2013年のニュース

トラコーマについて (ファクトシート)

2013年11月 WHO( 原文〔英語〕へのリンク

要点

●トラコーマは53か国に常在すると推計されています。約220万人の視覚障害の原因となっており、このうち120万人は不可逆的失明に進展しています。

●トラコーマが常在し、感染するリスクのある地域に約22億8,900万人が住んでいます。

●2012年には抗菌薬による治療を受けた人は4,700万人、外科的治療を受けた人は16万9,000人と推計されました。

●感染は人との接触(手や衣服)から広がるほか、感染した人の眼や鼻から出る分泌物と接触したハエから広がります。

●治療をなければ、感染によって、疼痛や不快感のほか、角膜に永久的な障害を伴う慢性的な後遺症を来たし、不可逆的失明に至ります。

 トラコーマは世界中で、感染症による失明の主要な原因です。トラコーマは、クラミジア・トラコマティスという偏性細胞内寄生微生物によって起こります。この疾患は感染した人、特に保菌者となる若年者の眼や鼻から出る分泌物から感染します。また、感染した人の眼や鼻から出る分泌物と接触したハエからも広がります。

臨床的特徴と罹患率

 トラコーマが常在している地域では、活動性のトラコーマは未就学児でよくみられ、有病率は60%から90%に達するかもしれません。年齢が上がるにつれて、感染頻度は低くなり、感染期間も短くなります。通常、活動性の疾患にかかっている人の近くで生活することによって感染し、主に家族内で感染します。

 感染を繰り返して数年経過すると、眼瞼の内側に重度の瘢痕が形成され(結膜の瘢痕化)、内側と眼瞼の境界の瘢痕組織によって、まつげで眼球がこすられます(睫毛乱生;逆さまつげ)。これによって、重度の不快感と疼痛が生じ、この症状と他の変化によって、角膜が瘢痕化することがあります。治療をしなければ、この状態から不可逆的な眼の混濁が進行し、視覚障害を来し、典型的には30歳から40歳の間に失明に至ります。

 視覚障害と失明は個人とその家族の生活経験を悪化させ、通常、それは最貧困層で起こります。女性は、おそらく感染した小児と密接に接触するため、男性よりも2~3倍の頻度で失明します。

 この疾患の伝播に影響を与える環境的なリスクファクターは下記の通りです。

 ●不十分な衛生状態

 ●過密な状態で生活する家族

 ●水の不足

 ●トイレや衛生施設の不備

分布

 トラコーマは、アフリカ、アジア、中南米、オーストラリア、中東の53か国に常在し、ほとんどは農村部の最貧困層で高度に常在しています。

 トラコーマは、世界中の失明原因の約1%を占め、約220万人の視覚障害の原因となっており、このうち120万人は不可逆的な失明に至っています。

 全体として、アフリカが依然として最も感染者の多い大陸であり、制御に向けた取組が集中的に行われています。2012年、WHOのアフリカ地域事務局管内では、常在国である29か国で、450万人が抗菌薬による治療を受け、15万5,000人が逆さまつげに対する手術を受けました。

 数か国では、介入の目標を達成したと報告しました。これは、トラコーマを排除するためのキャンペーンの終了と、常在しなくなった後のサーベイランス体制への移行を意味します。目標を達成した国は、ガンビア、ガーナ、イラン、モロッコ、ミャンマー、オマーン、ベトナムです。

 昨年、英国の国際開発省は、2015年までにトラコーマの常在地域を地図で完全示すことを目的とした計画に資金を提供しました。オーストラリア政府の国際援助計画は、東南アジア地域におけるトラコーマによる失明の排除に資金を提供しました。

経済的な影響

 感染した人や地域におけるトラコーマの疾病負荷は非常に大きいです。失われる生産性に関する経済的な費用は、1年間で29億米ドルから53億米ドルと推計されており、逆さまつげを含めると80億米ドルに増加すると推計されています。

予防と制御

 常在国においてトラコーマを制御するための計画はWHOが推奨しているSAFE 戦略に基づいて実施されています。この戦略には、以下の内容が含まれています。

 ●失明に進展する段階でのトラコーマによって生じた逆さまつげに対する手術

 ●クラミジア・トラコマティスへの感染に対する抗菌薬による治療

 ●顔の清潔保持、予防対策として、感染リスクのある住民への教育

 ●飲用水の確保や衛生状態の改善等による環境改善

 常在国のほとんどは、トラコーマ排除の目標年として設定された2020年までに排除を達成するために、この計画の実施を加速することに合意しています。

 2012年に加盟国からWHHOに報告されたデータによれば、トラコーマを排除するために、常在地域の約4,500万人が抗菌薬による治療を受けました。逆さまつげに対する外科的治療を受けた人は16万9,000人と報告され、これまでで最も多い人数でした。

 世界保健総会(World Health Assembly)で採択された決議(WHA 51.11)で設定された目標を達成するためには、排除に向けた取組を継続する必要があります。GET2020の目標を達成するために、この取組には、衛生部門や社会経済発展などの保健に関係する他の部門との協力が含まれます。

WHOの対応

 WHOは1996年にSAFE戦略を採択しました。この戦略は、技術的な指導を提供し、視覚障害を起こす公衆衛生学的な原因としてのトラコーマを排除することを目的とした国際的な取組の調整を行うためのものです。推奨された戦略は、総合的な手法で実施される介入の組み合わせです。1998年、世界保健総会において、WHOが推奨するSAFE戦略を用いて、2020年までに公衆衛生上の問題としてトラコーマによる失明の排除をする決議が採択されました(WHA Resolution 51.11)。

 1997年、WHOは2020年までにトラコーマを排除する世界同盟(GET 2020)を立ち上げました。GET 2020は協力体制を構築し、国でSAFE 戦略を実施することを支援し、疫学的な評価、監視、疾患のサーベイランス、計画の評価、資源の動員によって国の体制を強化することを支援するものです。

出典

WHO  Blinding Trachoma  Fact sheet N°382  November 2013
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs382/en/index.html