2015年のニュース

チクングニア熱について (ファクトシート)

2015年2月 WHO (原文〔英語〕へのリンク

要点

チクングニア熱は蚊が媒介して広がるウイルス性疾患です。チクングニア熱では発熱と重度の関節痛が起こります。その他の症状は、筋肉痛、頭痛、悪心、倦怠感、発疹です。
関節痛は次第に減弱していきますが、その期間と変動はさまざまです。
この疾患は所見がデング熱に類似しており、デング熱の発生地域では誤診されることもあります。
(ウイルスに対する)治療法はなく、対症療法が中心です。
人が居住する場所と蚊が繁殖する場所が近いことが、チクングニア熱に感染する大きなリスクファクターとなります。
この疾患は、アフリカ、アジア、インド亜大陸で発生しています。最近数十年間で、チクングニア熱の蚊による媒介はヨーロッパ及びアメリカ大陸に広がりました。2007年には、イタリアの北東部で、チクングニア熱の局地的な集団感染が発生し、疾患の伝播が初めて報告されました。それ以来、フランスとクロアチアでも集団感染が発生しています。

概要

 チクングニア熱は蚊によって媒介されるウイルス性疾患です。1952年にタンザニアで初めて報告されました。チクングニアウイルスは、トガウイルス科アルファウイルス属のRNAウイルスです。「チクングニア」という名前は、この疾患にかかった人が関節痛で苦痛のために屈んだ姿勢をとるマコンデ語の「曲げた状態にする」という意味の言葉に由来しています。

症状と所見

 チクングニアの症状は、突然に生じる発熱を特徴とし、しばしば関節痛を伴います。よくみられるその他の症状及び所見は、筋肉痛、頭痛、悪心、倦怠感、発疹です。関節痛は、通常は数日間または数週間も続き、人を著しく消耗させます。したがって、このウイルスは、急性にも、亜急性にも、慢性にも病気を起こすことができます。

 ほとんどの患者は完全に回復しますが、稀に関節痛が数か月から数年間続くこともあります。そのほか、眼、神経、心臓の合併症や消化器症状も報告されています。重症の合併症は稀ですが、高齢者では死に至ることもあります。感染した人の症状は、ほとんどが軽症で、自覚されないこともあり、デング熱が発生している地域では誤診されることもあります。

感染経路

 チクングニア熱は、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸の約60か国で確認されています。

 ウイルスは、ウイルスを持った雌の蚊に刺されることによって、人から人に伝播します。感染は、ほとんどがネッタイシマカとヒトスジシマカによるものです。この2種類の蚊はデング熱を含む蚊で媒介する他のウイルス感染症も伝播します。これらの蚊の活動のピークは早朝と午後の遅い時間ですが、日中にも人を刺すことがあります。これら2種類の蚊は、屋外で人を刺しますが、ネッタイシマカは屋内でもしばしば人を刺します。

 ウイルスを持った蚊に刺されてから発症までの潜伏期間は、通常4日から8日ですが、2日から12日と幅があります。

診断

 診断にはいくつかの方法が使われます。ELISA(酵素免疫測定)法などの血清検査はIgM抗体やIgG抗体を検出することによって感染を確かめます。IgM抗体は発症後3週間から5週間で最も高くなり、約2か月間持続します。発症から1週間以内に採取された検体は、血清学的検査と逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法で検査すべきです。

 感染してから数日間は、血液中からウイルスを分離できることがあります。さまざまなRT-PCR法があり、感度もさまざまです。臨床診断に頼る場合もあります。臨床検体から得られたRT-PCR法による生成物はウイルスの遺伝子解析に使用できます。それは、様々な地域で採取されたウイルス検体を比較することができます。

治療

 チクングニア熱には特異的な抗ウイルス薬による治療法はありません。治療は、主に解熱剤、鎮痛剤、適宜の水分補給により、関節痛を含む症状を緩和することに向けられます。市販のワクチンもありません。

予防と制御

 蚊を介して伝播する他の疾患と同様に、人が居住する場所と蚊が繁殖する場所が近いことは、チクングニア熱に感染する大きなリスクファクターです。予防と制御は、主に蚊が繁殖する場所となる水がたまった容器(天然のものも人工のものも含む)の生息場所を減らすことに依存しています。これは、集団感染が発生した地域の社会活動を必要とします。集団感染が発生している間、殺虫剤を、飛んでいる蚊を殺す噴霧に使ったり、蚊がとまる容器の表面やその周囲に使ったり、未成熟の幼虫を殺すために容器の水の処理に使ったりします。

 チクングニア熱の集団感染が発生している時の予防には、日中でも蚊に刺されないように皮膚の露出を最小限にする衣服の着用が勧められます。虫除け剤は、ラベルに表示された指示を厳守して、露出した皮膚または衣類に使用します。虫除け剤には、DEET (N, N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)、IR3535 (3-[N-アセチル-N-ブチル]- アミノプロピオン酸エチル エステル) 、ピカリジン (1-ピペリジンカルボン酸、2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル)が含まれるものを使用します。日中に睡眠を取る場合、特に小児、病人、高齢者の場合、殺虫剤で処理された蚊帳を使用することが良い予防方法です。蚊取線香やその他の殺虫剤用噴霧器も屋内で蚊に刺される機会を減らすことができます。

 感染リスクのある地域へ渡航する人は、虫除け剤の使用、長袖と長ズボンの着用、蚊の侵入を防止するための網戸が取り付けられている部屋の確保などの基本的な予防対策を考慮する必要があります。

集団感染

 チクングニア熱は、アフリカ、アジア、インド亜大陸で発生しています。アフリカでは長年にわたり人への感染は比較的低い状態でした。しかし、1999年から2000年にはコンゴ民主共和国で大規模な集団感染が発生し、2007年にはガボンでも集団感染が発生しました。

 2005年2月に初めて、インド洋の島で大規模なチクングニア熱の集団感染が発生しました。ヨーロッパでの輸入感染の多くは、この集団感染が関わっており、特にインド洋の流行がピークに達した2006年には、ほとんど(の輸入感染)がこの集団感染に関連していました。インドでは、2006年と2007年に大規模なチクングニア熱の集団感染が発生しました。東南アジアのいくつかの国も影響を受けました。2005年以降、インド、インドネシア、モルディブ、ミャンマー、タイでは、190万人以上の患者が報告されています。2007年には、イタリアの北東部で、チクングニア熱の局地的な集団感染が発生し、初めてウイルスの伝播が報告されました。この集団感染では、197人の患者が報告され、ヒトスジシマカが媒介する疾患がヨーロッパ大陸内で発生したことが事実として確認されました。

 2013年12月には、フランスはカリブ海のフランス領の島およびサンマルタン島で島内感染2例を検査で確認したと報告しました。そのとき以来、局所的な感染の伝播がアメリカ大陸43か所以上の国と地域で確認されています。これが、アメリカ大陸におけるチクングニア熱の自国内での感染伝播による流行の初めての報告書でした。

 2015年1月の時点で、チクングニア熱が疑われた患者は113万5,000人に上り、カリブ海諸国、ラテンアメリカの国々および合衆国で記録されています。同時に、これまでに176人が死亡しました。カナダ、メキシコ、合衆国では輸入感染例も記録されています。2014年10月21日には、(ヨーロッパの)モンペリエでも自国内で感染したチクングニア熱4人を確認しました。

ウイルスを媒介する蚊について

 チクングニア熱の大規模な集団感染には、ネッタイシマカとヒトスジシマカが関与しています。ネッタイシマカは熱帯地域及び亜熱帯地域に限局していますが、ヒトスジシマカは温帯地域や寒冷地域にも発生します。ヒトスジシマカは、最近数十年間で、アジアからアフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸に広がりました。

 ヒトスジシマカは、水がたまった生息場所で成長しますが、生息場所がネッタイシマカに比べて広範囲で、ココナッツの皮、カカオの実、竹の株、木の穴、岩の水たまりのほか、車両のタイヤや植木鉢の受け皿のような人工の容器でも成長します。このように生息場所の多様性を持つことによって、ヒトスジシマカは農村部だけでなく都市周辺部や市内公園の日陰でも数多く発生します。

 ネッタイシマカは、人間の居住場所とさらに密接に関係しており、ヒトスジシマカが屋外の人工物で繁殖するのと同様に、花瓶、水の保管容器、コンクリート製の浴槽などの室内の人工物でも繁殖します。

 アフリカでは、別の媒介蚊(A. furcifer-taylori属やA. luteocephalus)がウイルスの伝播に密接に関係しています。非霊長類、げっ歯類、鳥類、小型ほ乳動物を含むいくつかの動物が保有宿主となる根拠も示唆されています。

WHOの取り組み

 WHOはチクングニア熱に対して、以下の取り組みを行っています。

根拠に基づいた集団感染の管理計画の取りまとめ
患者と集団感染の効果的な管理のための各国への技術的支援と指針の提供
報告システムを改善するための各国への支援
数か所のセンターの協力の下に行う、地域レベルでの臨床管理、診断、ベクターコントロールに関するトレーニング機会の提供
加盟国に対する患者管理とベクターコントロールに関する指針と手引きの公表

 WHOは、患者の発見と確認、患者の治療、地域社会で媒介する蚊そのものを減らす戦略遂行の能力向上と維持のために各国を支援しています。

出典

WHO. Chikungunya. Fact sheet N°327. Updated February 2015.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs327/en/index.html