2014年のニュース

HIV/AIDSについて (ファクトシート)

2014年11月 WHO (原文[英語]へのリンク

要点

HIVは、依然として世界的における公衆衛生上の大きな問題であり、これまでに3,900万人以上の生命を奪ってきました。 2013年には、世界中で150[140~170]万人がHIV関連の疾患(原因)で死亡しています。
2013年には世界全体で210[190~240]万人が新規にHIVに感染し、2013年末にはHIV感染者は約3,500[3,320~3,720]万人になりました。
最も感染の多い地域はサハラ以南のアフリカで、2013年にはHIV感染者が2,470[2,350~2,610]万人になりました。また、世界全体で新規にHIVに感染した人の約70%がサハラ以南のアフリカ人でした。
HIVの感染は、通常、HIV抗体の有無を検出する血液検査で診断されます。
HIVに感染すると、完全に治療する方法はありませんが、抗レトロウイルス薬(ARV)による有効な治療法でウイルスを抑制し、HIV感染者が健康で生産力のある生活をおくることができます。
2013年には、1,290万人のHIV感染者が抗レトロウイルス療法(ART)を受けました。そのうちの1,170万人は低所得国と中所得国の患者でした。ARTを受けている1,170万人の患者は、低所得国と中所得国の患者3,260[3,080~3,470]万人の感染者のうち36%[34~38]%です。
小児に対する適用は、低所得国と中所得国ではまだまだ遅れています。2013年には、成人の3人中1人以上がARTを受けていたのに対し、小児は4人中1人に行かない状態です。

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、免疫系を標的とし、感染症やある種のがんに対する人々の免疫応答機能を低下させます。ウイルスは免疫細胞の機能を破壊し傷害を与えることで、感染者を徐々に免疫不全にさせていきます。免疫機能は主にCD4細胞数で測定されます。免疫不全になると、正常な免疫系をもった人ならば防御できる様々な感染症やその他の疾患の影響を受けやすくなります。

 HIVが最も進行した状態がAIDS(後天性免疫不全症候群、エイズ)です。個人差がありますが、感染してから2年から15年でAIDSまで進行します。AIDSは、ある種のがん、感染症またはその他の重篤な臨床症状が発症することによって定義づけられています。

症状と所見

 HIVの症状は感染の段階によって異なります。HIV感染者は最初の数か月に最も強い感染力をもっているものですが、多くの人は、この時期には感染に気づくことはなく、後の段階になって気づきます。感染して数週間は、感染者に発熱、頭痛、発疹、咽頭痛などのインフルエンザ様症状が現れます、しかし、無症状のこともあります。

 感染によって人の免疫機能が弱まってくると、次第にリンパ節の腫張、体重減少、発熱、下痢、咳などの症状や所見がみられるようになります。治療をしなければ、感染者には、結核、クリプトコッカス髄膜炎といった重篤な疾患や、リンパ腫、カポジ肉腫といったがん種も生じます。

伝播

 HIVは、感染した人の血液、母乳、精液、膣分泌液など様々な体液によって伝播します。キス、抱擁、握手といった日常生活での接触や、個人で使用する物品、食品、水を分け合うことでは感染しません。

危険因子

HIVに感染するリスクが高くなる行動様式や状況は、下記のとおりです。

コンドームを使用せずに肛門性交や膣性交をした場合
梅毒、ヘルペス、クラミジア、淋菌や細菌性膣炎など、他の性行為感染症に感染している場合
針、シリンジ、その他の注射のときの付属器具や薬液など、汚染されたものを使い回す場合
安全が不確かな注射、輸血、滅菌処理されていない医療用具での切開や(ピアスの)貫通などの医療行為を受けた場合
医療従事者を含む偶発的な針刺し事故を経験した場合

診断

 HIV検査は、血液中のHIV抗体の有無を検出することで感染を明らかにします。抗体とは、外部からの病原体を排除するために人間の免疫系が産生するものです。ほとんどの人には、HIV抗体が産生されるまでの間、通常、感染しても検出できない3週間から6週間の「ウィンドウ・ピリオド」があります。

 この感染初期が最も感染力の強い時期ですが、感染はどの段階でも起こり得ます。もし、最近HIVに感染した可能性がある人がいるならば、その人は検査結果を確認するためには、感染者が抗体産生するのに必要な時間である6週間後に再検査を行うべきです。

検査とカウンセリング

 HIV検査は自発的に行われるべきものであり、検査を拒否する権利が認められなければなりません。医療従事者、保健当局、パートナー、家族が検査を義務づけたり、強制したりすることは、健全な公衆衛生の運用を妨げ、人権を侵害するものであり、許されないことです。

 一部の国では追加の選択肢として自己テストの導入または検討を行っています。HIVの自己テストは、自分のHIV感染の有無を知りたい人が検体を採取し、それによってテストを行い、個人的に検査の結果を判断する方法です。HIV自己テストは、確定診断ではありません。単に、HIVのスクリーニングテストの代わりです。

 全ての検査とカウンセリングの取り組みには、WHOが推奨する5つのC(five C’s)を含んでいなければなりません。5つのCとは、インフォームド・コンセント(informed Consent)、機密性の保持(Confidentiality)、カウンセリング(Counselling)、正確な検査結果(Correct test results)、ケア、治療、その他のサービスとの連携(linkage to Care , treatment and other services)です。

予防

 人は、危険な要因に曝されることを限定することによってHIVの感染リスクを下げることができます。HIV予防のための要点は下記のとおりです。これらは組み合わせて実行されることもあります。

1.  男性と女性のコンドーム使用
 膣性交や肛門性交を行う際には、男性用、女性用コンドームを首尾一貫して正しく使用することがHIVを含む性行為感染症(sexually transmitted infections: STIs)の拡大から守ることを可能にします。男性用ラテックスコンドームの使用は、HIVや他の性行為感染症の伝播に対して85%以上の予防効果があるという根拠が示されています。

2. HIVと性感染症の検査とカウンセリング
 ありとあらゆるリスク要因に曝される人々には、HIVと他の性感染症の検査を受けることが強く勧められます。これは、感染の有無を知り、速やかに予防や必要な治療を受けることにつながります。WHOはパートナーやカップルにも検査を受けることを勧めています。

3. 任意で行われる男性の包皮環状切除
 男性の包皮環状切除は、熟練した医療の専門家によって安全に行われた場合、男性におけるHIVの異性間感染のリスクを約60%低下させます。これは、HIVの有病率が高く、HIVが広く流行し、男性の包皮環状切除の実施率が低い一般的な公衆衛生の状況では、重要な介入手段です。

4. ARV(antiretroviral:抗レトロウイルス)薬を用いた予防
 4.1予防としての抗レトロウイルス療法(ART) 
 2011年のある試験によれば、HIV陽性患者が有効性のあるARVの服用方法を遵守すれば、感染していない性交渉のパートナーに感染させるリスクを96%下げられることが確認されました。WHOは、HIV陽性者とHIV陰性者のパートナーとの二人には、CD4値にかかわらずHIV陽性患者へARTを処方することを勧めています。

 4.2 HIV陰性のパートナーに対する暴露前予防(pre-exposure prophylaxis: PrEP) 
 HIVの経口暴露前予防(PrEP)は、HIVの感染を防ぐためにHIV非感染者がARV薬を毎日服用することです。ある研究では、PrEPは、血液検査結果が異なる(HIV陽性者とHIV陰性者のパートナー)の異性カップル、男性同性愛者(men who have sex with men : MSM)、性転換した女性、ハイリスクの異性間カップル、薬物注射使用者においてHIV感染の減少に有効であることを証明しました。WHOは、安全で効果的にPrEPを実施する経験を積む計画に着手することを各国に勧めています。

 2014年7月に、WHOは「注意すべき集団(男性同性愛者、男性服役囚、薬物注射の使用者、性産業の従事者、性転換した人)のためのHIV予防、診断、治療、ケアの総合ガイドライン」を発行し、男性同性愛者(MSM)に対する包括的なHIV予防対策の中でPrEPをHIV予防の追加の選択肢として推奨しました。

4.3 HIVに対する暴露後予防 (pre-exposure prophylaxis:PEP)
 暴露後予防(post-exposure prophylaxis :PEP)は、感染を予防するためにHIVに暴露してから72時間以内にARV薬を使用することです。PEPには、カウンセリング、一次救急処置、HIV検査のほか、リスクによってはARV薬の28日間投与と経過観察が含まれます。

 2014年12月に改定されたガイドラインでは、WHOは職業的な暴露と非職業的な暴露の両方そして成人と小児の両方に対してもPEPの使用を推奨しています。新しい推奨では、既に治療で使われているARV薬を用いたより使いやすい投与計画を提示しています。新しいガイドラインの実効性は、医療従事者、予防が行われないままの性行為で受けた暴露や性的暴行のような、偶発的にHIVに曝される人をHIVから予防するために、処方をより簡単に、治療をより良好に継続させ、PEPを完全に行う割合を上げるものです。

5. 注射薬物使用者での感染の軽減
 注射薬物の使用者は、毎回、針とシリンジ等が滅菌された注射器具を使用することで、HIVの感染から予防することができます。HIVの予防と治療への介入の包括的な対応には、以下のことが含まれます。

針と注射器への対応
オピオイド依存患者へのオピオイド置換療法や、その他の根拠に基づいた薬物依存症の治療
HIVの検査とカウンセリング
HIVの治療とケア
コンドームの使用
性行為感染症、結核、ウイルス性肝炎の感染制御

6. 母子感染の排除(Elimination of mother-to-child transmission of HIV: eMTCT)
 HIV陽性の母親から子どもへの感染は、妊娠中、出産時、授乳時に起こり、垂直感染または母子感染と言われます。介入が行われない場合、HIVの母子感染率は15%から45%です。母親、小児ともに、感染が起こり得る全期間でARV薬を投与すれば、母子感染はほぼ防ぐことができます。

 WHOは、母子感染の予防(prevention of MTCT)のための様々な選択肢を推し奨めています。その選択肢には、妊娠中、出産中と産後に母子にARV薬を投与すること、または、CD4値にかかわらずHIV陽性の妊婦に対して生涯にわたり治療することが含まれます。

 2013年に、低所得国と中所得国でHIVに感染している推計140[130-160]万人の妊婦のうち、母子感染を予防するために67%[62-73%]が有効性のある抗レトロウイルス薬の投与を受けました。この人数は2009年の47%から増加しています。

治療

 HIVは、3種類以上のARV薬を併用する抗レトロウイルス療法(ART)で抑えることができます。ARTでは、HIV感染症を完全に治癒させることはできませんが、体内でのウイルスの複製を抑制し、免疫系を高め、再び感染症と戦う能力を再生することができます。ARTにより、HIV感染者は健康で生産力のある生活をおくることができます。

 2013年末時点で、低所得国と中所得国の中で約1,170万人のHIV感染者がARTを受けました。このうち約74万人は小児でした。

 2013年には、低所得国と中所得国のARTを受けている人々の数が一年で大幅に、200万人も増えました。

 小児の適用はまだ遅れており、2013年に成人では3人中1人なのに対し、小児は4人中1人しかARTを受けていません。2013年には、すべての成人HIV感染者のうち37%が治療を受けていましたが、小児のHIV感染者のうち23%しかこれらの救命医療薬による治療を受けていませんでした。

WHOの対応

 世界がミレニアム開発目標の達成に向けて歩んでいる中で、WHOは2011年から2015年にHIV/AIDSに関する国際保健戦略を実行するために各国と協力して作業を進めています。WHOは、世界のHIV目標に向かって最も効果的に各国を支援するために、2014年-2015年における6つの運用目標を特定しました。

HIVの治療と予防のために抗レトロウイルス薬を戦略的に使用すること
小児のHIV撲滅と小児科治療への環境整備を拡大すること
鍵となる集団におけるHIVに対して保健部門対策を向上させること
HIVの予防、診断、治療、介護におけるさらなる技術革新
効果的な規模拡大のための情報戦略
HIVと関連する健康対策の成果との間のより強力なつながり

 WHOは、国連合同エイズ計画(the Joint United Nations Programme on AIDS : UNAIDS)の共同スポンサーです。UNAIDsの中で、WHOはHIVの治療や診療、HIVと結核の重複感染の優先分野を主導し、ユニセフ(国連児童基金)と共同でHIVの母子感染を撲滅するための活動を共同で行っています。

出典

WHO. HIV/AIDS. Fact sheet N°360. Updated November 2014.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs360/en/