は、CDCのホームページに掲載されています。

 メキシコでは、インフルエンザの活動性が徐々に増加しています。昨年12月末までに、ILIと重症急性呼吸器感染症(SARI)で保健サービスを訪れた人の割合は、1%を下回ったままです。しかし、インフルエンザの陽性率はこの数週間で20%~40%になりました。国レベルでは、検出されたウイルスはインフルエンザB型が優性ですが、次いでインフルエンザA(H3N2)で、インフルエンザA(H1N1)pdm09は検出されませんでした。

 ヨーロッパ

 ヨーロッパでのインフルエンザの活動性は特に北部と西部で増加し続けています。検体のインフルエンザ陽性率は前回WHO報告更新時の23%から37%に増加し、主にインフルエンザAウイルスの増加によるものです。ヨーロッパでのウイルスの型、亜型の構成割合は北米のそれと著しく異なっています。昨年10月のシーズン当初から定点、定点以外で分離されるインフルエンザウイルスの型は65%がインフルエンザAで、35%がインフルエンザBでした。インフルエンザA(H3N2)に対するA(H1N1)pdm09の割合は北米でのそれより高く、前回更新時から81%対19%(A(H1N1)pdm09対H3N2)と増加しました。

 ヨーロッパ地域内各国では、2012年第52週には9ヶ国のみで増加が報告されたのに対し今回は16ヶ国で増加が報告されており、中程度から高度の活動性が前回は4ヶ国のみでしたが、今回は12ヶ国で報告されています。特にノルウェーは高い活動性を報告し、ILI並びにインフルエンザ陽性症例数の両方が年当初でシーズン高値に達した唯一の国です。ベルギー、デンマーク、ドイツ、アイスランド、アイルランド、スロバキア、スウェーデンは今回のインフルエンザシーズンで初めて中程度の活動性を報告し、一方フランスとイタリアは過去3週間と同程度の活動性を報告しました。

 過去数週間にわたりSARI症例でインフルエンザが散発的に確認され、SARIでの入院は安定しており、そのほとんどが0歳から4歳の小児でした。

 以前報告されたように、シーズン当初から抗原検査をされた85検体の90%は、WHOが推奨した現在の北半球での季節性インフルエンザワクチンウイルスと一致していました。ノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビルとザナミビル)の感受性検査をしたウイルス81株で耐性は見つかっていません。

アフリカ北部と地中海東部

 過去数週間のインフルエンザ活動性は増加していましたが、最近インフルエンザ陽性検体数は徐々に減少してきています。この地域での検体中のインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルス陽性率は増加しており、現在優勢な亜型でインフルエンザ陽性検体中の大部分を占めています。例外はアルジェリアとパキスタンで、そこではインフルエンザBが最も多く、またエジプトではA(H3N2)ウイルスが優勢です。

アジアの温帯地域

 アジア温帯地域のほとんどでインフルエンザ活動性が増加しました。中国北部ではILI活動性が7週間連続で増加しました。国内定点機関から報告されるILIの割合は、前回報告の3.9%と比較し4.2%へ増加しました。検出されたインフルエンザウイルスの99%(101/102)がインフルエンザAで、残り1検体のみがインフルエンザB陽性でした。亜型解析されたインフルエンザAのうち、60%がA(H3N2)、40%がA(H1N1)pdm09でした。A(H1N1)pdm09がインフルエンザA亜型の1/5を占めていた前回の報告と対照的です。中国は、北部でのインフルエンザシーズンが先月12月に始まったと公式に発表しました。中国国家インフルエンザセンターで昨年10月から亜型が解析されたインフルエンザウイルスのうちインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスの37株(97.4%)はA/California/7/2009-likeで、インフルエンザA(H3N2)ウイルスの256株(100%)はA/Victoria/361/2011(H3N2)-like;インフルエンザB/Victoriaウイルス112株(96.6%)はB/Brisbane/60/2008-like、B/Yamagata ウイルス7株(100%)はB/Wisconsin/01/2010-likeでした。検査されたインフルエンザ検体でノイラミニダーゼ阻害剤であるオセルタミビルとザナミビルへの耐性は見つかっていません。

 モンゴルではILI活動性は、増加傾向だったこれまでの週と比較して減少しましたが、これは新年休暇期間の結果かもしれません。インフルエンザA(H3N2)が確認された亜型では最多でした。ここ数週間のILIの多くがRSウイルスやライノウイルス、ヒトコロナウイルスなどの他の呼吸器ウイルスによるものでした。

 日本と韓国でのインフルエンザ活動性は増加しており、日本ではインフルエンザA(H3N2)、韓国ではA(H3N2)とA(H1N1)pdm09が主に検出されました。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域

 中米とカリブ海では、今年第1週目のインフルエンザ活動性は前週と比較し、ほぼ同じか減少し、晩夏のピークからは継続的に減少しました。優勢なウイルス亜型はA(H3N2)とBであり、例外的にキューバではA(H1N1)pdm09が見られました。

 南米全体では、インフルエンザ活動性は今年第1週目に減少しましたが、パラグアイとボリビアでは例外的にわずかに増加しました。パラグアイではA(H3N2)とインフルエンザBが共に循環し、一方ボリビアではA(H3N2)のみの循環が中等度に増加したと報告されました。

サハラ以南のアフリカ

 サハラ以南のアフリカのほとんどの国ではインフルエンザの検出は減少しています。以前ガーナで循環していたインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスは現在シーズンオフのレベルまで減少しました。カメルーン、マダガスカル、ザンビアでも低レベルでのインフルエンザBが報告されました。

アジアの熱帯地域

 東南アジアのほとんどの国では、インフルエンザの活動性は、前週と同様に低レベルでの循環が続いています。

  インドでのインフルエンザ活動性はシーズンオフのレベルで、わずかな検出のほとんどがインフルエンザA(H1N1)pdm09で、時々インフルエンザBも検出されました。

 スリランカでは前週と同レベルでの循環が続いており、しかしながら、以前に検出されたA(H1N1)pdm09の割合は減少し、その結果A(H3N2)とインフルエンザBが優勢に検出されるウイルス亜型となりました。インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBウイルスがカンボジアとタイでも検出されました。

 ベトナムでは、この地域としては変則的ですが、しかし優勢なインフルエンザBの検出の減少が引き続き報告され、一方ラオスではインフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBが共に循環しています。

 シンガポールと香港特別自治区を含む中国南部でのインフルエンザ活動性はシーズン閾値より低いレベルのままですが、シンガポールでは国内警報レベルに達し、中国南部では1089検体のうち56検体(5.1%)がインフルエンザ陽性:46検体(82%)がインフルエンザA、10検体(18%)がインフルエンザB(系統不明)でした。インフルエンザAウイルス亜型は82%がA(H3N2)、18%がA(H1N1)pdm09でした。

南半球の温帯地域 

 南半球の温帯地域のすべての国で、インフルエンザ活動性は現在シーズンオフのレベルです。

出典

Influenza update 18 January 2013 - Update number 177
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP
_surveillance/en/index.html