世界におけるインフルエンザの流行状況について (更新18)

2014年9月22日 WHO (原文[英語]へのリンク[PDF形式:681KB]

要約

世界的にみて、インフルエンザのシーズンは南半球では続き、他の地域ではインフルエンザの活動性は、アメリカ大陸の熱帯地域の数か国を除き低いままでした。

  • 北米とヨーロッパでは、全体的にインフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルで推移していました。
  • アメリカ大陸の熱帯地域各国では、インフルエンザBが優勢なウイルスで、RSウイルス(RSV)とともに流行していました。
  • アフリカ(南部をのぞく)と西アジアではインフルエンザの活動性は低かったです。
  • 東アジアでは、インフルエンザの活動性はほとんどの国で低く、インフルエンザA(H3N2)が主として検出された亜型でした。中国南部地域では、インフルエンザA(H3N2)とインフルエンザBウイルスの活動性が持続していました。
  • 南半球では、インフルエンザのシーズンが続きました。南アメリカの温帯地域では、インフルエンザの活動性は主としてインフルエンザA(H3N2)ウイルスに関連しているのですが、それは低下しました。オーストラリアとニュージーランドでは、インフルエンザシーズンが続きました。オーストラリアでは引き続き、高い活動性がA(H1N1) pdm09とA(H3N2)ウイルスに関連して報告されました。南アフリカではインフルエンザのシーズンは続いており、インフルエンザA(H3N2)が最も優勢な亜型でした。
  • 35週から36週(2014年8月24日から2014年9月6日)のFluNetの報告(協定世界時間2014年9月18日 15:50)によりますと、50の国・地域にある国のインフルエンザセンター(NICs) やその他、国のインフルエンザ研究施設からデータが報告されました。WHO世界インフルエンザサーベイランス及び対応システム(GISRS)の検査施設では、22,607以上の検体を検査しました。インフルエンザウイルスが陽性となったのは2,675検体で、このうち2,168検体(81%)がインフルエンザA型で、507検体(19%)がインフルエンザB型でした。亜型が解析されたインフルエンザA型ウイルスのうち、529検体(30.1%)はインフルエンザA(H1N1) pdm09で、1,231検体(69.9%)はインフルエンザA(H3N2)でした。解析されたインフルエンザB型ウイルスのうち、66検体(98.5%)はB-山形系統で、1検体(1.5%)はB-ビクトリア系統でした。

北半球の温帯地域

北米、ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、中央アジア
北半球の各国で、インフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルでした。

東アジア
東アジア地域では、インフルエンザの活動性は低いままで、インフルエンザA(H3N2)が循環している主なウイルスでした。

中国南部では、これまでの数週に比べてインフルエンザの活動性は低下しました。報告のあったインフルエンザウイルスの検出例のほとんどがインフルエンザA(H3N2)で、ごく少数がインフルエンザB型ウイルスでした。

中国北部、日本、モンゴル、韓国ではインフルエンザの活動性はシーズンオフのレベルのままでした。

熱帯地域

アメリカ大陸の熱帯地域/中米とカリブ海諸国
全体としてこの地域では、インフルエンザの活動性には変動がみられました。

コスタリカやニカラグアなど、カリブ海および中央アメリカのほとんどの国では、インフルエンザB型の循環が報告され、グアテマラではインフルエンザA(H1N1)pmd09が同時に循環しており、ドミニカ共和国、ホンジュラスではインフルエンザA(H3N2)が同時に循環していました。パナマでは最近の数週にかけてインフルエンザBの循環は減少しました。キューバでは重症呼吸器感染(SARI)の症例数が増加し、循環している主要なウイルスはRSVでした。

南米の熱帯諸国では、予想の範囲内でインフルエンザ様疾患(ILI)とSARIの活動性が報告されました。RSVは循環し続けていますが減少傾向です。この地域のほとんどの国でインフルエンザの検出は増えています。ボリビアでは、この2か月間、インフルエンザが最も高頻度に検出された呼吸器ウイルスであり、同時にインフルエンザA(H3N2)が循環しており、インフルエンザA(H1N1)pmd09が検出されていますが、この傾向は8月の半ばから減少傾向を示しました。コロンビアでは、インフルエンザの活動性が持続しており、インフルエンザA(H3N2)が最も高頻度に検出されたウイルスでした。ペルーでも、インフルエンザの活動性の持続がみられており、主としてインフルエンザAによるものでした。しかし、昨年と比較するとインフルエンザの活動性は低いものでした。

ブラジルでは、インフルエンザウイルスが陽性になる検体のパーセントは、8月初めに比べ減っています。インフルエンザの活動性は主に南東部地域で報告されており、そこではインフルエンザA(H3N2)ウイルスがもっとも一般的に検出されたウイルスでした。

中央アフリカの熱帯地域
アフリカでは、東アフリカ、中部アフリカ、西アフリカのほとんどの国から報告されたインフルエンザの活動性は低いレベルでした。カメルーンはごく少数の検出を報告しており、主としてインフルエンザB型ウイルスによるものでした。ザンビアでも、ある程度のインフルエンザの活動性が報告されています。

アジアの熱帯地域
ほとんどの南アジアと東南アジアの諸国では、インフルエンザの活動性は低下しているか低いレベルにとどまりました。

インド、ネパール、シンガポールでは活動性は低下し、主としてインフルエンザA(H3N2)によるものでした。

タイでは主としてインフルエンザB型の活動性が報告されましたが、インフルエンザの活動性のピークはすでに7月に達しており、検査でRSV陽性となる検体の割合が増加しました。

南半球の温帯地域諸国

南米の温帯地域
南米の温帯地域では、インフルエンザの活動性は減少を続けました。

アルゼンチンとチリでは、ILIの活動性とインフルエンザの検出数は減少を続け、ILIの症例のほとんどがRSVによるものでした。

パラグアイでは、ILIによる受診率は前年と比べると高レベルのままであり、検査でインフルエンザ陽性となる検体の割合が増加しました。インフルエンザウイルスの91.7%がインフルエンザA型で8.3%がインフルエンザB型でした。

ウルグアイでは、インフルエンザの活動性が持続し、現在はRSVよりもインフルエンザA(H3N2)ウイルスがより高い頻度で検出されるウイルスとなりつつあります。

南アフリカ
南アフリカでは、インフルエンザの活動性は依然高く、インフルエンザA(H3N2)が最も多く検出されたウイルスでした。

オセアニア、メラネシア、ポリネシア
オーストラリア、ニューカレドニア、ニュージーランドでインフルエンザの活動性が継続していました。オーストラリアとニュージーランドで最も高頻度に検出されたウイルスは、インフルエンザA(H1N1)pmd09で、一方ニューカレドニアではインフルエンザA(H3N2)が優勢でした。

オーストラリアでは、ILIの活動性および検査室確定診断例の通報が依然として高い状態でした。南部を除き、ほとんどの地域でインフルエンザの活動性はピークを過ぎたように思われました。オーストラリアのほとんどの管区でインフルエンザA(H1N1) pdm09が優性ですが、ニューサウスウェールズ州やオーストラリア首都特別地域では違い、インフルエンザA(H3N2)ウイルスがもっとも一般的です。オーストラリアのインフルエンザサーベイランスの報告では、ほとんどの管区でインフルエンザシーズンの程度は中程度であったと評価しました。しかし、インフルエンザA(H3N2)ウイルスが優勢で、高齢者群の感染が起きているニューサウスウェールズ州では、活動性が例年よりも重度であることが認められています。

ニュージーランドではILIの受診率は季節の閾値を超えたままで、平均の流行カーブよりやや高くなっていました。2014年4月28日より検査された1,184のILI患者の検体のうち、427(36.1%)がインフルエンザ陽性で、インフルエンザA(H1N1)pmd09が最も高頻度に検出されたインフルエンザウイルスでした。太平洋諸島では、ILIの活動性には変動があり、いくつかの島で減少傾向にあることが報告されました。ILIの活動性はフィジー、ミクロネシア連邦、ニュージーランド、サモア、トンガ、ツバル、バヌアツで閾値(歴史的値の90%)を超えました。

出典

WHO Influenza update22September2014 - Update number 220
http://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/latest_update_GIP_surveillance/en/