フランベジア(イチゴ腫)について(ファクトシート)

2014年2月 WHO(原文〔英語〕へのリンク

要点

  • フランベジア(イチゴ腫)は顧みられない熱帯病であり、皮膚、骨、軟骨が侵されます。
  • フランベジアは性感染症の梅毒と同じ属の細菌によって起こりますが、フランベジアは性感染症ではありません。
  • フランベジアの保有宿主は人のみであり、根絶し得る疾患です。
  • 最近、アジスロマイシンの単回投与(経口投与)によってフランベジアが完治できることが発見され、感染した集団に対する大規模な治療の見通しが立つようになりました。
  • エクアドルとインドの2か国は、かつてフランベジアが常在していましたが、2003年に伝播が絶たれました。
  • 常在国の12か国が、WHOの新たな根絶戦略を実施するために支援を必要としています。

フランベジアは、風土性梅毒(ベジェル)やピンタと同様にトレポネーマによって起こる慢性細菌感染症の1種であり、一般に、風土性トレポネーマ症として知られています。フランベジアは、風土性トレポネーマ症の中で最も頻度の高い疾患です。

この疾患は、主に、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、太平洋の温帯湿潤気候や熱帯雨林気候の貧しい地域でみられます。

ドイツ語やオランダ語ではフランベジア(framboesia)、英語ではyaws、フランス語ではpianと呼ばれ、皮膚、骨、軟骨が侵されます。梅毒トレポネーマの亜種(T.pallidumsubspeciespertenue)によって起こり、この病原体は、性感染症の梅毒と同じ属の細菌です。

フランベジアは感染した人の病巣から出る体液への直接接触によって、人から人に感染しますが、性行為では感染しません。大部分の病変は四肢に発生します。フランベジアの初期病巣には、細菌が多量に含まれています。特に一緒に遊び、小さな傷ができる小児の間で、病巣から出る体液に接触することが感染の伝播につながります。潜伏期間は9日から90日(平均21日)です。

感染を受けた人の約75%は15歳未満の小児です(6歳から10歳の小児で最も多く発生しています)。性差はありません。

過密な環境や、貧しい社会経済状況では、フランベジアの感染拡大が助長されます。治療しなければ、感染によって慢性的に外見が損なわれ、障害が生じることにつながります。

問題の広がり

1952年から1964年にかけて、46か国を対象とした根絶計画が実施されました。1990年以降、多くの国でフランベジアの根絶計画が中止されたため、WHOに対するフランベジアの公式報告も中止されました。数か国のみで、フランベジアが公衆衛生上の課題の一部として残っています。

1950年代以降の歴史的文書によれば、北緯20度から南緯20度の熱帯地域にある少なくとも85か国がフランベジアの常在国でした。しかし、現在、フランベジアの常在国として知られている国は12か国のみです。エクアドルとインドの2か国は、2003年に伝播が絶たれたと主張しており、確認する必要があります。さらに、WHOは、かつて常在国であった71か国の状況を評価する計画を立てています。

フランベジアの報告は義務ではないので、利用できるデータとしては、最近発行された疫学週報のみがこの疾患の世界的な分布の指標です。

現在、病気の広がりを十分に評価するための調査が進行中です。WHOの6地域のうち4地域で、フランベジアの現状が判明しているのは以下の国です。

  • WHOアフリカ地域事務局管内:常在国8か国、かつて常在国であった国30か国
  • WHOアメリカ地域事務局・汎米保健機構管内:常在国1か国、かつて常在国であった国24か国
  • WHO南東アジア地域事務局管内:常在国2か国、かつて常在国であった国5か国
  • WHO西太平洋地域事務局管内:常在国3か国、かつて常在国であった国12か国

常在国は2012年の状況が判明しており、かつて常在国であった国は2012年の状況が明らかではありません。

診断

  • 臨床診断
    フランベジアには、大別して、初期(感染性がある時期)と晩期(感染性のない時期)の2つの病期があります。
    1. 1.初期のフランベジアでは、病原体が侵入した部位で最初の乳頭腫(皮膚にできる円形で固い腫脹で、肉眼で液体はみられない病変)が生じます。この乳頭腫の中には多数の病原体が存在しており、自然治癒するまでに3か月から6か月かかることがあります。初期には、骨の痛みや骨病変も生じることがあります。
    2. 2.晩期のフランベジアは、最初の感染から5年後に症状が出現し、鼻や骨の外見が損なわれ、掌蹠角化症(掌や足の裏が厚くなる)が生じることが特徴です。患者にこのような足底の合併症があると、歩行が困難になります。

    実地での診断は、主に、臨床所見と疫学的な所見に基づいて行われます。WHOは、最近、医療従事者や地域の保健担当者が、この疾患を認識できるように画像入りのガイドを発行しました。

  • 血清学的診断
    血清学的検査は、トレポネーマ(梅毒やフランベジアなど)の感染の診断に広く使用されています。
    しかし、迅速検査は、活動性のフランベジアと治療した後を区別することができません。実地において、活動性のフランベジアを迅速に確定診断するための新たな迅速検査で、非トレポネーマ抗体とトレポネーマ抗体が同時に検出できるポイント・オブ・ケア検査(患者の身近な場所で実施可能な検査)が期待されています。この新たな検査法を評価するための研究が、ガーナ、パプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツで行われています。
  • PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法
    PCR法を用いた遺伝子解析はフランベジアを確定するために使用されます。PCR法では、フランベジアの病変から採取したスワブからアジスロマイシンに対する耐性を検出するためにも使用されます。

治療

フランベジアの治療には2種類の抗菌薬が使用されます。

  1. 1.アジスロマイシンの単回経口投与は30mg/kg(最大2g)です。
  2. 2.ペニシリンベンザチンの単回筋肉内注射は、120万単位(成人)と60万単位(小児)です。

合併症

治療しなければ、罹患した人の約10%で、外見が損なわれ、不自由な合併症が進行し、足と鼻の変形は5年後に現れます。この疾患と合併症は、学校の長期欠席の原因になり、また成人の農業活動を妨げます。

予防

フランベジアに有効なワクチンはありません。早期診断のほか、患者が発生している地域における集団治療や、患者と接触者に対象を絞った治療による感染伝播の阻止による予防が行われます。健康教育と個々の衛生状態の改善は予防の中でも重要な要素です。

過去の根絶に向けた努力

1952年から1964年にかけて、WHOと国連児童基金(UNICEF)は風土性トレポネーマ症を根絶するために、46か国を支援しました。これらの国で行われた集団キャンペーンでは、3億人以上を検査し、5,000万人を治療しました。

1964年までに、これらの疾患の有病率は95%減少しました(250万人)。この業績は公衆衛生上の成功事例の一つと考えられていますが、根絶という最終目的には至っていません。世界でフランベジアを根絶できない理由の一部には、フランベジアの制御活動が脆弱な保健制度の中で早期に統合されたことと、継続的なサーベイランスの欠如があります。1970年代に、これらの疾患が再び増加したため、世界保健総会でWHA 31.58を決議するに至りました。

根絶に向けた新たな取組:これまでの進展

顧みられない熱帯病(NTDs)に対するWHOのロードマップと、世界保健総会で決議されたWHA66.12では、2020年までに残された常在国からフランベジアを根絶するという目標が示されました。

2012年1月以降、顧みられない熱帯病(NTDs)に対するWHOのロードマップが公表され、ランセットにフランベジアに対する経口アジスロマイシンの単回投与の有効性に関する記事が掲載され、WHOは根絶に向けた新たな取組を推進してきました。

  1. 1.2012年3月、WHOは、アジスロマイシンの単回投与による新たな根絶戦略及び政策を発展させるために専門家による会議を開催しました。新しい推奨政策は2点あります。
    1. a.地域全体の治療(Total Community Treatment; TCT)-常在地区全体に対する治療であり、活動性の患者数に関係なく実施
    2. b.対象を絞り、すべての対象者の治療(Total Targeted Treatment; TTT)-活動性の患者とその接触者(家庭、学校、友達)のすべてに対する治療
  2. 2.2013年3月、WHOは、伝播が絶たれたことを示す基準と確認の手続き、計画管理者向けの指針を策定するために別の会議を開催しました。

新たな根絶戦略の概念実証試験の第一段階として、試験的に治療キャンペーンを行う7か国が選定されました。

  • 2012年、国境なき医師団(MSF)は、コンゴ共和国の2地区で最初の治療を実施しました。
  • 2013年には、ガーナの1地区、パプアニューギニアのリヒール島、バヌアツの1州で実施され90%を超える実施率でした。
  • 2014年には、カメルーン、インドネシア、ソロモン諸島で、集団治療活動が実施される予定です。

協力

WHOは、ジェネリック医薬品(後発医薬品)のアジスロマイシン、診断用の検査、財政的支援、技術的支援を提供しています。また、下記の機関も協力しています。

  • 米国のアトランタにある疾病対策センターは、検査に関する支援と耐性の監視を行っています。
  • 米国のワシントン大学も耐性の監視を支援しています。
  • スペインのバルセロナにある世界保健研究所は、オペレーショナル・ リサーチに関する技術的な支援を行っています。
  • ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院は、ソロモン諸島の調査に対する技術的支援と血清学的支援を行っています。
  • ガーナのアクラにある野口記念医学研究所、パプアニューギニアの医学研究所、その他の国立研究所は、迅速検査で、非トレポネーマ抗体とトレポネーマ抗体が同時に検出できるポイント・オブ・ケア検査の評価とアジスロマイシンの耐性検査の評価に参画しています。

展望

フランベジアは、保有宿主は人のみであり、根絶し得る疾患です。感染リスクのある集団すべてに対しアジスロマイシンの経口投与による大規模の治療計画によって伝播を絶ち、疾患を排除できます。

排除を達成するための勢いは次第に高まっており、WHOは関係機関とともに、フランベジアの根絶に向けた新たな取組を主導しています。

2020年に設定された目標を達成するために、円滑に活動を実施するためには、アジスロマイシンの十分な供給、迅速診断検査の有効性、適切な財政が重要です。

出典

WHO YawsFact sheetUpdated February2014

http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs316/en/index.html

参考

WHO Pictorial guide to help village volunteers and health-care workers identify and
refer cases of yaws for treatment14September2012

http://www.who.int/iris/bitstream/10665/75360/1/9789241504096_eng.pdf[PDF形式:1.2MB]