2014年のニュース

ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんワクチン (ファクトシート)

2014年11月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

ヒトパピローマウイルス(HPV)は世界中あらゆるところでみられるウイルスの一群です。
HPVは100種類以上の型があり、少なくともそのうちの13種類に発がん性(高リスク型としても知られている)があります。
HPVは主に性器接触で感染し、ほとんどの人は性交渉体験後まもなくHPVに感染します。
子宮頸がんは、性行為により感染した特定の種類のHPVによって引き起こされます。
子宮頸がん及び頸部前癌所見の70%は16型または18型のHPVを原因とします。
HPVは肛門、外陰部、膣、陰茎の癌と関連があるという証拠もあります。
子宮頸がんは女性では2番目に多いがんで、2012年には新たに推計53万の症例がありました。
2012年には、約27万人の女性が子宮頸がんで死亡しています。死亡者の85%は低-中所得国の患者です。
16型と18型HPVに対するワクチンは多くの国で承認されています。

概観

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は最も一般的な生殖器へのウイルス感染症です。性交渉を経験するほとんどの女男は、人生のどこかで感染するでしょうし、一部の人は何度も感染を繰り返します。

 女男ともに、もっとも感染機会が多いのは性体験を始めた直後です。HPVは性交渉時に伝播しますが、挿入の有無は感染には関係ありません。性器の皮膚部分どうしの接触でも伝播することはよく知られています。

 HPVには多くの型があり、ほとんどは問題を起こしません。通常、HPV感染は感染後数ヶ月以内に自然に治癒し、2年以内で約90%が治ります。HPVの特定の種類に感染した人のうち少数の人が、持続感染しがんへと進行します。

 これまでのところ、子宮頸がんはHPVが関連する最も一般的な疾患です。ほとんどすべての子宮頸がん症例がHPV感染症に起因しています。

 子宮頸部のがん以外の肛門性器がんに関するデータは限られていますが、肛門、外陰部、膣、陰茎のがんにHPVが関連することの証拠が増えてきています。これらのがんは、子宮頸がんより頻度は少ないですが、HPVと関連性があるため子宮頸がんと同様の一次予防戦略を行うことで潜在的に予防することができます。

 がんを起こさない型のHPV(特に6型と11型)は、生殖器の疣贅(いぼ)と呼吸器乳頭腫(腫瘍が鼻や口から肺に通じる気道で成長する疾患)を引き起こします。これらの病態は死をまねくことは極めて稀ですが、重篤な病態を引き起こすことはあり得ます。性器疣贅は頻繁にみられる感染性の高い疾患です。

症状と所見

 ほとんどのHPV感染症は症状や病的状態を引き起こすことなく、自然に治癒します。しかし、稀に、特定の型(もっとも多いのは16型と18型)のHPVが持続感染すると、前癌病変につながります。これらの病変は、未治療の場合には子宮頸がんに進行しますが、この進行は通常何年もの歳月を必要とします。

 子宮頸がんの症状は、がんが進行がんの段階に達したときにのみ現れる傾向があります。症状には以下のものがあります。:

性交渉の後に起こる、不規則な、月経周期以外の、または通常は見ないような膣出血
背中、足、骨盤痛
疲労、体重減少、食欲不振。
膣の不快感や臭気のある分泌物
片足だけの腫脹

 進行期には、さらに深刻な症状が発生する可能性があります。

HPV感染症が子宮頸がんに移行する経緯

 ほとんどのHPV感染症は治癒し、ほとんどの前癌病変は自然に治ります。しかし、HPV感染症は慢性化し、前癌病変から浸潤性子宮頸がんに進行する危険性が、すべての女性にあります。

 正常な免疫状態の女性で子宮頸がんに進行するには15年から20年かかります。免疫力が低下した女性、例えばHIV感染症で未治療の人のような場合は5年から10年たらずで進行する可能性があります。

HPVの持続感染と子宮頸がんの危険因子

低年齢での最初の性交渉
複数のパートナーとの性交渉
喫煙
免疫不全状態(例えば、HIV感染者はHPV感染症の危険性がより高く、たくさんの型のHPVに感染している)

問題の範囲

 世界では、子宮頸がんは女性における4番目に頻度の高いがんであり、がんの女性における死亡者の7.5%を占めます。社会福祉の充実した国に比べて発展途上国ではさらに多くの女性が子宮頸がんで死亡します。毎年 27万人以上と推計される子宮頸がんによる死亡者のうち、85%以上は発展途上国で発生しています。

 先進国では、スクリーニングを受けるための実施プログラムが整備されてきています。これにより容易に治療できる前癌病変の段階で発見することができます。早期治療による子宮頸がんの予防率は、これらの国で最大80%に達します。

 発展途上国では、スクリーニングを受けるための環境が悪くなると、子宮頸がんが進行し、症状が現われるまで発見できなくなります。さらに、このような進行後期の段階での治療の予後は悪く、これらの国では子宮頸がんによる死亡率を上げることになります。

 世界での子宮頸がんの死亡率の高さ(52%)はスクリーニングと治療のプログラムが効果を上げることによって減らすことができます。

子宮頸がんのスクリーニング

 子宮頸がんのスクリーニング(検診)は、症状がなく、見るからに健康な女性に対する前癌病変およびがんを見つける検査です。検診で前癌病変を発見し、早期に治療を受けることができれば、がんを回避することができます。初期の段階でがんを発見できれば、治療で治癒する可能性が高くなります。

 前癌病変になるまでには長い年月を必要とするので、30歳から49歳の女性はすべて、少なくとも一生に一度、理想的にはもっと頻繁に検診を受けることが推奨されます。検診は、もし女性が高い割合で参加してくれれば、子宮頸がんの死亡率だけは下げることができます。

 現在、異なる3つのタイプのスクリーニングテストが利用できます。

従来の細胞診(PAPテスト)と液状処理細胞診(LBC)
酢酸処理による頸部視診(VIA)
ハイリスク型HPVに対するHPV検査

HPVワクチン

 現在、少なくとも子宮頸がんの70%の原因として知られる16型と18型のHPVに対する予防には2種類のワクチンがあります。これらのワクチンは、子宮頸がんの原因となる他のあまり知られていない型のHPVに対してもいくらかの交差免疫を作る可能性があります。また、ワクチンの1つは、肛門性器疣贅の原因となる6型と11型のHPVに対して予防効果があります。

 臨床試験の結果では、これらのワクチンは16型と18型のHPVへの感染を予防することに安全でかつおおきな効果があることが示されました。

 これらのワクチンは、HPVに暴露する前に投与した場合に最も大きな効果があります。従って、最初の性体験の前に接種を受けることが好ましいです。

 ワクチンは、HPV感染症や子宮頸がんなどのHPV関連疾患を治療ものではありません。

 一部の国では、女性と同様に男性の性器がんも防ぐのでワクチン接種が少年に開始されました。利用可能な2つのワクチンのうち1つは男女ともに生殖器の疣贅を防ぐこともできます。WHOは9-13歳の少女対して予防接種を受けることを推奨しています。これは子宮頸がんに対して最も費用対効果の高い公衆衛生対策です。

 HPV予防接種は、子宮頸がん検診に代わるものではありません。HPVワクチンが導入されている国でも、検診実施プログラムは計画や強化が行われる必要があるかもしれません。

子宮頸がん予防と感染制御:包括的なアプローチ

 WHOは、子宮頸がんの予防と感染制御への包括的なアプローチを推奨しています。推奨される行動計画は、社会教育、社会的動員、予防接種、検診、治療と緩和ケアといった構成要素を含む一生を通した積極介入であり、多くの学問領域にわたるものです。

 一次予防は、性的な成熟期を迎える前の9-13歳の少女にHPVワクチン接種を行うことから始まります。

 必要に応じて、少年と少女に以下のような予防的な介入も行われます。

性行為の初体験を遅めにすることを含む、安全な性行動習慣への教育
性交渉をもつ人に対するコンドーム使用の推進と提供
多くの場合青年期に開始することの多い喫煙が子宮頸がんやその他のがんに対する大きな危険因子であることについての警告
男性の割礼

 性的に成熟した女性では30歳から、子宮頸部細胞の異常や前癌病変に対する検査を開始するべきです。異常細胞や病変の除去が必要とされた場合の治療には、凍結療法(頸部の異常組織を凍結して破壊する治療)が推奨されています。

 子宮頸部がんの兆候がある場合には、浸潤がんの治療の選択肢に、手術、放射線療法、化学療法があります。

WHOの対応

 WHOは、予防接種と検診による子宮頸がんの予防と感染制御に関するガイダンスを作成しました。WHOは、関係各国および支援者と協力して包括的な実施プログラムを計画し、実施しています。

 2012年末までに、45か国でHPVワクチンが導入されました。これらの国のほとんどは先進国です。しかし、世界での子宮頸がんの発生が発展途上国で最も重いことを考慮すると、子宮頸がんの予防と感染制御の包括的なアプローチを含む国家的な公衆衛生戦略の一環としては、まだ多くの国にHPVワクチンを導入する必要性があります。

出典

WHO. Human papillomavirus (HPV) and cervical cancer. Fact sheet N°380.
Update November 2014.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs380/en/