2013年のニュース

HIV/AIDSについて (ファクトシート) 

2013年10月 WHO ( 原文〔英語〕へのリンク )

要点

HIVは、依然として、世界的に公衆衛生上の大きな問題であり、過去30年以上に渡り2,500万人以上の生命を奪いました。

2012年のHIV感染者は約3,530万人(3,220万人~3,880万人)でした。

HIVが最も多い地域は、サハラ以南のアフリカで、20人の成人のうちおよそ1人がHIVに感染しています。HIV感染者の69%がこの地域に住んでいます。

HIVの感染は、通常、HIV抗体の有無を調べる血液検査によって診断されます。

HIVに感染すると、完全に治療する方法はありませんが、抗レトロウイルス薬による有効な治療法によって、ウイルスを抑制し、HIV感染者は健康で生産的な生活を楽しむことができます。

2012年に、低所得国と中所得国で、970万人以上のHIV感染者が抗レトロウイルス療法(ART)を受けていました。

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、免疫系を標的とし、人の感染症やある種のがんに対する監視・防御機能を低下させます。ウイルスが免疫細胞の機能を破壊したり弱めたりすることにより、感染者は徐々に免疫不全になります。一般的には、免疫機能はCD4細胞数で測定されます。免疫不全になると、正常な免疫系が働けば防御できる様々な感染症やその他の疾患に対する感受性が増加します。HIVが進行するとAIDS(後天性免疫不全症候群、エイズ)になります。個人差がありますが、感染してから2年から15年でAIDSになります。AIDSは、特定のがんや感染症、その他の重篤な臨床症状の発症と定義されています。

症状と所見

 HIVの症状は感染の段階によって異なります。HIV感染者は感染して最初の数か月が最も感染性が高い傾向にありますが、多くの人は、この時期には感染していることに気づかず、後の段階で気づきます。感染してから数週間後に、症状がないか、発熱、頭痛、発疹、咽頭痛などのインフルエンザ様疾患が現れることがあります。

 感染によって、人の免疫機能は次第に弱まり、リンパ節の腫張、体重減少、発熱、下痢、咳などの症状や所見がみられるようになります。治療をしなければ、結核、クリプトコッカス髄膜炎のような重篤な疾患のほか、リンパ腫、カポジ肉腫、その他のがんも生じます。

伝播

 HIVは、感染した人の血液、母乳、精液、膣分泌液などの様々な体液によって伝播します。 キス、抱擁、握手といった日々の接触や、個人で使用する物、食品、水を共有することでは感染しません。

リスクファクター

 HIVに感染するリスクの高い行動や状況は、下記の通りです。

 ・コンドームを適切に使用しない肛門性交や膣性交をした場合

 ・梅毒、ヘルペス、クラミジア、淋菌などによる感染症や、細菌性膣炎など、他の性感染症に感染している場合

 ・注射薬を使用する際に、汚染された針、シリンジ、他の注射器、薬液を共有した場合

 ・安全ではない注射や輸血、滅菌されていない医療用具を使った切除や貫通などの医療行為を受けた場合

 ・医療従事者を含む、針刺し事故が起こった場合

診断

 HIVの検査は、血中のHIV抗体の有無を検査することで感染しているかどうかを明らかにします。抗体は、外から入ってきた病原体を排除するために、人の免疫系が産生するものです。ほとんどの人には、HIV抗体が産生されていても検出できない「ウィンドウ・ピリオド」があり、その期間は通常3週間から6週間です。この感染早期が最も感染性が高い時期ですが、どの段階であっても伝播は起こり得ます。もし、最近、HIVに暴露した可能性があれば、検査結果を確認するためには、感染者が検出限界以上の抗体を産生するのに必要な時間とされている6週間後に再検査を行うべきです。

検査とカウンセリング

 HIVの検査は自発的に行われるべきであり、検査を拒否する権利を認識しなければなりません。医療従事者、保健当局、パートナー、家族が検査を義務づけたり、強制したりすることは、良好な公衆衛生の実践を妨げ、人権を侵害するため、許されることではありません。

 検査をカウンセリングには、WHOが推奨する5つのC(five C’s)を含めなければなりません。5つのCとは、インフォームド・コンセント(informed Consent)、機密性の保持(Confidentiality)、カウンセリング(Counselling)、正確な検査結果(Correct test results)、ケアや治療、その他のサービスとの連携(linkage to Care , treatment and other services)です。

予防

 人は、リスクファクターに暴露することを制限することで、HIVの感染リスクを低下させることができます。HIVを予防するために重要なことは下記の通りで、しばしば組み合わされます。

1. 男性と女性のコンドームの使用
 膣性交や肛門性交をする際には、コンドームを正しく、一貫して使用することで、HIVを含む性感染症の拡大を防ぐことができます。男性用ラテックスコンドームの使用は、HIVや他の性感染症の伝播に対して85%以上の予防効果があるという根拠が示されています。

2. HIVと性感染症の検査とカウンセリング
 リスクファクターのいずれかに暴露した人は、すべて、HIVと他の性感染症の検査を受けることが強く勧められます。これは、感染の有無を知り、すぐに必要な予防や治療を受けることができるからです。WHOもパートナーやカップルに検査を提供することを勧めています。

3. 任意で行われる男性の包皮の環状切除
 男性の包皮の環状切除は、熟練した医療の専門家によって安全に行われた場合、男性における異性間のHIV感染のリスクを約60%低下させます。これは、HIVの有病率が高く、HIVが広く流行しており、男性の包皮の環状切除の実施率が低い状況では、重要な介入方法です。

4. ARV(抗レトロウイルス)薬を用いた予防
4.1 予防としてのART(抗レトロウイルス薬による治療)
 最近の試験によれば、HIV陽性者が有効性のあるARTの服用方法を遵守すれば、感染していない性交渉のパートナーに感染させるリスクが96%まで減少することが確かめられました。WHOは、HIV陽性者とHIV陰性者のパートナーでは、CD4の数値にかかわらず、HIV陽性者へARTを提供することを勧めています。
4.2 HIV陰性のパートナーに対する暴露前予防
 HIV陽性者とHIV陰性者のカップルを対象とした試験で、HIV陰性のパートナーがARV薬を服用することが、HIV陽性のパートナーからのHIVの感染予防に効果があることが示されました。これは、曝露前予防として知られています。 
 WHOは、加盟国に対し、広く暴露前予防が可能と結論づける前に、男性と、男性と性交渉をするトランスジェンダーの女性のカップルで、HIVの感染状況が異なるカップルを対象とした暴露前予防効果を実証するための研究を実施するように推奨しています。
4.3 HIVに対する暴露後予防
 暴露後予防は、感染を予防するために、HIVに暴露してから72時間以内にARV薬を使用することです。暴露後予防は、しばしば、医療従事者が職場で針刺し事故を起こした時に推奨されています。暴露後予防には、カウンセリング、一次救急処置、HIVの検査のほか、リスクによってはARV薬の28日間投与と経過観察が含まれます。

5. 注射薬物使用者の被害の軽減
 注射薬物使用者は、毎回、針とシリンジ等が滅菌された注射器を使用することで、HIVの感染を予防することができます。HIVの予防と治療に関する介入の包括的な対応には、以下の対応が含まれます。

 ・針と注射器への対応

 ・オピオイド依存症の人へのオピオイド置換療法や、その他の根拠に基づいた薬物依存症の治療

 ・HIVの検査とカウンセリング

 ・HIVの治療とケア

 ・コンドームの使用

 ・性感染症、結核、ウイルス性肝炎の管理

6. 母子感染の排除
 HIV陽性の母親からこどもへの感染は、妊娠中、出産時、授乳時に起こり、垂直感染または母子感染と言われます。介入がない場合のHIV感染率は15%から45%です。母親と小児ともに、感染が起こり得る全期間を通してARV薬を投与することで、母子感染はほぼ防ぐことができます。

 WHOは母子感染を予防するために様々な選択肢を推奨しています。その選択肢には、妊娠中、出産中と産後に母子に対するARVの投与、または、CD4の数値にかかわらずHIV陽性の妊婦に対する生涯に渡る治療が含まれます。母子感染予防に関する新しいガイドラインは、2013年に公表される予定です。

 2011年に、低所得国と中所得国でHIVに感染している妊婦は150万人と推計されており、そのうちの56%が、母子感染を予防するために、有効性のあるARV薬の投与を受けました。この人数は、2010年の48%から増加しました。

治療

 HIVは、3種類以上のARV薬を併用するARTで抑えることができます。ARTでは、HIV感染症を完治することはできませんが、人の体内でウイルスの複製を抑制し、人の免疫系を強め、感染症と戦う力を再度もたらすことができます。ARTにより、HIV感染者は健康で生産的な生活を楽しむことができます。

 2012年末時点で、低所得国と中所得国のHIV感染者970万人以上がARTを受けていました。このうち約63万人は小児でした。2003年から2012年の間に、開発途上国でARTを受けた人数は30倍に増加し、単年でも20%増加しました(2011年は800万人で、2012年は970万人でした)。

WHOの対応

 WHOは、流行の始まりから、HIVに対応する世界的な保健活動を主導してきました。WHOは、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の共同スポンサーとして、HIVの治療や診療、HIVと結核の重複感染の優先分野を主導し、ユニセフ(国連児童基金)と共同でHIVの母子感染を排除するための活動を調整しています。

 2011年、WHOの加盟国は、新たに、「2011年から2015年のHIV/AIDSに関する国際保健戦略」を採択しました。この戦略は、WHOと加盟国が5年間に行う活動の指針となる4つの戦略的な方向性を示しています。

 ・HIVの予防、診断、治療、ケアの結果を最適なものとすること

 ・HIVの対応を通して、より幅広い保健上の結果をもたらすこと

 ・強力で持続可能な保健システムを構築すること

 ・格差への対応と人権の啓発を推進すること

 WHOのHIVに関する中核的な活動に含まれるものは下記の通りです。

 ・HIVへの介入や取組の有効性、実現可能性、安全性の根拠をまとめることと、HIVに関する研究課題を設定すること

 ・国のHIV対応計画について、方針の選択肢を明示すること

 ・HIVに関連する薬剤や診断のための検査用品を入手しやすくし、質の向上を図ること

 ・HIVの予防、診断、治療、ケア、支援サービスを拡大するために基準を設定すること

 ・国内で、効果的なHIV対応の計画、実施、監視、評価ができるように技術的な支援を提供すること

 ・誰もがHIVに関するサービスが受けられるようにするための保健部門の対応(カバー率やHIVに関するサービスの影響を含む)について、進捗状況を監視し、報告すること

 ・HIVに関連したミレニアム開発目標と、HIV/AIDSに関する国際保健戦略で設定された目標を達成するために、世界的な取組を主導し、関係機関の団結と協力を進めること

出典

WHO HIV/AIDS Fact sheet N°360 Updated October 2013
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs360/en/index.html